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論説委員2018回顧(上)

社会 神奈川新聞  2018年12月30日 00:49

 「米国第一」を掲げたトランプ大統領を台風の目に世界の混迷は深まる一方、国内も「森友・加計学園」や「働き方改革」など年初から国会論戦が荒れ続けてきた。列島は相次ぐ集中豪雨や地震など災害にも見舞われた。戦後73年を刻み、来年の改元を控えた2018年を、社説を担当する論説委員が振り返った。

改ざん、隠蔽「またか」


国政・憲法改正
 -国政は年初から大揺れだった。国会論戦もお寒い限りだがどう見るか。

  事実と異なる資料を用いたり、審議もそこそこに重要法案が次々と通った。国会の空洞化が甚だしい。

  片山大臣も含め、安倍首相や麻生財務相のけじめのなさが内閣に蔓延(まんえん)している。立件されなければいいという反道徳的な態度は子どもの教育にも悪影響だ。

  内閣改造でも麻生氏が続投したのは傲慢(ごうまん)としか言えない。いつから責任を取らない文化になったのか。

  福田淳一前財務事務次官の女性記者に対するセクハラは、麻生財務相が「はめられた」と発言して被害者をおとしめ、問題の根深さを浮かび上がらせた。

  中央省庁などの障害者法定雇用率水増しも許せない。自立を目指す障害者らの切実な願いに応えてほしい。

  公文書の改ざん、隠蔽(いんぺい)は内閣総辞職につながっておかしくない問題だが、国民全体が「またか」という冷笑主義に陥っている。

  公文書改ざんは公正中立を信とする行政官の万死に値する行為だ。政権に忖度(そんたく)して事実をねじ曲げる行為は官に対する国民の信用を根底から揺るがす。猛省するべきだ。

 -改憲論議は首相の思惑通りには進んでいないが見通しは。後半国会は外国人受け入れ問題が与野党から取り上げられた。

  首相の改憲案は、専守防衛で抑制的であった自衛隊を変容させるのに確信犯的に「変わらない」と言っている。姑息(こそく)で不誠実だ。

  発議の際に求められる最低限の条件は、政権への信頼だ。安倍政権の政治手法を見るとき、内容を語る前に改憲を発議する資格はない。

  外国人労働者の受け入れ拡大でも、実際に対応を迫られるのは自治体だ。来年4月までに省令は定まるのか。

  外国人は都合のいい労働力ではない。受け入れを拡大するなら、暮らしを支える支援策や地域の理解を深める方策も必要だ。

  重要項目の多くは省令などで決まるため、国会のチェックが難しいとの懸念がある。その構図は日米地位協定と重なる。日本政治の本質を表しているようだ。

  来年4月から高度プロフェッショナル制度が導入されるが、政府は裁量労働制導入についてもあきらめていない。働き方についてはこの先も注視する必要がある。

拉致解決へ正念場


国際・安全保障・経済
 -トランプ米大統領の振るまいにも起因しているが国際社会のめまぐるしい動きから目が離せなかった。歴史的な米朝首脳会談も実現したが…。

  米国の中間選挙は、トランプ氏が大敗しなかったということに尽きる。世界の混乱はしばらく続きそうだ。

  中間選挙善戦後、トランプ政権の対中敵対政策はややトーンダウンしている印象。ただし、次期大統領選で再選を目指すトランプ氏は日本を含め引き続き2国間交渉をこだわり、「取引」を有利に進める姿勢を崩さないだろう。

  トランプ政権の保護主義に巻き込まれないよう、米国偏重を見直す必要がある。自由貿易を貫くよう、各国と歩調を合わせる時だ。

  政府が「正念場」とする拉致問題は、米国頼みではなく当事国として解決する覚悟が必要だ。担当相に就いた菅義偉官房長官には歴史的決断が求められる。

  拉致被害者家族の高齢化は本当に深刻。他国の動向に左右されないよう日朝間で独自に交渉を進めるべきだ。

  北方領土の返還交渉は今年も進展がみられなかった。2016年末の長門会談以降、ロシアに主導権を握られ続けていると感じる。

  沖縄県民の辺野古新基地建設反対の民意を一顧だにしない安倍政権の姿勢は、民主主義、地方自治の危機だ。沖縄だけでなく、日本全体で考える必要がある。

 -国内外の経済は基本的に拡大局面を維持したといえるか。

  景気拡大の最大の要因は、政策というより世界の経済回復だ。為替が円高に振れるだけで企業業績は簡単に悪化し、楽観は禁物。新産業創出などの取り組みを急がねば、日本経済の将来は安泰でない。グローバル需要を見据えた新商品の開発など、たゆまない努力は必須だろう。

  潤沢な内部留保を背景に大企業主導の景気回復が継続する中で、中小零細との格差が一層拡大していくだろう。個人商店は消費税アップと軽減税率対応の設備投資の二重苦に直面している。地銀再編は旧第二地銀を軸に今後さらに加速するだろう。一方、横浜銀行などの体力のある大手は、規模の拡大よりも自行の経営力強化に注力していくのではないか。

  日産のゴーン前会長逮捕は非常に驚いた。

  県内サプライヤー、販売に現時点で大きな影響は見られないが、ルノー、三菱自動車との3社連合の行方が最大のポイントになる。

  ゴーン容疑者逮捕を機に、長期の勾留や取り調べに弁護人が立ち会えない日本の司法制度が批判されている。国際基準に合わせた改革の契機としたい。

信頼取り戻す覚悟を


参院選、一強多弱
 -来年の参院選についてはどうみているか。

  来年は統一地方選と参院選が重なる12年に一度の選挙イヤー。皇位継承や改元など歴史的転換点となる来年こそ、直面する危機への対症療法だけでなくこの国の針路を真剣に論じる政治選択の機会としたい。

  4月の統一選が参院選を占うカギとなる。特にリベラル層が多い本県で立憲民主党が議席を本当に伸ばせるか否か、注目したい。

  入管難民法改正を巡る国会審議は与党が数を武器に強引に進める様子が際立った。野党の力不足も感じる。

  野党は今年も存在感を示せず、自民党総裁選も無難な結果で失望した。同党の中にも外にも「自分が取って代わる」という強い意志を持つ者がいない。

  足並みの乱れが目立つ野党の現状は、政権奪還にほど遠い。本気で一強多弱を打破する覚悟があるなら、勢力と政策を結集して国民の信頼を取り戻すことが必要だ。

▶論説主幹 林義亮
▶論説委員(五十音順)
 石本健二 岡本晶子 香川直幹 柏尾安希子 川村真幸 高本雅通
 桐生勇 西郷公子 佐々木航哉 下屋鋪聡 田中大樹 真野太樹
 宮崎功一 吉田勝行 尹貴淑 米本良子 渡辺渉


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