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ヨコスカと空母・第3部
原子力空母(7)キティホークから「GW」へ

社会 神奈川新聞  2019年03月30日 17:54

原子力空母配備の是非を問う住民投票条例案の採決=2008年3月、横須賀市議会本会議場
原子力空母配備の是非を問う住民投票条例案の採決=2008年3月、横須賀市議会本会議場

 「だいたい順調だ。日本政府の支援に感謝したい」

 2007年6月、来日した米海軍制服組トップ、作戦部長のマイケル・マレン大将は、表敬訪問した防衛相の久間章生に、原子力空母配備に関する日本側の取り組みに謝意を述べた。久間も「地元に受け入れられるような雰囲気をつくっていきたい」と応じた。

 横須賀では12号バースのしゅんせつに向けた準備が本格化していた。市民グループは7月、工事差し止めを求める訴えを横浜地裁横須賀支部に起こすが、「思いやり予算」28億円を充てたしゅんせつ作業は、8月に着工した。

 2007年11月には、軽微な放射能漏れ事故を想定した日米合同訓練が、横須賀で初めて開かれた。米国内も含め、米軍が自治体と原子力艦船を発生源とした防災訓練をするのは異例といえた。横須賀では2001年から毎年、原子力事故を想定した防災訓練を続けているが、米軍は「事故の可能性は低い」ことを理由に、電話連絡のみの参加にとどまっていたからだ。

 「横須賀市とは特別な関係を築きたい」(ケリー司令官)として姿勢を変えた米軍だったが、あくまで「人体に影響のないという事故想定での訓練」を市に求めた。共同での初動態勢確立を最優先したい市は、要請を受け入れた。住民の避難訓練は実施されないシナリオが描かれ、訓練を市が市民に伝える際にも、米軍は「市民生活に影響がない」ことを強調するよう求めた。


家族や関係者に見送られながら出港する空母キティホーク=2008年5月、横須賀基地
家族や関係者に見送られながら出港する空母キティホーク=2008年5月、横須賀基地

 「訓練は米軍が主導しすぎという感じ。本当に事故が起きたとき大丈夫なのか」。見学していた市民からは、そんな不安が漏れた。だがケリーは「原子力艦は60年、無事故。訓練の想定は極めて現実的だ」と、胸を張った。

 新たに横須賀に配備される空母ジョージ・ワシントンが2008年4月、米東海岸の母港、バージニア州ノーフォークの軍港を出港した。「地元住民と友人になれると思っている」。ジョージ・ワシントンが属する空母戦闘群司令官のカロム少将は、出港に先立って強調した。

 一方の横須賀では、配備に反対する市民グループが、再び配備の是非を問う住民投票の実現を目指して署名集めを再開していた。最終的に集まった署名は4万8千人分だった。横須賀市長の蒲谷亮一に提出し、条例制定を本請求した。請求代表者の呉東正彦弁護士は、「市長と市議会は真摯(しんし)に重みを受け止めるべき」と訴えた。

 だが市議会本会議で、住民投票条例案は賛成少数で否決される。配備が迫る中、安全性の問題なども含め、市民の声を住民投票で聴く機会は、失われることになった。

  ■■

 5月28日。10年間にわたって配備されてきた空母キティホークが、横須賀を離れた。

 基地で開かれた式典に出席した米駐日大使シーファーは、「市民の友情に感謝したい」と述べた。交代するため横須賀に向かっている原子力空母ジョージ・ワシントンにも触れて、「日米同盟の新たな章を迎えようとしている」と、力説した。離岸していく空母の甲板では、乗員たちが「SAYONARA」の人文字をつくった。

 だがジョージ・ワシントンでは事故が起きていた。

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