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【アベノミクスの実相】連載(上)意図的な「偽装」暴かれ

時代の正体 神奈川新聞  2019年02月06日 17:00

GDP成長率
GDP成長率

【時代の正体取材班=田崎基】 居並ぶ官僚と国会議員を前にマイクを手にし、淡々と、しかし問題の核心を鋭く突いていた。

 「別人の身長を比較して『伸びた』と言っているようなもの」

 政府統計に詳しい明石順平弁護士は1月30日、衆議院本館で行われた野党合同ヒアリングで、厚生労働省が公表してきた実質賃金の偽装を整然と解き明かしていた。

 これまで毎月公表してきた「実質賃金」だが、2018年から集計方法を変えたにもかかわらず、17年の数値とそのまま比較したことで、実際より高い伸び率が公表されていたのだ。

 明石弁護士が試算した数値について問われた厚生労働省の担当者は手を震わせ、明言を避けようと言いよどみながらも、やがて認めざるを得なかった。

 「あの…実質賃金。おそらくでありますが、明確に申し上げられませんが、数字の幅の計算でございますので、おそらく(明石弁護士の試算と)同じような数値が出ると思われます」

 同省は当初、18年1~11月のうち、五つの月で「前年同月比プラスの伸び率」と公表していたが、実際には6月の一月しかプラスではなかった。


実質賃金の前年同月比
実質賃金の前年同月比

 明石弁護士は「まさか認めると思わなかった」と拍子抜けしつつも呆(あき)れ、そして静かに憤怒していた。

 「完全に意図的な『偽装』と言っていい。昨年8月にはこの数値の公表を受けてメディア各社は『21年5カ月ぶりの伸び率』などと報じていたのです」

 粉飾に感づいたのは昨年9月のことだった。

 アベノミクスの異常性を統計データから解き明かした「アベノミクスによろしく」(集英社インターナショナル)で知られる明石弁護士は、その後も注視を続けていた、そのさなかだった。

 「なぜこんな偽装をやったのか。それがこの問題の核心部分です」

 統計を扱っていれば確実に気付く短絡的な偽装はしかし、明石弁護士が9月に指摘した後になっても続けられていたのだ。


実質賃金の推移
実質賃金の推移

 「要は、アベノミクスがうまくいっていないことの証左と言える」

 事は統計の偽装にとどまらない。「このままでは日本という国家の信頼が喪失しかねない」

 「戦後最長」とされる景気回復。2013年に掲げた物価上昇目標を6度も延期し続けている「アベノミクス」はしかし、未達のまま7年目に突入した。実相に迫る。

 公共工事は増え続け、横浜市の中心部では槌(つち)音(おと)が消えることがない。県内で建設業を営む社長の表情はしかし晴れない。

 「人手?足りないね」。でも、と続けた。

 「いつか上がる金利を考えたら、正社員を増やせるわけない。ボーナスは増やせても、基本給は上げられない。資金繰りを考えたら1日でも長く『アベノミクス』を続けてもらいたい。いま息切れしたら、連鎖倒産の可能性は低くないと思う」

 長く自民党を支持し、アベノミクスに対

しても賛意を示す社長だが、常に先行きの不安が付きまとう。

 「目の前の従業員をどうやって食べさせていくのか。会社を経営してたら、そのことだけがいつも頭から離れない」

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