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【シネマ散歩】
【サタデーナイト・チャーチ】孤独を分かち合う場に

カルチャー 神奈川新聞  2019年04月12日 20:10

 12日から小田原コロナシネマワールドで上映。行き場を失った性的少数者を支える「サタデー・チャーチ」と称したプログラムが、米国に存在する。土曜の夜に教会がスペースを開放し、食事や衣服を振る舞いながら居場所を提供するものだ。実話に基づいた本作は、ここに集う若者たちの実情をミュージカルを織り交ぜながら映し出す。

 物腰柔らかな少年ユリシーズ(ルカ・カイン)=写真=は「オカマ野郎」と嘲笑されている。父の死をきっかけに「美しくなりたい」との思いを募らせ、母の部屋から女性用の靴を取り出す。

 夜勤で忙しい母に代わり彼と弟の面倒を見ている伯母は激怒する。保守的なその口から放たれた言葉は「男らしくしなさい」。やがてユリシーズは家を出る。

 生まれつきの性別に違和感を覚えるトランスジェンダーたちとの出会いが、彼を「サタデー・チャーチ」へと向かわせた。孤独を分かち合う仲間とつながり、さみしげな表情がようやく笑みに変わる。自身を否定された悔しさや、初めてのメークに見いだした喜び。痛いほど繊細な心情を表現するカインの抑制的な演技が、胸を打つ。

 親からの暴力、路上暮らし、体を売る生活。多様な性への無理解から家族に見放されて生きる性的少数者の姿から、取り残される人を生み出す社会の不備を思う。トランスジェンダー俳優の好演が、作品に一層の説得力を持たせた。


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