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【K-person】岩合光昭さん
猫を通して人、街を描く

K-Person 神奈川新聞  2019年02月17日 01:16

岩合光昭さん
岩合光昭さん

岩合光昭さん

 映画「ねことじいちゃん」で、初のフィクション作品の監督を務めた。「オファーが来たときは、そんな大役できないと思ったけれど、原作を読み直したら頭の中に猫とじいちゃんの姿が浮かんできて、挑戦することに決めました」とメガホンを取った。

 人気の同名コミックが原作。島に一つしかない学校の校長を勤め上げ、2年前に妻(田中裕子)に先立たれた主人公の大吉(立川志の輔)と、飼い猫・タマの物語だ-。


映画の一場面から=(C)2018「ねことじいちゃん」製作委員会
映画の一場面から=(C)2018「ねことじいちゃん」製作委員会

 「元校長先生の大吉役は、学究肌の雰囲気からも志の輔師匠しかいないと思い、何度もお願いしました」。志の輔にとっても、初の映画主演作品。スケジュールの都合からなかなか快諾が得られなかったが、「志の輔師匠じゃないと、この映画は撮れない」と懇願し、出演が実現した。

 タマ役のベーコンは、100匹以上から見つけ出した逸材だ。「飛行機や車が通っても動じないんです。僕も驚いた。まさに“スーパーキャット”」と絶大なる信頼を寄せて撮影に臨んだ。一番驚いたのは、大吉とタマとの散歩シーン。「師匠の歩調に合わせて、300メートルくらい、まっすぐにベーコンが歩いてくれたんです」と奇跡的なシーンを振り返る。

 「全シーンのどこかに猫がいることにこだわりました」。自由な気性の猫に合わせて、カメラや役者の立ち位置を決めて撮影するなど、37匹の猫たちがスクリーンを駆け回る。「猫は命令は嫌いなのでとにかくお願いする。脚本を毎朝見せて、『おはよう。今日はここのシーンやるからね』と必ず話し掛けました。人も猫も、優しく話し掛けることが関係性には大切です」と目を輝かせる。

 長年、動物写真家として活躍し、NHKのドキュメンタリー番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」では、世界中を飛び回って撮影を続けている。「猫を通して、人や街、国を見つめるのが僕のモットーです」。本作でも、猫を通して、撮影の舞台となった愛知県・三河湾の佐久島の暮らしぶりや自然の魅力を伝えている。

 「猫好きな人も、そうでない人も映画を通して、こんな島があるんだと知ってもらって足を運ぶきっかけになってくれればうれしいです。そして、猫の味方になってくれれば。そんな気持ちになる映画が撮れたと思っています」

いわごう・みつあき 1950年生まれ。東京都出身。写真家。法政大学第二高校(川崎市)、同大卒業。大学在学中に動物写真家であった父・岩合徳光の助手を務め、自身も動物写真家として活躍。世界各地のネコを撮影したドキュメンタリー番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」(NHK-BSプレミアム)など手掛ける。映画「ねことじいちゃん」は22日から全国上映。

記者の一言
 「僕が猫を好きになったのは、神奈川なんです」。そんな驚きの言葉があった。17歳の頃、逗子に住む法政二高の友人宅を訪ねた時のことだ。「その家には28匹猫がいて、多分、一番のお気に入りを肩にのっけて僕の所に来てくれた。彼が背中を向けて、僕と猫が見つめ合ったとき、猫を見ているうちに胸が急に熱くなって、涙が流れた」。目の大きいきれいな雌猫だった。「高校生のくせして、猫を見て泣いたなんてかっこ悪くて、友達が振り返るまでに、涙を拭ったのを覚えていますね」。それまで猫をちゃんと見た経験がなかったという岩合さん。多感な頃に琴線に触れた神秘的な経験が、世界中の猫と出合う仕事につながっていた。


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