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野放しの人権侵害未然に防ぐ
〈時代の正体〉全国初、ヘイト事前規制へ指針案 川崎市が来春施行

時代の正体 神奈川新聞  2017年06月17日 00:09

「共に生きよう」などと寄せ書きされた横断幕を掲げヘイトデモに抗議する市民=2016年1月31日、川崎市川崎区
「共に生きよう」などと寄せ書きされた横断幕を掲げヘイトデモに抗議する市民=2016年1月31日、川崎市川崎区

【時代の正体取材班=石橋 学】川崎市は16日、特定の人種や民族への差別と排斥をあおるヘイトスピーチを事前に規制するガイドライン案をまとめ、市議会文教委員会で報告した。不当な差別的言動が行われる恐れがある場合、公的施設の利用申請を不許可にすることができる。野放しだったヘイトスピーチによる人権侵害を未然に防ぐための全国初の施策で、20日から7月19日までパブリックコメントを募り、11月に策定・公表、2018年3月末に施行する。

 公園や市民館などの公的施設の利用に関して「不当な差別的言動の恐れが客観的な事実に照らして具体的に認められると判断された場合」は警告、条件付き許可、不許可、許可の取り消しという4段階の利用制限ができると定めた。

 対象となる不当な差別的言動にはヘイトスピーチ解消法の定義を当て、排除の扇動、危害の告知、著しい侮蔑の3類型を例示。状況や文脈に応じて判断する必要も示した。人種差別撤廃条約や解消法の付帯決議を踏まえ、法文上の「国外出身者と子孫で適法に居住する者」以外への差別的言動も含まれるとした。

 許可の可否は利用申請の名目や告知内容、申請者の性質や活動などを総合的に判断して行う。恣意(しい)的な判断を避けるために学識者らでつくる第三者機関を設け、不許可、許可取り消しに当たってはその意見を聴取する。警告や許可条件に反した場合、次回以降の判断材料とする。


ガイドライン案が報告された川崎市議会文教委員会=川崎市役所
ガイドライン案が報告された川崎市議会文教委員会=川崎市役所

 同市では市内在住の男性により在日コリアンを標的にしたヘイトデモが13年5月から12回繰り返されてきた。解消法成立直後の昨年5月に不許可になるまで、デモ出発前の集会のための公園利用が認められてきた。ヘイトスピーチの被害を訴えてきた在日3世の崔(チェ)江以子(カンイヂャ)さん(44)=同市川崎区=は委員会を傍聴し、「行政機関が人権被害から守る策を講じてくれて大変心強い。解消法ができてヘイトスピーチは許されないという社会の機運が高まり、市民、行政、議会がヘイト根絶へ同じ地平に立ったと実感する。他の自治体にとっても大きな力と希望になる」と歓迎した。

【解説】人権と表現二重に守る


 川崎市がまとめたヘイトスピーチを事前規制するガイドライン案は、不当な差別的言動を許さないとするヘイトスピーチ解消法の理念を実効性ある施策として具現化するものだ。
 表現の自由を重んじる立場から事前規制への慎重論も語られる中、道筋を示したのは被害者の声だった。社会的力関係を背景に属性を攻撃するヘイトスピーチは、恐怖と不条理さから沈黙を強いる。ヘイトスピーチこそは表現の自由を侵す。体を震わせながらの訴えがそう教えてくれた。

 ヘイト規制のガイドラインはだから人権と表現の自由を二重の意味で守る。守るべき表現の自由と差別者が求める「差別する自由」を峻別(しゅんべつ)するとともに規制の逸脱を防ぎ、権力による乱用の歯止めとなるからだ。

 議論の土台となった昨年10月、市人権施策推進協議会専門部会。法的根拠となる条例や第三者機関を設けるといった制度設計が国際人権法の専門家によって示され、規制に消極的な憲法学者も「一考に値する」とうなずかざるを得なかった。

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