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海洋産業イノベーション(4)環境予測 街づくりに成果活用

経済 神奈川新聞  2019年02月19日 17:00

産業分野の研究開発でも利用されている地球シミュレータ(海洋研究開発機構提供)
産業分野の研究開発でも利用されている地球シミュレータ(海洋研究開発機構提供)

 海底資源や深海生物など海洋分野で世界トップレベルの調査・研究機関として知られる海洋研究開発機構(JAMSTEC、横須賀市)は、地震のメカニズムや地球の内部変動の解明、気候変動の解析や将来予測といった地球科学に関する研究にも力を入れている。

 地球温暖化や台風の強さ予測、地震や津波といった防災・災害がテーマの複雑かつ大規模なシミュレーションに欠かせないのが、JAMSTEC地球情報基盤センター(横浜市金沢区)にあるスーパーコンピューター「地球シミュレータ」だ。

 2002年に完成した初代は5回連続で計算速度世界一を記録したことで知られる。現在は15年に導入した3世代目で、同センター敷地内にある巨大な体育館のような建物内で365日休みなく稼働する。海外からインターネットを通じて接続し利用する研究者もおり、メンテナンスを除き、稼働率は98%以上に上るという。

 民間企業による産業利用も活発で、JR東日本が新幹線車両の空力騒音シミュレーションで使ったほか、トヨタ自動車が車両空気抵抗低減技術の開発で使用するなど、これまでに電機、建設、エネルギー、製薬といった多種多様な業種の延べ約250社(初代から累計)が利用している。

 同センターHPC支援・運用技術グループの上原均リーダーは「開かれたコンピューター。できるだけ多くの人が利用できるよう運用している」と話す。

 地球シミュレータは産業利用だけでなく、暮らしに役立つ身近な部分でも生かされている。

 埼玉県では、今年開催されるラグビーワールドカップ(W杯)試合会場の熊谷ラグビー場(埼玉県熊谷市)がある公園のヒートアイランド対策で活用。地球シミュレータを使い、「暑熱環境シミュレーション」を実施して対策の効果を事前に予測した。

 観客動線のアスファルト舗装を遮熱舗装にすると表面温度が日なたで約9度低下し、植栽する樹木を並行ではなく千鳥配置にすると約5%多く木陰が作り出されることなどが分かり、昨夏、これに基づいて公園内約1万5千平方メートルのエリアが整備された。

 「今後、温暖化が進むと街を涼しくすることが街の価値の一つになる」と、同センター情報展開技術研究開発グループの杉山徹博士。暑熱環境シミュレーションは「街の中のどこが暑く、どこが涼しいのか、気温の分布を知ることができ、エリアマネジメントに活用できる」と強調する。

 例えば、横浜・みなとみらい21(MM21)地区で海側に高層建築物が新たに立った場合、海風の流れや地区内の温度分布にどのような変化・影響があるか、5メートルごとに温度計を置いて計測した時と同様の予測ができるという。

 また、MM21地区内の公園改修で行ったヒートアイランド対策では、シミュレーションの結果、実際に効果があることが判明した。杉山博士は「横浜市が立ち上げたSDGsデザインセンターや地域の企業などと連携し、シーズを生かして街づくりに貢献できれば」と期待している。

 ◇

 「海と産業革新コンベンション」(21日まで、大さん橋ホール)で、JAMSTECは暑熱環境シミュレーション、地球シミュレータの産業利用や研究成果などを紹介する。
=おわり

 ◆暑熱環境シミュレーション 数キロのエリアを対象に、どんな風がどのように吹き、その中で温度を持った空気や水蒸気がどのように流れるのかなどを再現するシミュレーション。同じ気象条件下で、ヒートアイランド対策前後の熱環境の比較や、対策の効果をより発揮させるための検討に役立てることができる。


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