1. ホーム
  2. 社会
  3. 産まれることのできなかった君へ 「生きた証しを」-母の思い、広がる輪

産まれることのできなかった君へ 「生きた証しを」-母の思い、広がる輪

社会 神奈川新聞  2016年09月17日 10:04

 元気に産まれてくるはずだった赤ちゃんは、泣き声を上げなかった-。死産の経験を経て、戸籍には記されないわが子の証しを別の形で残し、同じ悲しみに直面した人々を支える活動を始めた女性たちがいる。自作のCDの収益を病院に寄付したり、ブログや集いで情報を提供したりして、当事者の力になっている。

子守歌ささげ~久保考世さん


 横浜市港北区のフルート奏者久保考世さん(38)は対面を待ち望みながら、おなかの中で亡くなったわが子への思いを込め、初めてのアルバム「BIRTH」を発売した。収益は県立こども医療センター(同市南区)へ寄付する。


「BIRTH」のCDジャケットには死産だったわが子の小さな手の写真も添えた
「BIRTH」のCDジャケットには死産だったわが子の小さな手の写真も添えた

 2014年9月、第2子を妊娠。長女(3)にきょうだいができると家族で喜んだ。

 しかし妊娠11週の健診で胎児の首にむくみを指摘された。羊水検査を受け、その年のクリスマスイブに、重い障害を伴う染色体異常「18トリソミー」であることが判明した。

 おなかの中で亡くなるかもしれず、もし産まれても1週間がヤマ-。医師からそう告げられて一時は中絶も頭をよぎり、手術前検査まで受けた。しかし諦めきれずに年明けに同センターに転院。出産に臨むことにした。

 もうすぐ臨月を迎えようとしていた15年4月。子どものころから常にそばにあったフルートを奏でると、心が穏やかになり、おなかの子と会話しているような温かい気持ちになれた。もし息をして産まれてこられたら、この演奏を子守歌に聴かせたい。そんな思いで初めてのアルバムを録音した。

 「愛のあいさつ」「カノン」など10曲を久保さんがフルートで奏で、ピアノやバイオリン、ビオラ、チェロのアーティストも共演。うち2曲は夫で作曲家の高橋啓さん(44)が編曲を手掛けた。

 同年5月1日の健診で胎児が死亡していることが判明。翌2日に自宅で死産したわが子は、身長39センチ、体重1180グラムの小さな男の子だった。救急車で搬送された同センターで母子同室で一夜を過ごし、帰宅後はこのCDを流して家族水入らずの時間を過ごした。


死産から1年後に長男が産まれ、にぎやかになった久保さん宅。リビングの一角には骨つぼや写真が置かれている=横浜市港北区
死産から1年後に長男が産まれ、にぎやかになった久保さん宅。リビングの一角には骨つぼや写真が置かれている=横浜市港北区

 死産後も手形足形をとったり、同センターのボランティアが手作りした小さな産着を着せたりして、送り出してもらった。「息子の幸せを第一に考え、見守ってくれた」と感謝し、CDの販売と収益の寄付を思い立った。「悲しい体験ではあったが、センターで親身に相談に乗ってもらったことが一つの光明になった。病気の子どもを抱える家族を今後も支えてもらうために、少しでも力になれれば」と夫妻は話す。

 CDは1800円(税込み)。問い合わせと注文は久保さんのホームページ(http://kubotakayo.com)。

癒やしの話会~谷原嘉代さん


 食卓脇の棚にある白いハート形の陶磁器。幅7センチほどの小さな入れ物は、谷原嘉代さん(41)=同市青葉区=が14年12月に26週5日で死産した長男千春ちゃんの骨つぼだ。


食卓脇の遺骨に話しかける谷原さん=横浜市青葉区
食卓脇の遺骨に話しかける谷原さん=横浜市青葉区

 当時住んでいた川崎市内の総合病院で妊娠5カ月までの健診では順調に推移していたが、6カ月目の健診で突然「赤ちゃんが小さい」と告げられた。市内の大学病院を受診すると、

この記事は有料会員限定です。

月額980円で有料記事読み放題/100円で24時間読み放題のコースも。詳しくはこちら


シェアする