1. ホーム
  2. 時代の正体
  3. 「この国で食えない」 製造業の空洞化

平成の正体 第2部 分断と格差の経済史(4)
「この国で食えない」 製造業の空洞化

時代の正体 神奈川新聞  2019年03月17日 11:11

【時代の正体取材班=田崎 基】「言ってしまえば『この国で食えなくなった』ということ」

 県内に本社を置く自動車部品メーカー。60代に差し掛かったばかりの経営幹部は、日本国内のものづくりの現場が空洞化していった平成期の30年をそう振り返った。

 いまや売上高のおよそ7割を海外で稼ぐ。こうした世界規模の生産体制へと企業体質を変容させてきた。

 入社したのは1980年代初頭。バブル経済が絶頂へ向かう「日本が一番いいとき」の最後を経験した。

 時を置かずに景気は頭を打ち、やがて不良債権問題が表面化し、国内の消費は長期の低迷期に入る。

 幹部は自身の企業人生を振り返るかのように、自社の沿革をまとめた冊子をめくる。90年代後半に入り、設備投資が一気に北米へと向かう様が克明に記されていた。

 「間髪置かずにどんどん出て行った。主要取引先の完成車メーカーの海外進出を追いかけるようにして、大規模工場を建設していったのです」

 生産拠点を消費地に設けることで流通コストを削減できることに加え、低賃金で工場を稼働させられる。さらに海外移転には、為替変動の影響を受けにくくする狙いもあった。

 実際、日産自動車は長らく追浜工場(横須賀市)で生産してきた小型乗用車「マーチ」を2010年にタイ工場へ移管。日本に逆輸入する体制に切り替えた。

 北米の次は中国、東南アジア、欧州、インド…。一方で国内の生産工場は新設する場合でも統廃合に限られていった。

 政府は法人税減税などの税制優遇によって国内投資の減少を食い止めようとしているが、空洞化に歯止めは掛かっていない。

 国内消費は冷え込み、生産年齢人口は減少し続け、非正規雇用者比率が高まり、実質賃金が上がらない。

 家計の貯蓄率(内閣府国民経済計算)は1997年から崖を転がり落ちるように急減し2013年にはついにマイナスに突入した。その後は回復したがそれでも2%前後で推移している。

 「物が売れない時代」の到来。それは自動車の国内販売を直撃していた。

 1990年に年間597万台を記録し、国内の新車登録(販売)台数は減少に転じた。特に97年の消費増税後の反動減は激しく99年には400万台水準まで落ち込み、戻らなかった。その後もじわりと減り続け、いまやピークのほぼ半減にまで落ち込もうとしている。

 「そこそこの大学を出て、そこそこの企業に勤め、車を買って結婚し家を買う。そういういい時代を食いつぶしてきた30年だったのだろう。いい大学を出たからといって生活の保証はまったくない」

この記事は有料会員限定です。

月額980円で有料記事読み放題/100円で24時間読み放題のコースも。詳しくはこちら


シェアする