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伝統の本質を新しいものへ 横浜美術館「イサム・ノグチと長谷川三郎」展

カルチャー 神奈川新聞  2019年01月24日 04:36

日本文化に影響を受けたイサム・ノグチの作品が並ぶ一角=横浜美術館
日本文化に影響を受けたイサム・ノグチの作品が並ぶ一角=横浜美術館

 20世紀を代表する彫刻家イサム・ノグチ(1904~88年)と、前衛芸術をリードした画家長谷川三郎(06~57年)の交流を紹介する「イサム・ノグチと長谷川三郎-変わるものと変わらざるもの」展が、横浜美術館(横浜市西区)で開催中だ。戦後の日本で出会い、伝統的な日本文化に着目した二人がどのような関係性を築いたのかを、絵画や彫刻、版画、写真といった二人の作品約120点を通して紹介する。

 同館と米国のイサム・ノグチ財団・庭園美術館による共同企画展で、神奈川新聞社などが主催。横浜を皮切りに米国へ巡回する。

 日系米国人のノグチは、社会と抽象芸術を結びつけたいとの考えを抱き、1950年に来日。当時、日本の前衛芸術をリードしていた長谷川は、抽象芸術を精神的なものと考えており、ノグチを京都や奈良に案内し、日本文化についての精神的な対話を深めた。


長谷川三郎の「桂」の前で解説する横浜美術館の中村尚明主任学芸員=横浜美術館
長谷川三郎の「桂」の前で解説する横浜美術館の中村尚明主任学芸員=横浜美術館

 「長谷川は、抽象をある特定の形式とは捉えていなかった」と、横浜美術館の中村尚明主任学芸員。日本の伝統的な建築や庭園、茶道などの文化を優れた抽象芸術と捉えていたという。

 長谷川の「桂」は、かまぼこ板やポスターカラーを使って丸や線を描いた版画を作り、びょうぶに仕立てたもの。ノグチと訪れた桂離宮からインスピレーションを受けたものだという。

 ノグチにとっても、日本文化や東洋思想への理解を深めた経験は、大きな転換点となった。岐阜のちょうちん工場を訪ねて紙と竹、金属で作った明かりのシリーズは、日本の伝統美を生かしつつ、西洋文化が流入した戦後のモダンな生活にもマッチするデザインだ。

 中村学芸員は「文化遺産を表面的に模倣するのではなく、本質を自分の中に蓄え、新しいものをつくり出す」との意識を、二人が共有していたと指摘する。

 長谷川はノグチとの交流を通じて米国に紹介され、ニューヨークでの個展が大評判となり、高い評価を得た。渡米してサンフランシスコの二つの高等教育機関で指導に当たったが、間もなくがんで亡くなった。以来、日米両国で忘れられた存在となったが、ノグチとの交友と功績に改めて光が当てられた今回の展覧会は珍しく、貴重でもある。

 幼少期は茅ケ崎で母と暮らしたノグチ。52年には、北鎌倉の北大路魯山人の工房で、新妻の山口淑子と暮らしながら制作を行った。同年、県立近代美術館鎌倉で、日本の美術館では初となるノグチの個展を開催。このときの出品作や魯山人の窯場で作った陶器類は、会場に展示されている。

 長谷川は山口県の生まれだが、49年から藤沢市辻堂で暮らした。ノグチが制作の合間を縫ってしばしば訪れ、鎌倉の円覚寺でともに座禅を組むこともあったという。神奈川の美術史においても、二人の足跡は貴重なエピソードだ。

◆3月24日まで。展示替えあり。祝日を除く木曜と3月22日休館。一般1500円、高校・大学生900円、中学生600円、65歳以上1400円。問い合わせは横浜美術館電話045(221)0300。


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