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平成の正体 第2部 分断と格差の経済史(2)
この国の「豊かさ」とは コストカットと効率化の果てに

時代の正体 神奈川新聞  2019年03月15日 05:00

労働問題を抱える企業の本社ビル前で、仲間のために「残業代を支払え」と声を上げるプレカリアートユニオンのメンバー=2018年2月、横浜市内
労働問題を抱える企業の本社ビル前で、仲間のために「残業代を支払え」と声を上げるプレカリアートユニオンのメンバー=2018年2月、横浜市内

【時代の正体取材班=田崎 基】コンビニで働くアルバイト店員が店頭のおでんの具を口に運んで床にはき出す。店の商品を舌でなめる。回転ずし店の従業員がごみ箱に入れた魚をまな板に戻す。インターネット上に相次ぎ投稿される「悪ふざけ動画」に嘆息していた。

 一人でも加入できる労働組合「プレカリアートユニオン」(東京都渋谷区)の執行委員長、清水直子さんはこうした行いに、この国が抱える構造的な危うさを感じ取っていた。

 「心ある大人は『バカなやつらだ』と言って責めているだけではいけない。やっている本人たちは憂さ晴らしかもしれないが、結果的に痛烈な打撃を受けるのは私たちだ。繰り返される愚行は、これまでの国の政策によって生み出されたものだと私は思う」

 企業はコストカット、人件費削減と言い続け、政府はその企業の求めに応じて非正規雇用の対象職種を無限定に拡大してきた。

 年功序列賃金や終身雇用、企業別労働組合といった「日本型雇用慣行」は崩壊し、将来にわたり安心して働き続けられない社会がこの国に横たわっている。

 私たちの社会はしかし個人のモラルで支えられている。

 「漠然とした未来への不安や、不安定な雇用、切り詰められるコストを目の当たりにし『やってらんねえよ』となる気持ちは分からなくない」

 仲間を仲間と思えない社会。同じ社会を構成する同胞のことに思い至らない。そうした社会で生まれ、育ってきた人に「けしからん、モラルはないのか、と怒っても解決できるはずがない」。清水さんはそう構造的な問題を指摘する。

 「人々の心にある倫理観や道徳が崩れていく。物が家に届いたり、店の棚に安全な商品が並んでいたりという、当たり前のことがズタズタになっていくのではないか」

効率化の末に

 あくなきコストカットと徹底的効率化がこの社会にもたらしているものとは何なのか。

 「ケチって削り、働く人からかすめ取っていった金は一体どこへいくのか。吸い上げられた利益として、ごくわずかな少数の人の手にわたっているのが現実だ」

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