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平成の家族(9)
LGBTの子育て 「ありのまま」を大切に

社会 神奈川新聞  2019年03月17日 05:00

同性婚の実現を求める訴訟の原告になった小野春さん(右)とパートナーの西川麻実さん。子どもたちから「改めて頑張ってね」と応援の言葉があった=2月14日、東京・霞が関
同性婚の実現を求める訴訟の原告になった小野春さん(右)とパートナーの西川麻実さん。子どもたちから「改めて頑張ってね」と応援の言葉があった=2月14日、東京・霞が関

 「うっかり死ぬこともできない。そう思いました」。3年前、乳がんを患った40代の小野春さん=東京都世田谷区=に去来したのは徒労感だった。同性のパートナーも告知の場に立ち会えるのか。ただでさえ深刻な病を前に気が張り詰める中、確認を迫られた。10年以上生活を共にしようとも、彼女は法律上の「家族」ではないからだった。

 20代で結婚、2人の息子を授かった。30代で離婚し、彼女と出会った。娘がいる同じひとり親。交際を始め、同居に至った。自然の流れだった。5人家族の生活を始めて14年になる。

 3人の子どもたちは今、大学生と高校生。日本では同性カップルの法律婚が認められず、共同で親権を持つことはできない。法的には2世帯が同居しているにすぎず、自分たちや子どもたちの身に何か起きたらと思うと、不安は尽きない。

 「私にとって結婚はロマンチックなものではなく、生活する上で重要な社会保障パッケージなんです」。法律婚をしている家族との不均衡に理不尽を思う言葉には、命と生活に関わる問題だとの切実さがにじむ。

 同性パートナーと子育てを始め、「同じ立場の仲間と出会いたい」と、2010年にホームページを立ち上げた。1人で始めたサイトには当事者が徐々に集まり、子育てするLGBTの会「にじいろかぞく」に発展した。小野さんのように離婚を経験し子連れで新たな家庭を築いた同性カップル、精子提供を受け人工授精で子どもを授かった女性カップル、子育てするゲイカップルなどメンバーは多様だ。およそ60人に上る。

 「知ってたよ」。数年前、メンバーの佐々木コウさん=横浜市青葉区=が診断書を手に自身が性同一性障害だと告げると、2人の息子はそう応じた。

 佐々木さんは50代。女性として生まれたが、幼い頃から自分を男性だと感じていた。今でこそ「LGBT」という言葉は一般化しているが、身近にインターネットがない時代を長く生きてきた。情報はなく、性別に違和感がある自分は「生きている価値がない」とまで思い詰めた。

 男性としての自分を封印した20代。結婚し息子2人をもうけた後、「自分の中にいた男性が戻ってきた」。離婚し、女性と交際。7年間、一緒に暮らした。

 息子たちの学校行事には2人で参加し、彼女の作る夕食が並ぶ食卓を4人で囲んだ。時に衝突しながらも共に積み重ねた時間は、間違いなく自分たちを家族にした。「同じ家で一緒にご飯を食べる存在って家族だよね」。当時小学校低学年だった次男が発した言葉に、佐々木さんは支えられてきた。

 平成後期になると、日本でもLGBTの社会的認知が進んだ。04(平成16)年に性同一性障害特例法が施行され、戸籍上の性別を変更後、異性との法律婚が可能になった。同性カップルらを公的に認証するパートナーシップ制度の導入も全国の自治体で広がる。

 だが、既に家族を築くLGBTについては、いまだに理解が浸透しているとは言い難い。昨年7月には自民党の杉田水脈衆院議員がLGBTのカップルについて「子供を作らない、つまり『生産性』がない」と雑誌に寄稿した。小野さんは「子育てしているLGBTの存在自体が認識されていない」と憤る。今年2月に同性間の法律婚を求めて全国13組の同性カップルが国を提訴し、小野さんとパートナーも原告になった。

 「子どもには父親と母親が必要」。そんな旧態依然とした価値観に基づく偏見を恐れ、周囲に公言せず暮らす当事者家族は少なくない。小野さんは言う。「自分たちが家族だと思っているなら家族。そんな考えがもっと広まってほしい」

 大学生の佐々木さんの次男は最近、男性も女性もともに恋愛対象だと明かしてくれた。

 「伝統的な家族像」とは異なるさまざまな家族の形に触れた若い世代が増えていく。彼ら彼女たちは「個」を重んじ、多様な生き方を尊重する社会の担い手ともなり得る。「ありのままの自分で、幸せな道を歩んでほしい」。佐々木さんの切なる願いだ。


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