1. ホーム
  2. 高校野球
  3. 爪痕を残したかった 挑んだ男たち(下)

神奈川高校野球 タテジマがくれたもの(5)
爪痕を残したかった 挑んだ男たち(下)

高校野球 神奈川新聞  2019年03月19日 05:00

7回表


神奈川大会決勝。8回2死一、二塁で、幼なじみの東海大相模・宮地に左前タイムリーを放たれ0-8とされ、表情をゆがめる横浜・春日
神奈川大会決勝。8回2死一、二塁で、幼なじみの東海大相模・宮地に左前タイムリーを放たれ0-8とされ、表情をゆがめる横浜・春日

 名もなき県立校が、後の全国覇者を追い詰めていた。2015年夏の神奈川大会3回戦。2年生エース工藤佑太ら住吉ナインにとって、そのひとときは今もかけがえのない宝物だ。

 勝てるわけがないと思っていた。相手は前年も優勝した東海大相模。ほぼ全員が「有名人」だった。「考えても仕方ない。来た球を打つ」。そのシンプルさが保土ケ谷球場を沸かせる。初回。4番工藤が先発の山田啓太(白鴎大)から中前へタイムリーを見舞った。


東海大相模打線に的を絞らせなかった住吉・エース工藤。七回まで1点ビハインドで持ちこたえた=2015年7月19日、サーティーフォー保土ケ谷
東海大相模打線に的を絞らせなかった住吉・エース工藤。七回まで1点ビハインドで持ちこたえた=2015年7月19日、サーティーフォー保土ケ谷

 直後に工藤は3点を献上したが、「すぐ逆転されたことでマウンドにいても怖さがなくなった」。七回まで1点差を追う互角の展開で、門馬敬治監督は八回からエース小笠原慎之介(中日)を投入した。ついに、タテジマを本気にさせた。

 ただ、小笠原の剛球には手も足も出なかった。

 夏の組み合わせが決まった時点で、「もう終わったな」とみんなで笑い合っていた。だが、「ちゃんと自分たちの力を出せたら戦えた」。「負けて当然」と思っていたナインは無我夢中で白球を追い、試合後はただただ、悔しくて泣いた。

 そのままサガミは深紅の大優勝旗を手にした。「あの日、俺たちはこんなすごいチームと戦っていたんだ」。甲子園も含めた日本一までの12試合で先制点を奪ったのは、後にも先にもこの住吉だけだった。


住吉・工藤 佑太 くどう・ゆうた 川中島中-住吉高-神奈川大新3年。投手。高校2、3年時は主戦で4番。大学は軟式野球部に所属。
住吉・工藤佑太 くどう・ゆうた 川中島中-住吉高-神奈川大新3年。投手。高校2、3年時は主戦で4番。大学は軟式野球部に所属。

 翌年は主将として一つ上の4回戦まで進んだ。もしそこで勝てばサガミと再戦が実現していた。

 工藤は今、神奈川大の軟式野球部でエースとして輝いている。「野球を続けると決めたのは、東海との試合で自信を付けたことも大きかった」。昨秋は東都2部リーグで7チーム中4位。就職活動などで部を離れる学生が多く、工藤もこの春がラストシーズンとなる。

 「絶対に1部に昇格したいし、その先は後輩たちに全国を目指してもらいたい。まだこのチームは弱いけど、最初から諦めちゃいけないんです」。全部、あのタテジマが教えてくれたことだ。

7回裏

 「最後に渡辺監督を甲子園に連れて行く」-。2015年7月28日、横浜スタジアム。横浜の名将・渡辺元智監督はこの夏限りの勇退を表明していた。ノーシードで挑んだ神奈川大会では5回戦から3戦連続で逆転の1点差勝ちという奇跡的な粘りで勝ち上がり、東海大相模とのファイナルを戦っていた。

この記事は有料会員限定です。

月額980円で有料記事読み放題/100円で24時間読み放題のコースも。詳しくはこちら


シェアする