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地域力 選挙の年に考える
精神障害者が「弱者」支え 福祉制度の枠超え試み 横浜

話題 神奈川新聞  2019年01月12日 08:24

昨年11月の稲刈りには、利用者と子ども、高齢者らが参加した(佐々木さん提供)
昨年11月の稲刈りには、利用者と子ども、高齢者らが参加した(佐々木さん提供)

 障害者、高齢者といった区分や制度の違いを超え、農業と福祉の連携で緩やかな地域の場をつくる試みが、横浜市青葉区寺家町で行われている。「寺家プロジェクト」。活動をリードするのは、普段は支援される側の精神障害者らだ。田んぼに来た認知症のお年寄りに気を配り、子どもたちに声を掛ける。旗振り役でNPO法人理事長の佐々木秀夫さん(50)はこの活動に専念。農を切り口に、「弱者」とされてきた人たちの力で福祉の枠組みを超えた場が生まれようとしている。

 手掛けるのは、精神障害者の地域活動支援センターなどを運営するNPO法人都筑ハーベストの会(同市都筑区)。「福祉の絡みを取っ払っていろいろ実験をする。その主体者は、人の気持ちやつらさを一番分かっている精神障害者がいい」。佐々木さんはそう話す。プロジェクトは2017年11月に始まり、昨年は寺家町と東京都町田市内でのコメ作りを中心に活動。当事者を中心に議論を深めた。

 佐々木さんが同会を立ち上げたのは01年。精神障害者の支援は、他の障害者よりも「2、3周遅れで、インフォーマルな形で進んできた」という。小規模作業所などを設けた親から体験談などを聞き、それを今の福祉に照らし合わせた時、「制度に乗った福祉で本当に満たされる人がどれだけいるのか」と考えた。

 それは精神障害に限ったことではない。介護保険のサービスにも満たされない領域があるのではないか。高齢者全般はどうなのか。支援制度が確立されていない引きこもりも同じだ。「社会運動としては制度をつくればいいという方向になるが、その前に実践がないといけない」。その考えがプロジェクトになった。


佐々木秀夫さん
佐々木秀夫さん

 昨年11月の稲刈りには、子どもや近隣のグループホームなどで暮らす認知症の高齢者も参加した。作業を見守るだけの人もいたが、「高齢者に話し掛ける人も、そうしない人もいるがみんな気に掛けている。ただそこにいることが介護ケアになるが、それは今の介護保険制度ではできないこと」と佐々木さんは話す。

 活動を振り返った同会の利用者からも、「自分たちがどう対処するか不安もあるが、救いを求めている人がいるのは事実」「子どもや認知症の人も、家庭やグループホーム以外にも安心して暮らせる場ができていく様子が感じられたらいい」という声が聞かれた。「弱い人」とされる人が別の弱い人を見守り、今の制度では支援とされない「支援」が生まれている。

 2月には近くの古民家を拠点にし、「こもれる場」になる蔵造りにも取り組む。介護分野との連携や資金面などの悩みも少なくない。だが、「利用者がケアされるのではなく、実践者、活動者としてトライアルしていく」ことで、新たな価値が提示できると信じている。

      ◇

 人口減少や財政難などにより、地域で公的なサービスが縮小している。その隙間を埋めたり、社会情勢の変化に伴って生まれた役割を果たしたりし、地域を主体的に支える人々がたくさんいる。統一地方選と参院選が重なる12年に1度の「選挙の年」に、その姿を通して政治や行政の有り様を考えたい。


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