1. ホーム
  2. 話題
  3. 夢や志を胸に若手農家が奮闘 工夫と努力で都市農業に活力

夢や志を胸に若手農家が奮闘 工夫と努力で都市農業に活力

話題 神奈川新聞  2019年03月07日 12:35

 宅地化や後継者不足に押され営農環境が年々厳しくなっている川崎市内の農業。こうした現状でも、夢や志を胸に就農し、工夫と努力で経営を軌道に乗せている若手農家も少なくない。「こうした若い力は都市農業に刺激を与え活性化につながっている」(JAセレサ川崎広報担当者)。市内でシイタケやイチゴを栽培する若手農家2人を紹介する。

山林保全へ原木栽培
シイタケ栽培 高津区・程塚さん


山林保全を願いシイタケの原木栽培を続ける程塚さん =川崎市高津区上作延
山林保全を願いシイタケの原木栽培を続ける程塚さん =川崎市高津区上作延

 「シイタケ本来の味がする。香りも歯応えもまったく違う」。そう話すのは高津区上作延でシイタケの原木栽培を行う程塚健さん(33)。原木栽培は市内でも少なく、直売所やJAセレサ川崎の大型直売所セレサモス宮前店、市内飲食店などで人気だ。

 住宅地のバス通りに面した農園の温室や遮光ネットの下には、所狭しと約1万本のほだ木が並んでいる。菌を植えてから収穫まで1年半から2年。その間、風通しや温度の調整のため、原木の並べ替えや天地返しを続けなければならない。作業は1日に千本ほど。そうした重労働を避けるため、オガクズなどに栄養を混ぜた人工の培地で作る菌床栽培が国内では主流だが、こだわりを貫く。

 それはディーラーを辞めて就農した10年ほど前にさかのぼる。「山登りが趣味だった。山が荒廃していくのをなんとかしなければと思い、間伐材を使う原木栽培を始めた」と程塚さん。毎年、山梨県からコナラの木1500~2千本を購入し続けている。「栽培が盛んだった福島県では、原発事故の影響で原木栽培が減少した。数は少ないが少しでも森のためになれば」

 鍋物に需要のある冬のシイタケは「香りが強く肉厚でおいしい」という。新潟県津南町で養豚業を営む妻の実家とコラボレーションし、ブランド肉「つなんポーク」にシイタケを混ぜた「原木しいたけソーセージ」も開発するなど挑戦を続けている。

人気果実に挑み好評
イチゴ栽培 多摩区・上原さん


消費者に人気のイチゴ栽培を始めた上原さん =川崎市多摩区菅仙谷
消費者に人気のイチゴ栽培を始めた上原さん =川崎市多摩区菅仙谷

 よみうりランド近くの多摩区菅仙谷の住宅地の中に立つ200平方メートルほどの温室に甘酸っぱい香りが漂う。昨年7月に就農したばかりの上原脩太さん(28)が新設したイチゴ栽培用の温室だ。

 梨やニンジン、のらぼう菜など幅広い農産物を栽培していた農家の長男だが、東京都内でスポーツのパーソナルトレーナーとして働いていた。「実家の跡を継ぐことを考える中で、トレーナーの仕事もうまく引き継ぎ先が決まった」

 市内でまだ数軒しか本格的に栽培されていないが、人気のイチゴに着目。宮前区や平塚市の農園で学びながら、新品種の「よつぼし」の苗を9月に定植し土耕栽培を始めた。「当初、品種は紅ほっぺを考えていたが、猛暑の影響で苗が予定通りにそろわなかった。まだあまり知られていないが、甘みと酸味のバランスも良い品種」と話す。

 栽培は手探りの連続だったが、JAの営農技術顧問からアドバイスも受け、11月に初収穫。真っ赤に育ったイチゴはセレサモス麻生店(麻生区)や直売所で販売し、好評を得た。

 収穫が終わる5月には腰の高さに棚を作り高設栽培に切り替えるという。「作業が楽になるだけでなく、病気のリスクも減る」。温湿度や二酸化炭素濃度などを管理するため、温室内環境遠隔モニタリングシステムも導入予定で、「品質と収量の向上につなげたい」と意欲を燃やしている。


シェアする