1. ホーム
  2. 時代の正体
  3. 時代の正体〈484〉絶望背かぬ、私は叫ぶ 朗読詩人・成宮アイコさん

障害者殺傷事件考
時代の正体〈484〉絶望背かぬ、私は叫ぶ 朗読詩人・成宮アイコさん

時代の正体 神奈川新聞  2017年06月18日 09:15

ライブでは「傷つかない人間なんていると思うなよ」と絶叫する成宮アイコさん=東京都新宿区
ライブでは「傷つかない人間なんていると思うなよ」と絶叫する成宮アイコさん=東京都新宿区

【時代の正体取材班=草山 歩】「障害者は天使ではない、ごみではない。何度でも言うよ、障害者は天使ではないんだよ!」「私たちは別々の人間だし、同じ人間なんだよ、いいか!」

 昨年11月、バンドの伴奏に合わせて詩を絶叫する女性が舞台の上でスポットライトを浴びていた。相模原市緑区の障害者施設で発生した殺傷事件を受けて開催されたライブイベント。成宮アイコさん(34)=東京都新宿区=は生きづらさに立ち向かう言葉を叫び続けていた。

 イベント最後のナンバー。沸き立つ会場に、幾重にも声がこだまする。派手なメークや衣装の知的障害者が歌う。成宮さんはその中心でマイクを握り、何度も何度も繰り返した。

 「傷つかない人間なんていると思うなよ、傷つかない人間なんていると思うなよ!」

 成宮さんは事件後、知的障害があるメンバーが中心のバンド「スーパー猛毒ちんどん」を誘って共同でライブを企画した。「知的障害者や精神疾患の人の本当の姿を見てもらいたい」との思いからだった。

 定員60人ほどの会場は満員。健常者も障害者も分け隔てなく楽しんでほしい。そんな願いを込め、あえて車いすの観客向けの特別席を設けず、まぜこぜになって押し合いながら熱狂した。

 観客に呼び掛けるように、あるいは自分自身を納得させるように、成宮さんは叫び続けた。

 「絶対に黙らないで、声を、言葉を、自分を、なかったことにしないで」

■■■

 成宮さん自身、社会不安障害という精神疾患がある。生まれ育った新潟で、同居する祖父から暴力を受けて育った。「『おまえは家族の最下位』と言われ、自尊心を持てなかった」。父親は蒸発し、今も連絡は取れない。母親をがっかりさせないように、それだけを考えて、家庭では自身を押し殺しながら過ごした。

 学校でも信頼できる友達はいなかった。「暗い」「声がきもい」などと周囲に言われ続けた。

 「ずっと黙っていると声の出し方とか大きさが分からなくなった」。大きすぎる声を出し、さらに自分を追い詰める、その繰り返しだった。周囲からどう見られているかばかりが気になり、「そのうち、呼吸するときに肩が上下する幅が周りの子と違うんじゃないかと思い始めちゃって、学校にいるのがつらくなった」

 思春期、近所の大型スーパーの肌着売り場とトイレの間に置かれているベンチが唯一安心できる居場所だった。放課後に1人で腰掛け、読書をして過ごすのが日常だった。しゃべる相手がいないから、5種類の日記を同時に書いていた。いじめられてつらかったこと、他人よりも自分は劣っていて対等ではないと感じていたこと。あふれ出しそうな思いや考えを抑えきれず狂いそうになった。

 残りの授業日数を日めくりカレンダーで数え続け、ようやく迎えた卒業式。いつものベンチで一人、卒業証書を広げた。「この世は生きづらい場所で、救いなんてない」。絶望に押しつぶされそうな青春を過ごした。

■■■

 出会いは偶然だった。

この記事は有料会員限定です。

月額980円で有料記事読み放題/100円で24時間読み放題のコースも。詳しくはこちら


シェアする