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離婚後の親子関係(下) 子どもの声聞き続ける

社会 神奈川新聞  2017年07月20日 11:11

「子ども一人一人にとっての最善を考えていきたい」と語る光本さん=千葉市内
「子ども一人一人にとっての最善を考えていきたい」と語る光本さん=千葉市内

 両親が離婚した子どもの思いや境遇は千差万別だ。千葉市内で開かれたシンポジウムでは、親や大人の愛情がどれほど伝わったかで、子どもの抱く家族観や親との関係性に影響することが浮き彫りになった。いかに子どもの意思を尊重しながら、向き合っていくか。子どもたちが語った思いは、大人や社会に重要な課題を投げ掛けている。 

母の言葉、生活の芯に

・東京都の女性会社員(36)
・離婚時は15歳     
・父は数年に1回、母は 年に1回、それぞれ会う 

 4人姉妹の長女。父からの養育費はなかったが、「会いたい」と言ってきてくれてうれしかった。

 母は女手一つで子どもを育て、大学まで行かせてくれた。「お金は何とかなる。誰にだって選択肢はある」。家庭を持った今、いつも掛けてくれた母の言葉が私の生活の芯になっている。

 社会人となって両親を一人の人間として見られるようになった。子ども4人を母1人で育てるのは大変だっただろう。母にも相談できる第三者がいれば良かったのにと思う。

過ごしやすい家族こそ

・千葉県の女性会社員(22)
・離婚時は9歳     
・父は時々会う。母は同居

 私は両親から、いつもちゃんと愛されているという安心感をもらっていた。父は離婚後も「離れていてもお父さんの子どもなのは変わらないよ」と伝えてくれた。母は1度だけ父に会わないでと伝えてきたが、「会いたいなら私は止めないよ」とも言ってくれた。

 親が両方いるとか片方だけだとかではなく、過ごしやすい家族でいることが一番大事。

子の選択肢狭めないで

・東京都の男性会社員(29)
・離婚時は5歳ごろ   
・父は年に1回メールでやり取り。母は年数回会う
 父とは一緒に遊び、楽しくて好きだった。でも、離れて暮らす中、成長するにつれて部活動や興味のあるものが増え、父への関心は薄れていった。だから今は、それぞれの人生を生きているという感覚。

 離婚は夫婦の選択の結果だから仕方ない。でも離れて暮らす親との面会や進路など、子どもの選択肢を狭めないでほしい。

大人は子ども理解して

・横浜市の女性会社員(26)
・離婚時は小学校低学年 
・父は10年以上会っていない。母は近所に暮らす
 月日がたち、関わりのない父がいま「亡くなった」と言われても正直、何とも思わないのではないか。母の感情に合わせてきたから、父に対する自分の本当の気持ちが分からなくなってしまった。

 親は大人だから誰かに助けを求めるすべがある。でも子どもは幼ければ幼いほど(親の気持ちや家庭環境を)一方的に押し付けられ、ため込むだけ。大人はそこを理解してほしい。

思いに重点置き面会を

・東京都の女子大生(21)
・離婚時は17歳     
・父は数カ月に1回会う。母は同居
 母と約束をしていたのに父は養育費を支払っていなかった。一人の大人として無責任だと思う。

 父と面会交流をしているが、親子がお互いに会いたい時に会うのが良い。義務感ではなく、会いたいという気持ちで会っていたら親子の関係性が薄れることはない。その思いに重点を置いてほしい。

子どもの最善を実現



NPO法人ウィーズ・光本歩副理事長
 「お父さんに会いに行ってみる?」。離婚や別居で離れて暮らす親子が会う面会交流。支援団体・NPO法人ウィーズ(千葉県船橋市)の光本歩副理事長(28)が女の子(4)に問い掛けると、傍らの母親の顔色を伺いながら答えた。「行ってみる」

 その一言に、一緒にいた祖母が涙を流した。母と祖母は、離れて暮らす父と女の子との面会を快く思っていない。祖母の涙を前に、女の子は複雑な表情を浮かべた。

 面会交流では、対立する両親が子どもの思いを尊重できるよう民間団体が支援するケースは少なくない。ウィーズは2011年から、53組の親子と関わる。

 父との再会は2年ぶり。初めての面会実現までには1年がかかった。ようやく迎えた親子の時間は、ファミリーレストランでの塗り絵。「いっぱい色がある色鉛筆、あげるよ」。娘のためにと用意した40色ほどの色鉛筆を父が差し出す。でも、女の子は使わない。「ママとおばあちゃんに怒られるから」

 母と祖母の抵抗感は強く、面会は一時中断した。それでも光本さんは女の子と会い続けた。時間をともにする中で、気持ちを知りたかったからだ。

 「パパとママと3人で会いたい。みっちゃん(光本さん)と4人でも良いよ」

 今度は4人、ファミリーレストランでテーブルを囲んだ。一緒に塗り絵を楽しもうと、父は同じ色鉛筆を持参した。女の子はやはり手に取らない。

 1時間ほどたった頃だった。「今日も暑いですね」「最近、お仕事はどうですか」。光本さんが間に入ることで、たわいもない会話ができるようになってきた。

 「これ、使っていい?」

 その姿を見ていた女の子が色鉛筆に手を伸ばした。ディズニーの塗り絵を引き寄せ、にこにこと笑顔を見せながら色を重ねた。

 光本さんは振り返る。「お父さんとお母さんは普通に話せるんだ。子どもがそう察知したんだと思う。子どもは親のことをしっかりと見ているんです」

 0歳児の面会もある。

 もちろん、会話はできない。月に1度、わずか1時間の親子の時間が子どもの寝顔を見守って終わることもある。優しく抱きかかえ、ゆったりと繰り返し揺らして安眠を促すだけ。それでも大きな意味があると、光本さんは考える。

 「親が関わってくれていたことを、いつか子どもは必ず知ることになる。その後の親子の関係性は、きっと変わってくる」

 光本さんが親たちから何度も投げ掛けられる質問がある。「なぜ親の離婚に対する子どもの思いを聞く必要があるのか」。こんな言葉も耳にする。「子どもの気持ちをえぐることになる」「思いを聞けば、子どもが責任を感じてしまう」

 だが、光本さんは言い切る。「子どもを一人の人間として尊重すれば、その思いを聞くのは当然です」

 状況は一人一人異なり、気持ちも同じではない。子どもに現状を伝えたうえで、負担にならないよう思いに耳を傾けることが第一歩だ。

 さらに、成長に応じて子どもの思いは変化する。隠れた思いもあるかもしれない。だからこそ「継続的に耳を傾け、子どもがどうしたいのか、選択できる機会を持ち続けることが大切」。光本さん自身も13歳の時に両親が離婚し、父子家庭で育った。「子どもにとっての最善は、大人や法律が決めるものではない」

 一方、子どもの気持ちを知りたくても、確認する方法や本音をつかめない親は多い。光本さんらが支援するが、それだけでは限界がある。

 光本さんが大切にするのは、子どもの意思をくみ取るための「かけら集め」だ。親、学校の先生、自身のような支援者…。「子どもを理解し、支援できる大人を一人でも増やしたい」。その先に見据えるのは、それぞれの立場で子どもとの信頼関係を築き、思いを聞き続けることだ。「その積み重ねで、子ども一人一人の最善を見つけ、実現していきたい」


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