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箱根観光に白タク横行  訪日客向け、地元警戒強める

社会 神奈川新聞  2019年01月06日 02:16

多くの観光客でにぎわう大涌谷園地=11月、箱根町仙石原
多くの観光客でにぎわう大涌谷園地=11月、箱根町仙石原

 年間2千万人を超える観光客が訪れる国際観光地・箱根で、無許可のタクシー営業「白タク行為」による訪日外国人客(インバウンド)の輸送が横行している。昨年12月には箱根町議会が本会議で白タク行為への対策強化などを国に求める意見書を全会一致で可決。インバウンドは2020年の東京五輪に向けてさらに増加する見込みで、関係機関は警戒を強めている。

 昨年12月中旬の平日。観光名所の大涌谷園地(箱根町仙石原)では、凍てつく寒さにもかかわらず大勢の観光客でにぎわっていた。雪化粧した富士山や噴煙の上がる箱根山・大涌谷の斜面などを熱心に写真に収める姿が見られた。

 「中国には活火山が少ないので見てみたかった」。職場の同僚6人で観光目的に来日した中国人の女性(44)は声を弾ませ、熱心にスマートフォンを大涌谷に向けていた。今回の旅行では、既に京都や東京も訪ね、これから富士山も近くまで見に行くという。

 大涌谷への足を尋ねると「タクシーで来た」と女性。ところが観光を楽しんだ後に女性らが乗り込んで園地を後にしたのは、運転席に若い男性が待つ、東京都内の白ナンバーを付けたワゴン車だった。

2時間で不審な車両20台以上



 国土交通省神奈川運輸支局によると、箱根町内では現在、中国人旅行者を乗せた中国人ドライバーによる白タク行為が横行しているという。

 同支局などは地元からの情報提供を受けて、7月に大涌谷で調査を含めた啓発活動を初めて実施。白タクと疑われる車両に声掛けをし、白タク行為が違法であることやそのリスクについて説明した。

 運転席にドライバーだけが残っているワゴン車など、2時間で不審な白ナンバーの車両20台以上に声を掛けた。「友達と来た」「家族で旅行に来ている」などと話したが、同支局の担当者は「そうした関係には思えなかった」との見解だ。

 また「2時間で不審車両が20台なら、1日単位では100台ぐらいはいるということ。さらに土日はもっと増える」とし、「時期にもよるが、白タクはかなりの数がいるとみられる」と推測する。

「ぞろ目」


 白タク行為は道路運送法違反に当たり、3年以下の懲役か300万円以下の罰金、あるいはその両方が科せられる。

 同支局によると、白タクのほとんどはワゴン車で、ドライバーも乗車している旅行者も中国人。6並びなど「ぞろ目」のナンバーも多く見られるといい、担当者は「運転手と利用客が待ち合わせに分かりやすいように、ぞろ目にしているのではないか」と見ている。

 同町では富士山が世界遺産に登録された13年ごろから外国人客の増加傾向が続く。同町を昨年訪れた宿泊客数は約469万人だが、このうち外国人客は約55万人と1割以上を占めている。町観光課は「国別の統計は取っていないが、感覚として4割ぐらいが中国人で、圧倒的に多い」としている。

 同支局の担当者は「中国人旅行者にとって中国人ドライバーの白タクは、正規メーターよりも安く利用できるメリットがあり、中国語で話せるという安心感もある。日本と中国では法律が異なり、悪いことだという認識がないまま利用している人もいるのでは」と指摘。東京五輪・パラリンピックが開催される20年に向けて「海外からの旅行客が増加することは目に見えており、白タクがさらに増えることも懸念される」と話す。

 白タクを巡っては、17年12月に自家用車に外国人観光客5人を乗せて東京都と神奈川県内を往復して現金を受け取ったとして、警視庁が道路運送法違反の疑いで中国人を逮捕。都内のホテルから箱根町に向かい、芦ノ湖や箱根神社などを案内した後、羽田空港まで送り届けていたという。

 県警によると、利用者は配車アプリのようなものを使い利用登録しているとみられ、現金授受が直接なく、業者と顧客で口裏を合わせれば摘発は難しい。さらに言葉の壁も捜査を困難にしているという。

 一方で、箱根以外の県内の観光地でも白タクは横行しているといい、「東京五輪を控え、何とか対策をしなくてはならない」と危機感を強めている。

業界困惑 


 白タク行為の横行は、地元・箱根の経済活動や町民の安全安心にも影響を及ぼしかねない。

 「ちらちらと見るようになったのは4、5年前から。大涌谷や箱根神社で多く見掛ける」。同町で半世紀以上の歴史があるタクシー会社の男性社長は語る。

 町内で目撃する頻度は年々増加しており、昨年1月ごろから特に多く目にするようになった。懸念するのは、白タクがさらに増えることにより、町内でいずれ大きな事故が起きないかということだ。

 正規のタクシー業者は、普通第2種免許を取得し、緑ナンバーを付けて営業。運転手の健康管理や車両の点検などが義務付けられている。

 男性社長は「タクシー業は安心を提供することで信用され、また呼んでもらえる。運転は安全第一」。一方で「白タクは、正規の保険にも入っていないかもしれない。事故が起きたら正規のタクシーまで信用を失いかねない。ちゃんと日本のルールを守ってほしい」と力を込める。

 白タクを巡っては箱根町議会も、昨年の12月定例会の本会議で、意見書を全会一致で可決。横行が常態化することで、地域経済に深刻な影響を与えることなどを指摘し、対策を強化することを国に要望している。

 県タクシー協会は日本語と中国語で表記した啓発チラシを昨年4月ごろ作成し、町内の観光協会などに配布。旅館や売店で掲示を依頼し、旅行者に対して白タクを利用しないように呼び掛けを続けている。

 県タクシー協会小田原支部の曽我良成支部長は「目に見えて現状は悪くなっている。これからさらに増えるだろうが、見過ごされては困る」と危惧し、訴えた。「中国人旅行者には、日本で安心して過ごしてもらうためにも、正規のタクシーを使ってもらいたい」


大涌谷
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塔ノ沢
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