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基地アーカイブ(2006年7月、2007年11月)
米国の基地を歩く(3)航空機騒音、軍と住民が重ねる対話

社会 神奈川新聞  2019年04月11日 06:00

駐機場に並ぶ空母艦載機=2013年4月、米バージニア州のオシアナ航空基地
駐機場に並ぶ空母艦載機=2013年4月、米バージニア州のオシアナ航空基地

 大西洋に面した米バージニア州の最南端に位置するバージニアビーチは、美しい海岸と森林を誇る。首都ワシントンへは車で3時間。東海岸の避寒地として人気の街だ。

 海岸から森を奥へ進んだところに、米海軍オシアナ基地が広がる。「マスター・ジェットベース」と呼ばれる米海軍最大級の艦載機の拠点だ。FA18戦闘攻撃機など約250機の空母艦載機の飛来が、引きも切らない。

空母の母港、ノーフォーク基地からは南東30キロの距離。神奈川でいえば、ノーフォークが横須賀基地(横須賀市)、オシアナが厚木基地(大和、綾瀬市)の関係に当たる。実際、基地対策の参考にするため、大和市長や県知事が視察に訪れたこともある。

 「24時間365日、離着陸訓練ができる」。基地広報官が胸を張るオシアナは、もともとは農地に囲まれた立地だった。だが1980年代に宅地化やリゾート開発が、周囲で進行する。地元バージニアビーチの人口も40年前の3倍に達する。

 地元育ちのエリン・ハートさんは「街は基地に経済的に依存している。騒音は仕方ない」。だが慣れた住人ばかりではない。ワシントンから引っ越してきたゲイル・アドキンスさんは「音がすごくてテレビが聞こえない。話もできない。でも、引っ越そうにもお金がない」。

 自治体幹部は「基地を中心に発展した街。だが街が成長すれば、どうしても基地と市街地が接近してしまう」。うるささ指数(Ldn)75以上の航空機騒音が響く範囲内に、8万人が暮らす。

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オシアナ基地に駐機されたFA18戦闘攻撃機=2013年4月、米バージニア州
オシアナ基地に駐機されたFA18戦闘攻撃機=2013年4月、米バージニア州

 基地の近くに暮らすフレッド・メッツさんは、退役海軍少将。かつて攻撃機A6「イントルーダー」のパイロットだった。現役時に厚木基地を数回、訪れた経験もある。「最初はベトナム戦争当時。1980年代終わりに再訪したときは、周囲の過密化に驚いた」。厚木周辺で騒音に抗議する住民の心情も分かる。「地元の声に耳を傾けることは必要だと思う」

 1991年に退役。周辺住民の顔も併せ持つ立場になって、航空機騒音をめぐる市民と軍の摩擦に目が向いた。「話し合いを設けたらどうか」。市と軍に対話を求め、仲立ちに奔走。航空基地の管理にも携わった経験が生きた。

 バージニアビーチ近辺に暮らす退役軍人は8万人を超える。米本土の基地周辺では、被害に悩む住民の声を聞くため、こうした人材が活用される。今ではバージニアビーチ市議会に基地司令官が出席し、騒音など基地に端を発する議題がある場合には意見を述べるようになっている。

 騒音の実情を軍が地元に向けて情報公開する仕組みもある。

 「FA18戦闘攻撃機はどんな音を出すか」、「航空機が通り過ぎれば屋内でテレビの音が聞こえるか」、「窓を閉めればどの程度の防音がされるか」―。軍用機が基地に出入りする状況を、基地がさまざまに示している。米国防総省が軍事飛行場周辺に導入している土地利用の指針「航空施設共存利用ゾーン」(AICUZ)に反映させるためだ。「学校=165Ldn以下」、「商業施設=170Ldn以下」…。飛行コースに沿って騒音レベルを地図に落とし、区域ごとに「共存可能な使用方法」を公開している。

 2006年にはバージニアビーチ市議会が、オシアナ基地周辺を対象にした海軍との共同土地利用研究(JLUS)を可決した。JLUSは米国防総省が1985年から導入した制度で、街の総合計画や土地利用のあり方を国防総省と行政が共同で見直し、周囲との摩擦を防ぐ指針を示す。

 街づくりと基地運用が調和しない現実は、米国でも珍しくはない。軍はオシアナ近辺の民有地で地役権を購入し、開発進行に歯止めをかけてきたが、行政幹部は「民間業者が軍の意見を聞かずに周辺開発を続けてきた」。JLUSは、その反省の延長上にある。

 日本では、日米地位協定に規定がなく、日本政府は「米軍の基地運用に口出しができない」としている。一方、「厚木や普天間では周辺開発が行き着くところまで行ってしまった」(日本政府当局者)。米軍と生活者が隣り合う現場で、フェンスの内外の事情を相互に顧みるための枠組みは、整っているとはいいにくい。

※登場人物の肩書きは取材当時のものです。


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