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センバツ
桐蔭好機生かせず 福井・啓新に敗れる

高校野球 神奈川新聞  2019年03月28日 05:10

 選抜高校野球大会第5日は27日、甲子園球場で1回戦3試合が行われ、昨秋の関東大会王者の桐蔭学園は春夏を通じて初出場の啓新(福井)に3-5で敗れた。神奈川勢2校が初戦で姿を消すのは2008年大会以来。


4打数3安打ながら、満塁のチャンスをものにできず、悔しさをにじませる森=甲子園
4打数3安打ながら、満塁のチャンスをものにできず、悔しさをにじませる森=甲子園

「自分見失っていた」
森 らしくないミス

 「情けない。自分を見失っていたのかもしれない」。甲子園という究極の大舞台は、幾度もチームの窮地を救ってきた新生桐蔭学園の「顔」にさえ、冷静さを失わせた。

 3点を追う二回。4連打で1点差に迫ると、なおも2死満塁の絶好機で3番森。九回2死から逆転サヨナラ満塁弾を放った昨秋の関東大会初戦を思わせたが、変化球2球で早々に追い込まれ「焦っていた」。外のボール球に手を出し、3球三振に終わった。

 らしくないミスもあった。五回には左翼線へ長打コースの当たりを放ったが、打球を目で追ったためベースを踏み忘れ、二塁まで進めなかった。片桐健一監督(45)は「甲子園の独特な雰囲気がそうさせた部分はあるだろうが、相手も同じ。まだ幼さがあるということ」と総括する。

 打っては計10安打。緩急巧みな相手エースをとらえかけてはいた。「これだけヒットを打ちながら点が取れていない状況は、力が足りなかったと言うしかない」と森。自身も3安打を放ったが、唯一の凡退があの二回2死満塁の場面だという点は、悔やんでも悔やみきれないだろう。


【桐蔭学園-啓新】2回裏桐蔭学園2死満塁。森は三球三振に終わる=甲子園
【桐蔭学園-啓新】2回裏桐蔭学園2死満塁。森は三球三振に終わる=甲子園

 16年ぶりに挑んだ甲子園で、初戦突破の宿願は成し遂げられなかった。しかし、昨秋の新チーム発足時から「弱い」と自覚し、目の前の一戦に集中して戦ってきた。24年ぶりの関東王者に輝き、センバツ切符をつかみ取った。この日の午前も白球を追い掛け、まだ強くなろうとした。

 片桐監督は「自分たちがやってきたことが、ある程度は出せた」と、敗戦にもどこか充実した表情だ。伊禮のけん制、山本と森の二遊間の堅守、併殺プレー…。敗れはしたが、甲子園の1勝を目指して最後までもがき続けたナインは確実にたくましくなった。


聖地でスタイル貫く
伊禮 エースの意地


 2点ビハインドの七回1死。桐蔭学園のサウスポー伊禮が投じた決め球に「エースの意地」が込められていた。

 「せっかくの舞台。自分の持ち味は出し切りたい」。啓新2番の左打者幸鉢にインコースをちらつかせると、外のスライダーで締めくくった。球速は108キロ。一度は捉えられた生命線の「外角球」で2打席連続の見逃し三振を奪い、左拳を小さく握った。

 10安打5失点。勝負にこそ敗れたが、聖地で自らのスタイルを貫いた投球は「背番号1」にふさわしかった。


9回、2死二塁のピンチとなり、山崎(左)にマウンドを託す伊禮=甲子園
9回、2死二塁のピンチとなり、山崎(左)にマウンドを託す伊禮=甲子園

 持ち味は左打者に生かされるはずだった。プレートの一塁側に軸足を置き、踏み出す足もクロスステップで一塁側に着地する。左打者のアウトコースめがけて投じることでボールに角度を付けて打ち取ってきた。

 啓新打線はこれを逆手に取った。両打ちの古川も左打席に立つなど、スタメンに5人並んだ左バッターは徹底して「外角一本に絞って踏み込んだ」(幸鉢)。左打者に浴びた6本の安打は全て外角に決まっていた。

 打開策は内角球にあるだろう。「外角を狙われている」と察知して内角球を散らした三回から、九回2死の降板時までわずか1失点。八回を終えて3-4と終盤戦に望みをつないだ。

 こだわりを捨てなかったからこそ、こう言い切れる。「考え方が甘かった。もっとインコースの練習も必要。1番を背負ってまた必ずここで投げたい」。伝統校の夏をけん引する覚悟をにじませた。


二回、9番清水が適時打
女房役の思い込め


【桐蔭学園-啓新】2回裏桐蔭学園2死一、三塁。清水が内野安打を放ち、1点を返す=甲子園
【桐蔭学園-啓新】2回裏桐蔭学園2死一、三塁。清水が内野安打を放ち、1点を返す=甲子園

 泥くさい適時打は女房役の思いの結晶だった。

 「1点返せば伊禮を後押しできる」。0-3の二回2死一、三塁。桐蔭学園のラストバッター清水は内角高めの悪球を気迫でおっつけた。一塁浜中の頭上を山なりで越えるどん詰まりの一打で反撃の口火を切った。

 モットーは「地道に投手を支える」。ピンチを迎えれば自身の胸をたたきながら「大丈夫」と後押しする。試合後は、序盤に制球が定まらなかった伊禮を「自分のキャッチングの甘さ」とかばった。

 選抜大会の期間中は捕球一つに始まり、要求したコースとは逆に構える練習を重ねるなど、打者を惑わせることに腐心した。救援した副主将の山崎は「(昨)秋の関東大会から変わり初めた。ここ数カ月で一気に頼もしくなった」とうなずく。

 「夏まで時間がない。やるべき事がたくさんある」。聖地を踏んだ扇の要は頼もしさを増していた。


「勢いにのまれた」


 九回2死三塁から副主将の右腕山崎が救援。甲子園初登板も適時打を浴び「相手打線の勢いにのまれた」と唇をかんだ。

 幼稚園の頃に他界した祖父は巨人前監督で桐蔭OB、高橋由伸さんの大ファン。入部後に初めて知った山崎は「強い縁を感じた」という。高橋さんが観戦するなか、登板を果たし「次は長いイニングを任されるように。夏に向けて球威をアップさせたい」との思いを新たにした。


肩落とす4番上川


 桐蔭学園の4番上川は4打数無安打。自身初の甲子園で快音を響かせることはできず、「相手投手のテンポが良くて、狙い球を絞りきれなかった」と肩を落とした。

 昨秋の公式戦で打率3割7分と好調だった右の強打者は、疲労から左のアキレス腱(けん)を痛めて冬場の走り込みに参加できなかった。「冬の練習ができていない分、後半にギアを上げられなかった。すぐに帰って走り込み、夏にリベンジしたい」と雪辱を誓った。

OB高橋さん観戦

 桐蔭学園OBでプロ野球巨人前監督の高橋由伸さんが観戦に訪れた。惜しくもチームは敗れたが「今まで、なかなか見ることができなかった。残念ですけど、母校の試合を見られてうれしい。後輩たちに感謝したい」と優しい表情で話した。

 高橋さんの打撃も参考にしているという3番打者の森が3安打。高橋さんは「動きも良かったし、楽しみな選手」とエールを送った。

◆今できる力は出した
 桐蔭学園・片桐健一監督(45)の話 今できる力は出した。相手投手は思っている以上に力があった。守備は最重要課題だったが、練習の成果が出た部分はある。今後に生かしてほしい。

◆打てない自分に責任
 桐蔭学園・森敬斗主将の話 打てなかった自分に責任がある。もっと練習しないといけない。投手力や守備力は秋の課題だったが、課題がそのまま出てしまった。自分たちの力がなかった。

◆球の見極めができた
 啓新・植松照智監督(39)の話 低めの球の見極めができた。(相洋での)現役時代、桐蔭学園は勝てない相手というイメージだったが、選手は伸び伸びやってくれた。120点あげたい。

◆先制して落ち着けた
 啓新・穴水芳喜主将の話 勝ててほっとしている。先制し、落ち着いて自分たちの野球ができた。森君はいい打者。データを綿密に分析して強気に攻めた結果、満塁の場面で三振を奪えた。


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