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神奈川高校野球、新春3監督座談会(下) 偉大な前任者の存在

高校野球 神奈川新聞  2019年01月05日 08:25

写真左から横浜・平田徹監督、慶応・森林貴彦監督、桐蔭学園・片桐健一監督
写真左から横浜・平田徹監督、慶応・森林貴彦監督、桐蔭学園・片桐健一監督

 横浜・平田徹(35)、慶応・森林貴彦(45)、桐蔭学園・片桐健一(45)の3監督による神奈川高校野球の新春座談会はいよいよ最終回。甲子園での経験や2019年の目標、さらには3人の大きな共通点である偉大な前任者の存在について語ってもらった。

 昨夏の第100回全国選手権大会で、神奈川からは横浜と慶応の2校が出場し、頂上決戦の期待が膨らんだ。しかし、横浜は3回戦、慶応は2回戦で敗れ、神奈川勢8度目の深紅の大優勝旗には届かなかった。2019年、激戦区神奈川から再び、15年の東海大相模以来となる日本一を目指す。

 運動部長 平田、森林両監督が甲子園の経験から得たものは何ですか。

 平田 神奈川は決勝の日程が遅かったのでそこはきつかった。慶応はその負の部分をもろに受けた。向こうはホテル暮らしを含めて明らかに非日常。いかに普段通りのコンディションを維持できるか。よそ行きの野球ではなく、地に足の着いた野球ができるか。その先に初めてプラスアルファの力が発揮される。だから甲子園の雰囲気を経験している選手がいるかどうかは大きい。

 森林 春に初戦負けで帰ってきて、夏にサヨナラで1回は勝たせてもらった。夏にもらった宿題は「勝つ」ことと「勝ち進む」ことは違うということ。一度勝った後の過ごし方をもう少し何とかできなかったかなと思う。1勝してある程度ほっとしたんじゃないかと言われても仕方ない。それが高知商戦の守備のミスに出た。僕の経験と技量が足りなかったところだと反省している。

 片桐 お二人はやはり子どもたちのことを第一に考えていらっしゃる。大舞台でも普段通りのことをやらせてあげることが一番。そこに全力を注がなきゃいけないんだなと。僕自身は現役時代、甲子園でけがをしていて試合に出られず、いい思い出がない。卒業後2、3年は甲子園を見られなかった。この立場になった時に、僕みたいな選手は出さないようにしようと思っている。

 平田 自分も(3年夏に)けがをしたが、どのみち下級生にレギュラーを取られていた。それも惨めだし、キャプテンマークを付けて伝令に行くことも惨めだった。そんな自分の経験に照らすなら、「おまえが試合に出られなくても、おまえはチームに必要なんだ」とか、ほんのひと言、言葉が掛けられるような指導者になりたいなっていう思いはある。

 横浜は渡辺元智氏、慶応は上田誠氏、桐蔭学園は土屋恵三郎氏が長くチームを率いた。3監督とも経験豊富な恩師から名門校を引き継ぎ、着実に実績を積み重ねているが、そこに至るまでの苦労やプレッシャーの大きさは計り知れない。

 運動部長 前任者の存在は大きいと思いますが、ご自身が監督として経験不足などを感じることはありますか。

 平田 自分は渡辺前監督にはなれないし、日々比較しながら指導するのも生徒に失礼。ただ、正直いい結果が出なくて「ああ、自分は下手くそだな。渡辺監督や小倉(清一郎)コーチだったら、こんな失敗はしないだろうな」とか、反省する時はある。でも誰かと比べるのではなく、常に自分を磨きながら生徒に向き合わないと。非を認めるところは素直に認める。人間をさらけ出すことで、生徒も信頼してくれるのかなと思う。

 森林 今の自分で一生懸命やるだけですよ。前任者にないものがあるかもしれないし、逆に何年かしかやってないから、今気付くこともあるかもしれない。取り繕うのではなく、自然体でやらないと疲れちゃうし、続かない。周りにどう見られているかを考えてやるのではなく、自分が良しと思うことを信じてやっていかないといけない。

 片桐 若いからこそできることもある。何年目まで若手で何年目からベテランだとか、線引きは難しい。選手との接し方では、僕はオンとオフをはっきりさせている。ユニホームを着てる時はしっかり怒るけど、寮で風呂入ったりご飯食べたりしている時は平気で会話する。練習が終わってもずっと怒られているとか、試合で駄目だったら寮で正座とか、そういうのは意味が分からない。

 平田監督就任後、春夏秋で7度神奈川を制している横浜、昨年春夏甲子園出場を果たした森林監督の慶応。さらに片桐監督率いる桐蔭学園が昨秋の関東大会を制し、今春のセンバツに16年ぶりに出場することが濃厚となった。伝統校の復活で、2019年には東海大相模や桐光学園を交えた神奈川高校野球の勢力図にも変化が生じるだろう。

 運動部長 最後に抱負をお願いします。

 森林 ミーティングでことしは「挑戦」だと話した。夏は横浜高校に4連覇させないように挑戦し、センバツで自信をつけて帰ってくるであろう桐蔭学園にも挑戦しないといけない。東海大相模や桐光学園もそう。強いチームにもう一度挑む。僕もいろいろな人を呼んだり、練習メニューを変えたり、新しいことにどんどんチャレンジして、夏の甲子園の連続出場に挑戦したい。

 平田 うちは当然、夏の甲子園の4年連続出場。それから日本一。ただ、連続出場のハードルはどんどん上がっている。昨年と同じやり方をしていても駄目。もっと厳しい姿勢でトライしなければいけない。誰かにやらされるのではなく、選手がなるべく主体的に取り組める部分を増やし、一人一人が少しでも成長していけるようなプロセスを経て目標にたどり着きたい。

 片桐 「現状突破」がテーマ。秋に関東大会で優勝したが、決して頂点を目指したわけじゃなく、目の前の相手に練習した成果を出そうと思ってやっていた。しっかり自分たちの目標を掲げ、そこを突破するために苦しむ。それがクリアできたらまた次の目標を立てていく。どこに勝ちたいとか、どこまで勝ちたいとか、まだ言える実績はない。あえて言わずに、自分たちの現状を常に突破していくイメージでやっていきたい。

新しい高校野球報じたい


 正直、不安だった。新時代の3監督による初の座談会。いつも取材には快く応じてくれるが、いずれも勝負師。試合後の取材では「手短に」と厳しい表情を見せることもある。

 名門校の看板を背負いながら、自身の見解を問われる。現役監督の発言が持つ意味は大きく、断られるかと思っていた。だが、それは杞憂(きゆう)だった。携帯電話を鳴らすと、3人とも即答で「私でよければ」。伝統校を率いてきたその器量を、少なからず軽んじていた自分を恥じた。

 当日はこれ以上ない盛り上がりだった。中でも驚いたのが、オファー当初は「他のお二人に比べると私なんて…」と謙遜しきりだった桐蔭の片桐監督が、まさに立て板に水の勢いで持論をぶつけてくださったこと。1時間弱の予定だった座談会は2時間を超えた。

 文字起こしはA4用紙で22枚。最初は元日の紙面を盛り上げる単発企画の予定だったが、内容の濃さから急きょ3回シリーズとなった。

 3監督の思いは「子どもたちのために、高校野球をより良くしたい」というところに集約されるだろう。その思いは高校野球を担当して3年目を迎える記者も同じだ。100回大会が終わったからといって、神奈川新聞の高校野球報道が下火になることはない。示唆に富んだ新春座談会を皮切りに、新しい高校野球の姿を報じていきたい。


横浜・平田徹監督
横浜・平田徹監督

慶応・森林貴彦監督
慶応・森林貴彦監督

桐蔭学園・片桐健一監督
桐蔭学園・片桐健一監督

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