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【寿町火災】超高齢化・日本の縮図 集合住宅共通の課題 

社会 神奈川新聞  2019年01月04日 17:00

簡易宿泊所で消火活動に当たる消防士ら=4日午前7時55分ごろ、横浜市中区寿町4丁目
簡易宿泊所で消火活動に当たる消防士ら=4日午前7時55分ごろ、横浜市中区寿町4丁目

 簡易宿泊所(簡宿)で起きた火災で2人が死亡、8人が重軽傷を負った横浜の中心地にほど近い寿地区。ここでは60歳以上が7割近くに達し、障害がある人も少なくない。簡宿を“住居”とする人々が暮らしやすい街をいかに築くか。福祉ニーズの高い街は、やがて日本が迎える超高齢化社会の縮図とも言え、広く社会にも問題を投げ掛ける。

 横浜・寿町の簡易宿泊所で火災 2人死亡1人重体
【寿町火災】福祉の街、惨事再び 宿泊者「どこへ行けば」

 市生活支援課寿地区対策担当などによると、簡宿の宿泊者数は2017年11月1日現在で5728人。このうち60歳以上は3894人(67・9%)、身体障害者数は387人(6・7%)を占める。宿泊者の大半が単身高齢の男性で、8割以上が生活保護を受給するなど「福祉の街」となっている。

 寿地区は高度成長期の1960年代、日雇い労働者を一時的に受け入れるために簡宿が相次いで建設された。築60年近くになる簡宿も数多く残る一方、建て替えの際に、宿泊者のニーズに合わせてエレベーターを設置して車いすに対応したり、身障者トイレを共用部に設けたりする場合が増加。同時に玄関にオートロックを設ける簡宿も増えた。複数の介護事業者が個別に利用者宅を訪問することで、地域との交流の機会が減っているのが実情だ。

 従来の簡宿は帳場と呼ばれる管理人が24時間対応をしていたが、近年は住み込みが少なくなり、年末年始は不在になる場合も少なくない。大規模の簡宿では帳場が常駐するものの老人ホームのように複数の職員が勤務する仕組みになっておらず、火災時の避難誘導ではかねて課題を抱えていた。今回の出火当時は帳場がいたものの、約140人の救助は難航した。


 消防法施行規則では年2回以上、避難訓練などを行う義務があるが、地域の関係者や中区役所などでつくる「寿プラザ地区地域防災拠点運営委員会」の事務局は「高齢者や障害者が入居している簡宿では人手が足りず、十分な態勢では行いにくい」と説明。設備面でも、現在は義務化されていないスプリンクラーを設置すれば「宿泊料金が上がる可能性がある」と宿泊者らは不安視する。

 簡宿の営業許可や、簡宿に宿泊する高齢者医療や障害者、生活保護など担当する市の部局は複数にまたがる。ある職員は「問題があっても自分に決められた法律や条例の範囲でしか対応できず、他部局との調整に時間がかかってしまう」と、縦割り行政の弊害に頭を悩ませる。

 ただ、寿地区に限った問題ではない。貧困問題に詳しい立教大の稲葉剛特任准教授は「寿地区の簡宿は建て替えが進み、設備や防火体制は格段にいい。(木造の簡宿が多い)川崎や山谷で起きていたら、もっと被害が広がっていたかもしれない」と指摘。それだけに、今回の火災は低所得者向けの施設で起きた過去の火災と同列には語れないという。

 「一般のマンションでも十分起こり得る火災で、簡宿だけの問題ではない。高齢者や単身者、障害者などが集合住宅に多く暮らす社会共通の問題として、どう対応すべきか考える必要があるのではないか」と警鐘を鳴らす。


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