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地域と歩み70年「これからも応援」 閉鎖の小田原少年院

話題 神奈川新聞  2019年01月23日 02:19

3月で閉鎖される小田原少年院=昨年11月
3月で閉鎖される小田原少年院=昨年11月

 施設の老朽化や少子化などで3月末に閉鎖される小田原少年院(小田原市扇町)。約70年にわたり非行少年らの矯正教育を担い、出院者は6千人超に上るが、地域の人たちもまた、更生を後押ししてきた。長く関わってきた3人が思いを語った。

 同市城山で理容店を営む高田理さん(44)は、40年以上にわたって少年たちの髪をボランティアでカットしていた母の良子さん(70)の背中を見て、「中にいる少年たちの力になれれば」と自身も取り組むようになった。

 月1回ほど、出院間近の少年の髪を整えるために、20分ほどかけてカットする。出院後の夢を尋ねると、「大工さん」「ボクサー」「弁護士」など、返ってくる答えはさまざま。「おしゃれでかっこいいから、と美容師になりたいという子もいた」と高田さんは表情をほころばせる。

 一方で「外に出るのが不安」「引き取り先が決まっていないので出られない」と話す少年もいたという。「いつも『もう戻ってきちゃ駄目だからね』と送り出してきた。閉鎖にはなるが、今後もずっと少年たちを応援し続けたい」と語る。

 潮音寺(同市久野)の元住職、安藤康哉さん(86)は1950年代ごろから同少年院で教誨(きょうかい)師として少年たちに寄り添ってきた。

 少年との個人面接では、なぜ罪を犯したのか、どういう罪を犯したのかなどを考え向き合う。同少年院で催された運動会では一緒に走り、盆踊り大会では少年たちと輪になって踊るなど、密な関係を築き「正しく生きることの大切さ」を説いてきた。

 「『転ばぬ先のつえ』というが、転ばないよう一歩ずつゆっくりと歩いていく気持ちが大事。ただただ真面目に立派に生きていってほしい」と願いを込める。

 同市浜町の志村宗男さん(77)は、地元で130年続く米穀店の4代目だ。20歳の頃に同少年院の食糧事情が厳しいと聞き、在院者全員分のもち米や小豆をプレゼント。翌年からは毎年、同少年院で餅つきをするようになった。

 少年たちに柔道を教えていた時期もあり、肌と肌を触れ合わせる中で感じたのは「芯から悪い人間はいない」ということだ。「ボタンの掛け違いで少年は非行に走る。早くその掛け違いに気付くことが大事。一番は周りの人が偏見を持たずに温かく見守ること」

 毎年恒例だった餅つきは昨年から、同少年院の近くの更生保護法人「報徳更生寮」で継承。12月16日に実施され、和やかな雰囲気の中、20~70代の寮生10人ほどが餅つきを楽しんだ。今年も同所で続けられる予定といい、志村さんは「餅つきも更生の後押しも、ずっと続けていきたい」と前を向いている。

市「跡地に住宅」 国は難色
3月閉鎖の小田原少年院



 小田原少年院の3月閉鎖に伴い、建物や跡地は4月以降に法務省から財務省に移管され、利活用を巡る検討が本格化することになる。小田原市は住宅を中心とした整備が望ましいとしているが、国は市の意向に難色を示している。

 市企画政策課によると、同少年院(敷地面積約2.4ヘクタール)の立地地域は第2種住居地域に当たり、住居などに用途を指定。小田原駅から徒歩圏内で利便性が高く、市は同少年院跡地について、定住人口の増加に向けた住宅整備が望ましいとの考えだ。

 だが用途を住宅に制限すると土地の売却先が限られることから、国は「市の意向を考慮することは難しい」としているという。今後の対応について、加藤憲一市長は昨年12月、「ふさわしい活用が図られるよう、機会を捉えて市の考えを国に伝えていく」と述べた。

 同少年院は1952年に特別少年院として開設。近年は収容者数が減少傾向にあり、施設設備も老朽化していることなどから閉鎖が決まった。


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