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横浜市教委がいじめ調査報告を公表
「学年全体からいじめ」 横浜市立小児童、心身の苦痛訴え

社会 神奈川新聞  2018年12月21日 17:00

いじめ重大事態の調査結果が報告された横浜市教育委員会臨時会=同市中区
いじめ重大事態の調査結果が報告された横浜市教育委員会臨時会=同市中区

 横浜市教育委員会は21日、市立小学校で起きた、いじめ重大事態の調査報告書を公表した。児童は「学年全体からのいじめ」で心身の苦痛を感じたと訴えている。一方、被害児童の保護者の意向で、公表版には、いじめの内容などの詳細は一切、明らかにされていない。

 公表版とは別に神奈川新聞社が入手した資料などによると、被害児童は現在、小学6年生。1年生から5年生までの間、断続的にいじめを受けた。クラス替え後も続き、「学年全体の児童から被害を受けた」と訴えている。

 被害児童側からの訴えを受け、学校の「いじめ防止対策委員会」に弁護士や臨床心理士らも加わり、被害児童と教諭から聞き取り調査をした。

 対策委の外部委員は、5年時の担任で学年主任でもあった教諭が多くの業務を抱え、被害児童が相談できなかったと訴えた点を問題視。補助教員の拡充などを文科省に働き掛けるよう市に提言している。

 市教委は報告書の内容を補った上で、各学校に周知し、再発防止につなげるとしている。市教委が調査中のいじめ防止対策推進法に基づく重大事態は、9件となった。

「先生がいない。教室にも、職員室にも」



 先生がどこにもいない-。公表された報告書は、被害児童の悲痛な訴えを通し、業務に忙殺され、児童に寄り添うことができていない教員の現状も浮かび上がらせた。

 「先生は話しに来てって言うけれど、先生がいない。教室にもいない。職員室にもいない」。報告書には、被害児童の悲痛な訴えが記載されていた。

 被害児童は「いじめ防止対策委員会」の聞き取り調査に対し、学年主任を務めていた担任教諭と話したい時に話せなかったと訴えた。対策委の外部委員は特に業務量の多い学年主任や児童支援専任教諭を、児童数に応じて増員すべきと提言した。

 21日に開かれた市教育委員会の臨時会でも、委員の一人は「学校現場が(いじめに)十分対応できる体制になっていない」と指摘。別の委員は正規教員の定員増を文部科学省に働き掛けるとともに、市独自の対策も講じるよう求めた。

 市教委は「人的環境ができるだけ改善されるよう取り組み、教職員の働き方改革につなげたい」と述べるにとどめた。

保護と再発防止の両立難しく



 21日に発表されたいじめの報告書の公表版で、横浜市教育委員会は内容や時期などの詳細を明らかにしなかった。市の指針では被害者側の同意を必須とはしていないが、被害児童が再び傷つくことを心配する保護者の訴えを重く受け止め、「特例」とした。教育委員からは、被害者保護と再発防止とを両立させるための公表の在り方について意見が相次いだ。

 公表版は全3ページ。いじめの内容に関する記述はほとんどなく、2ページ半は再発防止策で占められた。市教委が基礎的な情報を伏せたまま、公表したのは2例目。

 ガイドラインでは、公表の目的を「再発防止」と定め、被害者側の同意は必須条件にしていない。市教委によると、今回は被害児童が公表を機にいじめを思い出すことを保護者が強く懸念していることから、ガイドラインの「少なくともいじめの有無および再発防止策は公表」との記述をよりどころに範囲を限定した。

 21日の市教委臨時会で、委員の一人は「もう少し詳細が見えた方が、(各校の)理解が深まる」と指摘。別の委員は「当事者意識を持って読むことができない心配がある」とする一方、「被害者の意向を尊重するのは当たり前。全てオープンにすればいいものではなく、バランスを考慮してほしい」と注文した。

 公表版は通常、市立全学校と共有するが、今回は通常と同程度の情報を補った上で通知した。市民が閲覧できるホームページは限定公開にとどめた。

 市教委の担当者は「あくまで特例」としつつ、「被害を受けた子どもを再び傷つけることだけは避けなければならない」と話した。


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