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海洋産業イノベーション(2)中小企業 技術力で大手と協業

経済 神奈川新聞  2019年02月19日 17:00

鶴見駅にほど近い鶴見精機敷地内にある水深1万メートルの耐圧試験タンク=横浜市鶴見区
鶴見駅にほど近い鶴見精機敷地内にある水深1万メートルの耐圧試験タンク=横浜市鶴見区

 「陸上もひどかったが、海底もひどい状況だった。うちひしがれた」。水中の測量を手掛けるセア・プラス(横浜市緑区)の坂本歩社長は、東日本大震災直後から約5年間実施した福島県沖~青森県沖の重要港湾などの被災状況調査を振り返る。

 同社は海図の補正業務を主体に1983年設立され、従業員は24人。現在は超音波で海底地形の3次元データを取得する音響測深機を駆使し、大型船が接岸する岸壁の水深確保や海岸の砂の浸食・堆積といった「目に見えない部分の調査」などを全国で手掛ける。

 震災後の調査は、津波で倒れた防波堤の海面下の損傷がどうなっているのか、どこに船舶が沈んでいるといったことを、復旧工事を手配する前段階の資料にするためのもの。

 3次元データの解析や処理に長年の技術と経験の蓄積を生かした海底地形図は、「海底の地形が一目瞭然、航空写真のように分かる」(岩下賢一営業部長)ほどの高精度を誇る。

 こうした技術力を生かし、ヤマハ発動機(静岡県)の無人小型電動観測艇「BREEZE(ブリーズ)10」の開発にも協力した。水深の浅い河川に架かる橋脚周辺の調査やダムの堆砂測量などの現場で活躍しており、将来的には「ロボットのように自分で考え、地形を見ながら調査できるもの」を目指している。

 須貝憲宏会長は「目に見えない仕事だが、自分たちの調査が役に立っている。それがやりがい」と強調する。

 海洋産業分野では、セア・プラスのように独自の高い技術力を持つ中小企業が大手と組み、次々と新たなビジネスが生まれている。

 海洋観測機器や水質監視装置を手掛ける鶴見精機(横浜市鶴見区)は、海洋研究開発機構(JAMSTEC、横須賀市)と共同で、水深4千メートルの海水温や塩分濃度を観測する機器を世界で初めて実用化した。

 「Deep NINJA(ディープニンジャ)」と名付けられた機器は、プログラミングの指示に従って一定期間、一定の水深でくまなく測定し、定期的に浮上してはデータを送信する。最大で約2年間、こうした観測を繰り返す。

 深海の水温や塩分濃度は、地球温暖化の解明や気候変動の研究に使われる。近年、太平洋深層で水温が1千分の5度上昇した「大きな変動」の原因調査のため、世界の海流の起点の一つとされる南極海等に、すでに30基が投入されたという。

 同社の技術力の背景には、創業以来90年にわたって蓄積したノウハウ、経験値、設計力という「原点をベースにしたチャレンジ」(立川道彦社長)と、中小企業ならではの小回りの利く開発体制がある。

 海洋の観測機器は大手が手掛けないニッチな領域だけに「機械も治具もない。作るための道具も自分たちで作る」。機器の開発に欠かせない高い水圧環境を再現する「耐圧試験タンク」もすべて自社で製作した。

 同社の従業員は82人。「人も時間も限られている。目標を決め、それに従ってすぐに立ち上げ、やってみる」と立川社長。「大手が手を出しにくい分野をやって、隙間を埋めるのがわれわれの義務。海洋分野は中小企業にとって展望がある」。生みだした製品が、その可能性を示している。

 ◇

 海洋分野の最新の研究成果や技術を一堂に展示する「海と産業革新コンベンション」(20~21日、大さん橋ホール)に、セア・プラスは「BREEZE10」、鶴見精機は「Deep NINJA」を出展する。


セア・プラスが技術協力した無人小型電動観測艇「BREEZE10」(同社提供)
セア・プラスが技術協力した無人小型電動観測艇「BREEZE10」(同社提供)

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