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ナチス題材の映画相次ぐ公開 ドイツ現代史研究者が語る見どころ

カルチャー 神奈川新聞  2019年01月24日 06:11

 近年、ナチスを題材にした映画が相次いで公開されている。製作者側は、人物伝からコメディーまで、さまざまな手法でナチスの蛮行を描き、歴史の教訓を伝えてきた。ドイツ現代史の研究者・増田好純に“ナチス映画”の見どころを聞いた。

 「ヒトラーを欺いた黄色い星」「ゲッベルスと私」「ヒトラーと戦った22日間」-。2018年に日本で公開された主なナチス映画だ。今年も「ナチス第三の男」「ちいさな独裁者」など、ナチス映画が相次いで公開を控える。

 「最近は、ナチズム全体の“大きな物語”を描くよりも、ナチズムという体制を支えた名もなき人々の“小さな物語”に焦点を当てた作品が多いと感じています」と増田は語る。

 2月8日公開の「ちいさな-」は、増田が指摘する“小さな物語”の一つだ。

 終戦間際のドイツでナチス将校の軍服を手に入れ、親衛隊に成り済ました一兵卒が、大量殺人を犯した実話をベースに製作。本作では、一兵卒に従った兵士らも描き、名も無き人々がどうナチズムを支えてきたのかを描く。

 増田は言う。「ユダヤ人撲滅という残酷な政策を、なぜ、ドイツは実行するに至ったのか。“大きな物語”だけでナチスを悪とし、ブラックボックス化していたら、本質に迫ることができなくなってしまう」

 こうした認識は、欧米のナチス研究では重要視されてきたという。「20年前から、ナチス高官の伝記研究が盛んになっています」と増田。当時書かれた日記などの史料を基に、等身大の彼らに迫りながら歴史と向き合ってきた。

 映画界でもナチスを題材にする際は、“等身大”が一つのキーワードとなっている。

 「ナチス第三の男」の主人公、ラインハルト・ハイドリヒは“金髪の野獣”と恐れられ、ヒトラーとその側近のヒムラーに続く悪名高い軍人として欧米では知られてきた人物だ。一方、本作では、ハイドリヒの妻子とともに彼の半生を描き、彼がどのようにナチズムに傾倒していったのかを“人間性”とともに明らかにしている。

 「昔の映画のように、ハイドリヒがサディストのキャラクターに描かれたままでは、彼の行動を理解できない。彼の行動に共感しないまでも、なぜ、それが可能になったのかを彼の人生のさまざまな選択や時代背景を掘り下げて理解しようとする試みが、歴史を繰り返さないためにも大切です」と増田は話している。

◆「ナチス第三の男」は1月25日、TOHOシネマズららぽーと横浜、「ちいさな独裁者」は2月8日、横浜のシネマ・ジャック&ベティで公開。

◆ますだ・よしずみ 1975年生まれ。東大大学院博士課程修了。専門はドイツ現代史、ナチズム研究。書籍「教養のドイツ現代史」(共著、2016年)など。


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