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基地アーカイブ(2007年10月、2013年5月)
米国の基地を歩く(5)大西洋の軍の街、広がる不安

社会 神奈川新聞  2019年04月11日 06:00

空母の母港、ノーフォーク海軍基地。奥は原子力空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」=2013年4月
空母の母港、ノーフォーク海軍基地。奥は原子力空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」=2013年4月

 米バージニア州ノーフォークの街から海岸に向かうと、港内にずらりと並んだイージス艦が目に入る。その奥には原子力空母「ドワイト・アイゼンハワー」と「ハリー・トルーマン」の姿がある。2012年12月に役割を終えた世界初の原子力空母「エンタープライズ」も、ここで退役に向けた作業を受けた。

 米海軍最大規模の軍港、ノーフォーク基地は、空母5隻を含めた艦船60隻の母港だ。敷地は1820平方メートル。働く軍人・軍属らは6万6000人に上る。

 市民は原子力空母の事故に不安を抱かないのか。雑貨店員の女性(49)は「原子力のことはよく分からない。でも、海軍を信用しているから」と笑顔で答えた。

 「原子力災害が起きたら大きな被害が出るのは知っている。でも海軍がやっているから心配ない」。ノーフォーク市内で乗ったタクシーの運転手は笑い飛ばした。原子力を不安視する声は、市民からは聞こえてこない。


解体作業が続く最古参の原子力空母「エンタープライズ
解体作業が続く最古参の原子力空母「エンタープライズ

 ノーフォークは大西洋や地中海、中東などに部隊を送り出す拠点でもある。空母「ジョージ・ワシントン」が2008年に横須賀基地(横須賀市)へ移るまでの母港でもあった。

 基地には約190の航空機が配備された飛行場もある。基地司令官のデービッド・カラー大佐は空母艦載機の飛行士出身。厚木基地(大和、綾瀬市)の配属経験も持つ。

 2012年からは、退役予定の軍人が民間企業に再就職するのを支えるプログラムが始まった。毎週300人が参加している。「献身的で命令に従う。軍経験者の需要は民間にも多いはずだ」(カラー大佐)。全米を覆う厳しい雇用情勢の余波は、基地にも及んでいる。

 「ハンプトン・ローズ」と呼ばれるバージニア南部の大西洋沿岸部は、全米で屈指の軍事集積地だ。ノーフォークやオシアナ基地のほかにも、ステルス戦闘機F22ラプターの常駐するラングレー空軍基地などを抱えている。10万トン級の空母を建造できる世界で唯一の造船所もある。

 これらの施設に、米国の直面する財政難の影響がじわじわと表れ始めた。


ドック型揚陸艦「アーリントン」=2013年4月
ドック型揚陸艦「アーリントン」=2013年4月

米海軍の病院船「コンフォート」。人道支援作戦にも参加する=2013年4月、米バージニア州ノーフォーク基地
米海軍の病院船「コンフォート」。人道支援作戦にも参加する=2013年4月、米バージニア州ノーフォーク基地

 オシアナ基地では毎秋恒例の航空ショーの中止が決まった。アクロバット飛行隊「ブルーエンジェルス」の展示飛行が見られなくなるのは、米中枢同時テロ以来だという。

 地域内では生産の46%が軍をはじめとする連邦政府によるものとされる。リーマン・ショックに端を発した不況時にも、この地域では軍が雇用を下支えしてきた。その強みが、国防費の削減で裏目に出た形だ。

 「ペンタゴン(国防総省)がくしゃみをすれば、われわれは風邪をひく。予算削減の可能性を論じるだけでも動揺が走る土地なのだ」

 ハンプトン・ローズ商工会議所のジャック・ホーンベック会頭は、2013年9月までの暫定予算成立に「最悪の状況は避けられる」と胸をなで下ろした。予算の執行も見えない状況では、造船所をはじめとする軍需産業の従業員の大量解雇が起きる懸念がくすぶるままだったからだ。

 ただオバマ政権の太平洋重視戦略が大西洋側の地域経済にどのような影響を与えるのか、今も不安が漂っているという。「太平洋側に艦船や人員が移るのか、その期間がどれぐらいになるのかが、まだ読めない」

※登場人物の肩書きは取材当時のものです。


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