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海洋産業イノベーション(3)水産資源 研究で持続的利用へ

経済 神奈川新聞  2019年02月19日 17:00

ニッスイマリン工業の養殖事業者向け潜水技術研修(同社提供)
ニッスイマリン工業の養殖事業者向け潜水技術研修(同社提供)

 「入社後3年半、米ニューヨークやカナダ沖でトロール船に乗っていた。アルゼンチン沖でマツイカが捕れるときは南下し、北米と行ったり来たり」。海洋土木や資源開発支援などを手掛けるニッスイマリン工業(北九州市)の原田厚社長が、往事を懐かしむ。

 国内唯一の養殖事業者向け潜水技術研修を実施するなど、水産業の裏方として安全面も支える同社のかじ取りを担う原田社長は、親会社の日本水産(東京都港区)の若手社員だった1980年代当時、ニュージーランドや南米のチリ、アルゼンチン沖などで手付かずの水産資源を捕る船の采配もしたという。

 かつて世界一の漁獲量を誇っていた日本の水産業だが、はるか遠洋で未開拓の漁場を探して魚を捕る時代から、魚を資源として評価・管理して持続的に利用する時代へと大きく様変わりした。

 世界の水産物需要が増大する中、限りある水産資源を持続的に利用する重要性はますます高まっている。国際的に利用されている水産資源の科学的根拠に基づく適切な管理は今や世界的な課題だ。

 「日本が水産資源を科学的にどう守っていくか。われわれの研究課題は極めて重要」と訴えるのは、水産研究・教育機構(横浜市西区)の杉崎宏哉研究主幹。水産業の持続的な成立に欠かせない「資源管理に必要な正確な情報を把握し提供する」資源評価の研究の中心的な役割を、同機構中央水産研究所(同市金沢区)が担っている。

 収穫量、生産量が把握しやすい農業や工業と違って、水産業は海の中にどの程度の資源量があるのか、生態学的にどのくらいなら捕っても大丈夫なのか、正確な把握が難しい。資源評価に必要な魚の生態メカニズムの解明は、同研究所の重要な研究テーマの一つとなっている。

 現在、日本の沿岸資源管理の対象魚はマサバやマイワシ、サンマなど7種。昨年12月の漁業法改正で5年後までに200種へ大幅に拡大されるため、同研究所は今後、資源量が変動する仕組みの解明に一層注力し、遺伝子解析や人工衛星による植物プランクトン分布の把握など新たな手法も活用して資源評価の精度を高めていくという。

 こうした資源研究のほかにも、市場では価値がなく捨てられている未利用魚の活用法や貝毒の分析といった安全・安心、漁場や海況の予測、漁業や養殖業の経営、水産物の付加価値化など幅広く研究している。

 また、得られた成果を産官学連携で社会に還元する取り組みも積極的に推進。同機構などが2016年に立ち上げた「水産増養殖産業イノベーション創出プラットフォーム」には、企業や大学など約130会員が参加し、焼酎やワインの絞りかすを餌の原料にする酔魚研究会など11グループが活動する。

 同機構水産業成長産業化推進室の荒井大介社会連携コーディネーターは「異分野の技術を生かし、水産業の発展に貢献したい」と強調した。

 ◇

 海洋分野のビジネス展示会「海と産業革新コンベンション」(20~21日、大さん橋ホール)で、ニッスイマリン工業は事業内容を、水産研究・教育機構は社会連携の取り組みを紹介する。


DNAを解析する次世代シーケンサー。海水中の微量なDNAから生息する魚の種類や量が分かる=中央水産研究所
DNAを解析する次世代シーケンサー。海水中の微量なDNAから生息する魚の種類や量が分かる=中央水産研究所

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