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神奈川高校野球、新春3監督座談会(上) 伝統継承、未来を“激論”

高校野球 神奈川新聞  2019年01月02日 03:12

対談を終え、握手を交わす(左から)片桐健一監督、平田徹監督、森林貴彦監督と3監督の今年の抱負=横浜市中区の神奈川新聞社
対談を終え、握手を交わす(左から)片桐健一監督、平田徹監督、森林貴彦監督と3監督の今年の抱負=横浜市中区の神奈川新聞社

 2019年、神奈川高校野球は新時代へ-。高校野球100回目の夏となった昨年8月の記念大会は、全国最激戦区神奈川から横浜と慶応が甲子園に挑み、続く秋は桐蔭学園が関東の頂点に立った。横浜の平田徹監督(35)と慶応の森林貴彦監督(45)、そして桐蔭の片桐健一監督(45)。いずれも偉大な前任者から伝統校を引き継ぎ、着実に結果を残してきた3監督を迎え、新春座談会を開いた。それぞれの指導哲学や苦労話、未来の高校野球のあり方などを語り尽くした“激論”を、3回にわたってお届けする。

 夏の100回大会が行われた昨年の高校野球。神奈川大会は南北2地区に分かれ、横浜が南神奈川を制して創部初の3連覇、慶応が北神奈川の頂点に輝いて春夏連続で甲子園に出場した。桐蔭は昨春の県大会初戦負けから夏は北神奈川8強まで巻き返し、その後の秋の躍進につなげた。

 運動部長 100回大会で感じたことを教えてください。

 平田 バトンを引き継がせてもらってから、常に新しい変化を加えてチームを進化させた。その積み重ねの末に、素晴らしい結果に結び付いた。甲子園に3年連続で出場できたということは4年連続という大きな目標につながる。選手にとっても、最高のモチベーションになっている。

 森林 南北に分かれたことを感じさせなかった。初戦から日大だったし、桐蔭学園、東海大相模、桐光学園と、全て厳しい戦いだった。チームとしては成長させてもらう機会が多かった。夏の甲子園は春とは違う熱気を感じた。100回の大きすぎる節目の大会に出られたことは光栄。

 片桐 私は結果を出されているお二人とは状況が違った。低迷している中でのバトン。ただ、高校の時から甲子園に出ることが水準として染みついていたので「勝たなきゃいけない」という気持ちになっていた。春の初戦負けが、自分自身を見つめ直すきっかけになり、夏につなげられた。

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 秋季関東大会では、県大会準優勝で出場した桐蔭が24年ぶりの優勝。今春の選抜甲子園への切符をほぼ手中に収めた。春夏11度の甲子園出場を誇りながら、近年は全国の舞台から遠ざかっていた伝統校が復活を遂げた。

 運動部長 片桐監督が率いる桐蔭の躍進を、平田監督と森林監督はどう見ていましたか。

 平田 指導者にとって、自分の現役時代に強かったチームはいくつになっても怖い。私の世代の桐蔭学園はまさにそういうもの。「ここの最近は(甲子園に)出てないから楽勝だよ」なんていう心境にはまずならなかった。伝統は簡単に築けるものじゃないけど、簡単に廃れもしない。

 森林 片桐さんとは同い年。でも現役時代は桐蔭とうちはレベルが違った。高木大成(元西武)に副島孔太(元ヤクルト)、高橋由伸(前巨人監督)もいて。対戦する相手じゃなくて見る相手。それ以降も強い代がたくさんあった。

 片桐さんが最初に監督をやった時もそうだけど、しっかり選手にバットを振らせ、2008年の春は県大会4強。すごく魅力的だと思った。昨夏も対戦させてもらったけど、ぶんぶん振れる子が多くて、紙一重で勝たせてもらった。また手ごわい相手が増えたので困ってます(笑)。

 3監督の就任以後、直接対決は過去6試合。そのうち横浜と慶応は4度対戦し3勝1敗。16年は夏秋続けて決勝でぶつかり、夏は横浜、秋は慶応に軍配が上がった。慶応は昨夏の北神奈川準々決勝で桐蔭に勝ち、昨秋の県大会決勝では横浜が11-2で桐蔭を下した。

 運動部長 戦って感じた互いの印象はどうですか。

 森林 平田さんは監督になったのが同じタイミングで、1年目の夏に決勝で当たったので印象的。全然勝てるわけないと思った。渡辺監督から引き継がなきゃいけないものも多いだろうけれど、いろいろ思い切って変えられてるなと感じてすごく勇気をもらった。

 片桐さんの桐蔭は打者のスイングがよかったので、真っすぐに強いかなというイメージがあった。昨夏の北神奈川大会準々決勝は先発をエースの生井ではなく軟投派の渡部でいったが、初回から変化球もきれいに打たれて。土屋先生(恵三郎、現星槎国際湘南監督)の時とは違い、右も左もしっかり振らせるバッターが多くなった。

 片桐 慶応さんは走力、守備力、投手力、全部がそろっている。うちの打撃を過大評価してくださったが、これまで「こういう打線をどうにかつくれないものかな」と思って見ていた。

 横浜は平田監督になって「豪快になった」という人もいるが、かつての横浜のような部分も見える。豪快さも増し、緻密さも消えていない。それは対戦してみないと分からない。一度やらせていただき、やはり僕の知っている横浜だなと。

 平田 桐蔭との秋の決勝では試合前から「絶対に勝たせちゃいけない相手なんだ」とかなりのげきを飛ばした。関東大会では鬼門の初戦で常総学院(茨城)を破ってそのまま優勝するというのは、全国から遠ざかっていたとかではなく、常に高い水準にチームのレベルがあるということ。

 16年秋の県大会で慶応が優勝した時、神奈川新聞に「選手の邪魔をしないようにやってきた」と森林監督のコメントが載っていた。あれは名言。私と似た境遇で同じ立場になった方が、そういう考え方で指導されている。勝手に私の中でライバル意識が芽生えた。

 あと慶応の選手はアップでも談笑したり、いつも自信満々。あの余裕のある感じが本当に嫌なんですよ(笑)。どうやってあのメンタルに持っていけるのか。それと同じくらい嫌なのが、タテジマの「打倒横浜」というフレーズ(笑)。

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 タテジマのユニホームでおなじみの東海大相模。門馬敬治監督は3度の全国制覇を果たすなど甲子園通算24勝。神奈川の現役監督の中では断トツの実績を残している。

 運動部長 3監督にとって東海大相模はどういう存在ですか。

 平田 勝負に対する執念はやはり群を抜いている。あのユニホームに、あの監督さんのベンチでの存在感。やっぱり恐ろしいですよ。あのチームと対峙(たいじ)するのは、震えちゃうくらい恐ろしい。

 森林 うちにないものを持っている。門馬さんがいるからこそ、チームがもともと持っていたエネルギーがさらに増幅してああいうチームになる。できれば試合したくない(笑)。夏は勝たせてもらったが、10回やって2、3回勝てればという確率の試合を何とか引っ張ってこられた。やっぱり向こうの方が強い。

 片桐 門馬さんは東海大コーチだったので大学時代から知っている。いつも三塁コーチで、めちゃめちゃ元気。日体大は当時、1学年上にカープに行った山内泰幸さんがいて、一つ下には小林雅英(元ロッテ)がいた。2人ともフォークボールが決め球だったが、三塁から「挟んだ!挟んだ!」「次は絶対スライダーだ!」とか声がすごい。監督になられても、練習量などはもちろん、目に見えない部分でさえ目に見えさせるような全てを前面に出していく前のめりのチームになるだろうと想像できた。

 50、60歳と年齢を重ねていった時にあのアグレッシブさをずっと出されていくのかが気になる。土屋監督も桐蔭時代と星槎とじゃあ選手との接し方も白と黒くらい違う。子どもたちの気質も変わってくるだろうし、門馬先生がそのままあのスタイルで行くのか、それとも変えてくるのか、勝手に興味を持っている。

 平田 サガミに勝つとOBが喜んでくれる。「おめでとう」じゃなくて「ありがとう」って。そこに伝統というか、過去からの因縁を感じますよね。


ひらた・とおる 横浜-国際武道大。高校時代は捕手で主将。2001年夏に荒波翔(元横浜DeNA)らとともに甲子園4強入り。大学卒業後の06年に同高コーチとなり、10年から部長。15年夏の神奈川大会後、渡辺元智前監督の勇退に伴い、監督就任。県内公式戦の勝率9割4分5厘(69勝3敗1分)。県外公式戦は10勝9敗。横浜市出身。35歳。
ひらた・とおる 横浜-国際武道大。高校時代は捕手で主将。2001年夏に荒波翔(元横浜DeNA)らとともに甲子園4強入り。大学卒業後の06年に同高コーチとなり、10年から部長。15年夏の神奈川大会後、渡辺元智前監督の勇退に伴い、監督就任。県内公式戦の勝率9割4分5厘(69勝3敗1分)。県外公式戦は10勝9敗。横浜市出身。35歳。

もりばやし・たかひこ 慶応-慶大。高校時代は遊撃手。大学時代は同校野球部の学生コーチ。サラリーマンを経て筑波大大学院で教員免許を取り、慶応幼稚舎教諭。2012年から助監督、15年秋から監督。昨夏の全国選手権大会で自身の甲子園初勝利を飾った。県内公式戦の勝率8割7分1厘(54勝8敗)。県外公式戦は4勝4敗。東京都渋谷区出身。45歳。
もりばやし・たかひこ 慶応-慶大。高校時代は遊撃手。大学時代は同校野球部の学生コーチ。サラリーマンを経て筑波大大学院で教員免許を取り、慶応幼稚舎教諭。2012年から助監督、15年秋から監督。昨夏の全国選手権大会で自身の甲子園初勝利を飾った。県内公式戦の勝率8割7分1厘(54勝8敗)。県外公式戦は4勝4敗。東京都渋谷区出身。45歳。

かたぎり・けんいち 桐蔭学園-日体大。高校時代は遊撃手。1991年夏に高橋由伸(前巨人監督)、高木大成(元西武)らと甲子園出場。大学卒業後、同高コーチを経て2007年秋に監督就任。09年春の退任後は部長を務め、17年秋から再び指揮を執る。県内公式戦の勝率8割2分9厘(34勝7敗)。県外公式戦は4勝1敗。東京都八王子市出身。45歳。
かたぎり・けんいち 桐蔭学園-日体大。高校時代は遊撃手。1991年夏に高橋由伸(前巨人監督)、高木大成(元西武)らと甲子園出場。大学卒業後、同高コーチを経て2007年秋に監督就任。09年春の退任後は部長を務め、17年秋から再び指揮を執る。県内公式戦の勝率8割2分9厘(34勝7敗)。県外公式戦は4勝1敗。東京都八王子市出身。45歳。

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