1. ホーム
  2. カルチャー
  3. 大学とは「未知との出合い」 高橋源一郎さんが「最終講義」

大学とは「未知との出合い」 高橋源一郎さんが「最終講義」

カルチャー 神奈川新聞  2019年01月24日 06:20

 14年にわたり明治学院大国際学部(横浜市戸塚区)の教授を務めた作家の高橋源一郎が、この春で定年退職する。それに先立ち学外にも広く公開された「最終講義」では、学生たちに接することが自身にとっても「学び」になったと述懐し「教師生活は、作家としての僕に対する贈り物だった」と語った。

 「さらば大学」と題し、昨年11~12月に行われた公開セミナーの一環。題名は高橋の退職を意味するとともに、政財界の要求に即した改革を迫られる近年の大学に対する“風圧”を踏まえ、学問の在り方を問い直す含意もある。法政大総長の田中優子、思想家の内田樹らとの対談を経て、最終回に独りで語った。

 進学校の中学に通っていた高橋は、本を読みあさり「自分たちで学びの門を開こうとしていた」早熟な同世代に驚嘆。「幸運な勘違いだったが、彼らを見て、中学生は誰でもドイツ語でリルケを読めるものだと思っていた」と振り返り、会場の笑いを誘った。自身も友人らに追い付こうと“背伸び”し、難解な現代詩に挑んだという。

 中2の夏休み、一緒に素うどんを食べていた友人が突然、詩を朗読し始めた話は、学びの神髄を言い得ていた。「それを聞いた私は動けなくなった。感動していた。たとえ意味が分からなくても、不意の出合いに感動することがあると知った」。後に、それが吉本隆明の「異数の世界へおりてゆく」だと知る。

 大学時代は、学生運動に関わり逮捕された。高橋は、ロシアの作家マクシム・ゴーリキーの「私の大学」を拘置所で読み「下層階級の生活に入り込み、さまざまな人々や出来事に出くわしたことがゴーリキーを作家に成長させた」と感得。その経験を顧みながら、大学の役割を、不意の出合いを重ね「自分自身に水をやり成長させる場所」であると定義付けた。

 明治学院大の教授に就任すると、学生が「言葉を待っている」ように見えたという。それで、作家が小説を通じて読者に伝えるように、学生に向かって「僕はこう思う。君は?」と問い掛け続けた。「私が授業でやってきたのは、未知との出合いの場をつくることだった」。学生自身の中にある「答え」に種をまき栄養を注ぐような感覚だった。

 「教授就任が子育ての時期と重なり、正直言って無駄な時間ではないかと初めは思ったが、今は感謝しかない。僕が教えたことと、僕が諸君から学んだこと…僕の“黒字”です」。そう語り、笑いとともに温かな拍手が起こった。


シェアする

編集部のおすすめ

アクセスランキング

  1. ダム緊急放流、水位調節は実施されず 国交省、対応調査へ

  2. 【写真特集】台風19号 神奈川各地の状況

  3. 【台風19号】記録的豪雨の箱根、被害甚大 芦ノ湖が増水

  4. 【台風19号】のり面崩壊、PAにも被害 西湘バイパス

  5. 電通局長を現行犯逮捕 ラグビー観戦後、警備員殴った容疑

  6. 【台風19号】箱根、深い爪痕 続く運休、芦ノ湖水位上昇

  7. ハマスタで長男投げつけた阪神ファン、書類送検

  8. 【台風19号】川に転落の男性、遺体で発見

  9. 【台風19号】浸水、水没、横転… 相模川沿岸、被害多発

  10. 【台風19号】横浜港でも被害 海づり施設、氷川丸デッキ