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米国の基地を歩く(1)新兵の顔ぶれ、内部から多国籍化へ

社会 神奈川新聞  2019年04月11日 06:00

ブートキャンプの隊列行進。帽子には「RECRUIT」(新兵)の文字=2013年4月、米イリノイ州
ブートキャンプの隊列行進。帽子には「RECRUIT」(新兵)の文字=2013年4月、米イリノイ州

 空港から走ってきたバスを降りた若者たちが建物に入ると、段ボール箱が一人一人に渡される。

中には、着衣や筆記具など、最小限の身の回り品が詰められている。それらを取り出すと、空になった箱に、それまで自分が携えてきた私物を入れて、実家に送り返さなければならない。

電話ボックスが並ぶ部屋で、家族に連絡をすると、男女とも、すぐ散髪が待っている。

 米中西部イリノイ州、シカゴ郊外にある海軍新兵訓練センター、通称「ブートキャンプ」。新兵たちが8週間にわたる訓練を受けた後、さまざまな任地へ送られていく。

 米海軍採用コマンドの集計では、2012会計年度の海軍入隊者数は3万8千人。08年のリーマン・ショックを発端とした米国経済の不況を背景に、狭き門となった。入隊の動機には「世界を旅したい」「教育の機会を得るため」などが、上位に来る。


机が足りないため床に座って聴講。ブートキャンプの新兵たち=2013年4月、米イリノイ州
机が足りないため床に座って聴講。ブートキャンプの新兵たち=2013年4月、米イリノイ州

2段ベッドの脇で一人、自習=2013年4月、米イリノイ州のブートキャンプ
2段ベッドの脇で一人、自習=2013年4月、米イリノイ州のブートキャンプ

 ペイト・エリス2等水兵(18)は、横須賀の原子力空母ジョージ・ワシントンへの配属が決まった。

 南部アーカンソー州生まれ。日本行きは自分から志願した。「技術を持ち、文化もある国。行くのが楽しみ」

 毎年の海軍入隊者のうち米国籍の非保持者も、全体の4%前後を占めている。

 米国の市民権を取得していなくても、永住権(グリーンカード)を持っていれば米軍への入隊は可能だ。通常なら数年かかるとされる市民権の取得も、軍に入れば早く進む利点もある。

 欧州からアジアまで、新兵の出身地はさまざまだ。航空機整備を担当する女性兵、ボロチメグ・ジャミヤンシャラブ2等水兵(23)はモンゴル出身。進学のために渡米し、「自分を磨きたい」と、ブートキャンプの門をくぐった。元ロシア軍人の父と、韓国生まれの母が、ウランバートルに暮らす。

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艦船を模した施設で訓練に参加する新兵たち=2013年4月、米イリノイ州
艦船を模した施設で訓練に参加する新兵たち=2013年4月、米イリノイ州

 米空母ジョージ・ワシントンの乗員、クリストフ・デパス水兵は18歳。ニュージャージーに生まれ、大学進学を目指して海軍に入る。日本での勤務を自分から志願した。もともと日本文化に興味があったが「東日本大震災での米国の支援を知って関心が強まった」。

 横須賀に赴任してくる軍関係者は、今では日本勤務を自ら選ぶ例が大半だ。ブートキャンプを卒業したての若者では、日本のサブカルチャー体験が原点にあることも少なくない。空母の乗員、シャーリー・ビラール水兵(19)も、日本のアニメに親しみながら、バージニアで育った。「『ドラゴンボール』や『NARUTO―ナルト―』を見ていたんです」

 その空母で航空整備を担当したトーマス・ミヤノ大尉(36)は日本出身だ。

 九州の普通の家庭に育った。航空工学を学ぶため、米国に留学。米国市民権の取得を契機に、「義務を果たしたい」との思いで、海軍入りを決めた。「日本勤務を志願したわけではないが、横須賀に帰ってくると、特別な気持ちになります」

 米シンクタンク、CNA海軍分析センターは「非米国籍市民は理想的な年齢層や教育、英語力、多様な背景があり、米軍にとって戦略的な利点となる技能を備えている」と、国外から流入してくる人材の価値を強調する。

 2010年の調査結果では、米軍全体を人種別でみると白人系がなお7割を占める。それでも、今も移民を引き寄せる国の実像を映し出す形で、米軍は内部から“多国籍化”への道を進み続けている。

※人物の肩書き、年齢は取材当時のものです。


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