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鎌倉副市長に知事特別秘書 異例人事に飛び交う臆測

政治行政 神奈川新聞  2018年12月23日 00:35

鎌倉市役所
鎌倉市役所

 鎌倉市の副市長に知事特別秘書を起用する人事案は21日、市議会の賛成多数で同意された。安倍政権の実力者の息が掛かった知事側近が、鎌倉市の幹部に転じる真意は何なのか-。唐突な人事に松尾崇市長の思惑や黒岩祐治知事の政治的影響に絡む臆測が飛び交い、賛否が拮抗(きっこう)した市議会では反発を封じる水面下の神経戦が繰り広げられた。異例の人事を巡る攻防は、1カ月近くにわたり県政界に波紋を広げた。

 「市長の国政転身を見据えた後継者か」「地元衆院議員を差し替える前兆か」「そもそも市議会の同意は得られるのか」…。

 松尾氏の意向が表面化した11月16日、県内の政財界にさまざまな臆測が駆け巡った。事前に知らされていたのは市や県の幹部、議員のいずれも一握りだけで、大半は新聞記事で事態を把握。動揺は瞬く間に県内各所に広がった。

 新副市長の就任が決まった千田勝一郎氏(48)は、参院選への出馬経験もある菅義偉官房長官(衆院2区)の元秘書。黒岩知事が初当選した2011年に知事の政務を担う特別秘書に就き、県と政府とのパイプ役を担ってきた。

 「国政志望のはずの千田氏が、待遇面でも格下の市幹部で終わるはずがない。絶対、裏に何かがある」

 多くの関係者に共通していたのは、千田氏が副市長を踏み台に首長や国政に打って出るとの見立てだ。45歳にして3期目の松尾市長が国政進出を狙い、後継者に指名する。自民党内で公認争いがある地元衆院4区の候補予定者を差し替える。それぞれのポストに千田氏を重ねて警戒する動きが後を絶たなかった。

 誰もが真意を探ろうとする中、ベテラン県議が冷静に分析。「官房長官が黒岩県政に見切りをつけ、知事から特別秘書を切り離した」。同様の見方は政財界の多くから聞こえ、「県政界の地殻変動」を予言する声が相次いだ。

 政治の表裏を知り、国や県の行政に明るい千田氏を実務者のトップに引き抜く狙いは、国や県が絡む懸案の解決と鎌倉の先駆的構想の具体化とされた。当初は戸惑っていた黒岩知事も「いなくなるのは痛いが、彼の思いをくむのが正しい選択」と承諾。松尾市長は周囲の了承も取り付け、市議会12月定例会への提案を模索していた。

 しかし、唐突な人事に市議会では不信感が増幅。市長に批判的な市議を勢いづけ、提案も危ぶまれる状況に陥った。「もし同意を得られなかったら、県との関係も悪化してしまう」。大半の理解を得た上での提案を目指しながらも、水面下の票読みで賛否は拮抗。市議の動向を見極める上で、最大の懸案は会派内で賛否が割れていた自民党市議団への対応だった。公明党市議団も自民が一枚岩になることを条件に賛成するとされ、慎重な駆け引きが続いた。

 「どうにか、頼みます」。多方面からの外圧に加え黒岩知事も説得に動く中、ようやく風向きが変わったのは報道から3週間近くが過ぎた12月上旬。自民内で強硬に反対していた市議を封じ込めたのは、誰もが背後に感じていた人物だった。「官房長官から直々に電話が入ったようだ」。市議がささやいた。

 政務ではなく政策に携わる副市長としての活躍に理解を示したとされる菅氏の介入は、松尾市政の今後を占うのか。国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の推進や東京五輪、JR「村岡新駅」構想といった国や県が絡む課題が山積する鎌倉市。これまで政治的側面から菅氏や黒岩知事を支えてきた「弁慶」の手腕は未知数だ。


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