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時代の正体〈492〉日本よ 独立国家たれ 「平和学の父」ガルトゥング博士が語る

時代の正体 神奈川新聞  2017年07月05日 12:51

ヨハン・ガルトゥング博士 社会学者。紛争調停人。「積極的平和」「構造的暴力」の概念の提唱者としても知られる。もう一つのノーベル賞と言われるライト・ライブリフッド賞など平和や人権の分野で受賞歴多数。近著に「日本人のための平和論」(ダイヤモンド社刊)。ノルウェー出身。
ヨハン・ガルトゥング博士 社会学者。紛争調停人。「積極的平和」「構造的暴力」の概念の提唱者としても知られる。もう一つのノーベル賞と言われるライト・ライブリフッド賞など平和や人権の分野で受賞歴多数。近著に「日本人のための平和論」(ダイヤモンド社刊)。ノルウェー出身。

【時代の正体取材班=牧野 昌智】緊迫する朝鮮半島情勢やくすぶり続ける領土問題、米国との望ましい関係、そして自衛隊のあり方。戦後70年余りが過ぎても、われわれ日本国民はそれらの明確なビジョン(将来像)を描き切れていない。世界各地の国際紛争の調停に関わり代替案を提示してきた「平和学の父」、ヨハン・ガルトゥング博士(86)は言う。「日本よ、独立国家たれ」

朝鮮半島の非核化


 国益と国益が激しくぶつかる国際関係は複雑に絡まり、最悪の場合、戦争や紛争を引き起こす。だが発想を変えれば違う世界が見えてくる、という。

 根本的に日本を含め東アジア地域はいま危険な状況にある。その一つは北朝鮮との関係だ。だが、これは北朝鮮と韓国の問題ではない。北朝鮮と米国との問題である。そして、その米国にどっぷりと頼る日本が問題になるのだ。偶発的であれ、ひとたび戦火が勃発すれば、ターゲットは米軍基地のある日本だ。

 直接、北朝鮮の当局と話すと、彼らは三つのことを望んでいる。一つは平和条約の締結、二つ目が国交の正常化。日本と韓国、米国との関係改善である。そして3番目が、本当かと疑うかもしれないが、核なき朝鮮半島なのだ。

 6カ国協議のメンバーである日本はイニシアチブ(主導権)を発揮して、三つの提案を真剣に考えようではないか、と投げ掛けてほしい。例えば、平和条約の草案を作れるだろう。北が保有する核を放棄させ、韓国にあるはずの米国の核もなくして朝鮮半島を非核地帯にするよう求める。査察を行い、北も南も核をなくすこと。一歩一歩進めていく提案をできると思う。

 日本は1945年の敗戦以来、米国の占領下に置かれている。日本は対外政策だけでなく、国内政治も米国の指示を仰いでいて独立国家ではない。その頼り方は、まるで中毒症状のようだ。米国は歴史的に見ても常に敵を必要とする好戦的な国だ。しかも頼りにしている米国のリーダーは今、ドナルド・トランプ氏である。中毒症状の危険性はさらに増している。

 だから日本は米国とある程度距離を置いて、なるべく独立したものの考え方をすべきではないか。朝鮮半島でも日本なりの発想で政策を提案することが肝要だ。

領土の「共同所有」


 四方を海に囲まれた日本はロシアとは北方四島、中国とは尖閣諸島、韓国とは竹島(韓国名・独島)と、互いに譲れない複雑な領土問題を抱えている。

 歴史的な背景はいろいろあるが、私は同じような解決策を提示している。つまり「共同所有」することだ。例えば、資源が豊かといわれる尖閣諸島の周辺海域を二つのチャイナ(中国と台湾)と日本で共同管理し、資源の収益は40%ずつで分け、残る20%は環境保全などに活用したらどうか。こうした発想は竹島、北方四島でも使える。

 今は日本、中国がそれぞれの領有権を主張するが、将来政権を担う政治家たちが両国で所有しようと口にし始めるかもしれない。実際に数年前に南京大学の国際会議で講演した際、この私案を説明した。大勢いた歴史や海洋法、国際法の中国人専門家は提案に大きな拍手をしてくれた。どんなに反発されるかと思ったが、使えるかもしれないと言ってくれた。もちろん細かい話し合いが必要で、簡単にはいかない。しかし、私の直感では中国は前向きに動く可能性がある。


ヨハン・ガルトゥング博士 社会学者。紛争調停人。「積極的平和」「構造的暴力」の概念の提唱者としても知られる。もう一つのノーベル賞と言われるライト・ライブリフッド賞など平和や人権の分野で受賞歴多数。近著に「日本人のための平和論」(ダイヤモンド社刊)。ノルウェー出身。
ヨハン・ガルトゥング博士 社会学者。紛争調停人。「積極的平和」「構造的暴力」の概念の提唱者としても知られる。もう一つのノーベル賞と言われるライト・ライブリフッド賞など平和や人権の分野で受賞歴多数。近著に「日本人のための平和論」(ダイヤモンド社刊)。ノルウェー出身。

 また、二つのチャイナ、二つのコリア(北朝鮮と韓国)、モンゴル、極東ロシアから成る東北アジア共同体をつくること。モデルとしては東南アジア諸国連合(ASEAN)を考えると良い。米国依存ではできない発想で、日本がリーダーシップを発揮すべきだ。

国防軍には「賛成」


 平和学とは紛争の原因や背景を調査し、その回避策や平和を維持していく方法を研究する学問だ。ガルトゥング氏が1959年にオスロ国際平和研究所を創設し本格的に学問化した。以来、世界に広まっている。日本人を妻とし、知日家である博士は、米軍基地を日本から撤退させ、

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