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仏「BENTO」に行列 鎌倉の「大船軒」も奮闘

社会 神奈川新聞  2019年02月19日 01:05

パリのリヨン駅に登場した期間限定の駅弁店
パリのリヨン駅に登場した期間限定の駅弁店

 日本の弁当が海を越え、フランスで人気を呼んでいる。パリの国鉄駅に昨秋、期間限定でオープンしていた駅弁の臨時店舗は連日行列ができる盛況ぶりで、共同販売した業者の一つ、駅弁の老舗「大船軒」(鎌倉市岡本)の担当者は「また挑戦したい」と意欲を示す。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録され、「和食」への注目度が増す中、「BENTO」が海外のランチ事情を変える日も来るかもしれない。

美食の国で大盛況


 南フランスやスイスへ向かう高速列車TGVなどが発着するパリのターミナル駅、国鉄リヨン駅構内の一角に、人だかりができていた。「駅弁を見たのは初めてよ」。30代のイタリア人女性が興味津々に、サンプルが並んだショーケースをのぞき込んでいる。

 JR東日本と駅弁会社など計7社がリヨン駅に設けた臨時店舗で、日本の駅弁を共同販売したのは昨年10月30日から1カ月間。駅弁を旅のお供にしてもらおうとの企画は、昨年の日仏友好160年を記念し、日本文化を紹介する開催中のイベント「ジャポニスム」の一環として催された。


大船軒が販売した幕の内弁当
大船軒が販売した幕の内弁当

 店先に並んだのは、「鰺(あじ)の押寿し」で知られる大船軒の特製駅弁をはじめ、秋田県の「鶏めし弁当」、兵庫県の「ひっぱりだこ飯」など全7種。毎朝8時から午後7時半まで、日本円に換算すると約1300~約1900円で販売したが、夕方前に売り切れが出るなど好評を得た。

 顧客アンケートを実施したJR東日本の子会社によると、期間中に購入し、アンケートに答えた半数以上の客が「TGVの車内で食べる」としたという。またベルギーや英国などからわざわざ駅弁を購入するためだけに来仏した人も。ランチ用に会社や公園などで食べようと購入した客の中には「食べ比べてみたい」との反応もあった。


各社自慢の弁当が並ぶ
各社自慢の弁当が並ぶ

老舗駅弁店の挑戦



 1898(明治31)年創業の大船軒では、パリで7年ほど修業を積んだ製造本部長の佐藤憲雄さん(69)が現地で奮闘した。

 当初は看板商品の鰺の押寿しを出品しようとしたが、欧州のアジは皮が硬く、加工する工程で身が割れてしまう恐れがあったため断念。「良質のアジが手に入らないならば、現地の旬の食材を、日本風にアレンジした日仏融合弁当を作ろう」と決意した。

 日本の弁当を食べる習慣がないフランス人でも内容を想像できるよう、フランス料理のフルコースをイメージ。9種の総菜などが入った幕の内弁当を作ることにした。真四角の折り箱を仕切りで九つに隔て、甘酢あんが食欲をそそる「サバのソテー」といった総菜や、海外でも人気の抹茶を使ったデザートを詰めた。

 「フランスでは、ご飯とおかずを交互に食べる習慣がない。白米を付け合わせと捉え、味がしないおかずと感じる人もいる」。パリでの修業経験からそう感じた佐藤さんは、ご飯にも工夫を凝らした。


日仏融合弁当に挑戦した大船軒の佐藤さん
日仏融合弁当に挑戦した大船軒の佐藤さん

 加工食品は4度以下で保管する決まりもあったことから、冷たくてもおいしく食べられるよう、しょうゆの味が染み込んだマグロのそぼろを炊いたご飯にかけた。アジの代わりにフランス産のハムを使った「ハムの押寿し」は佐藤さんの遊び心が光った。

 「全てが手作業だったので1日40個を作るのが限界だった」。佐藤さんはそう苦労を語るが、美食の国の住民らからの好反応に疲れも吹き飛んだという。

 作業中に停電になり、スマートフォンのライトで照らしながら盛り付けをした日もあった。「マクロン政権へのデモで14路線全ての地下鉄がストで運休したときはさすがに驚いた」と苦笑するも、佐藤さんは「大変だったけれどまた挑戦したい」と誓っている。


リヨン駅で販売された駅弁7種
リヨン駅で販売された駅弁7種

ランチ事情に変化



 日本食への関心の高まりから、フランスでのランチ事情にはちょっとした変化が見られている。

 「中学生のとき、『となりのトトロ』で小箱に食べ物を詰める様子を見て、弁当の存在を知ったの」。そう話すのは、今回の催しで駅弁を購入した30代のフランス人女性。彩り豊かな駅弁を広げると「宝石箱のよう」と顔をほころばせた。

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