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軍事郵便、薬物密輸の温床 日米当局、米兵摘発の舞台裏

社会 神奈川新聞  2017年06月07日 13:50

軍事郵便の中から発見され、押収された薬物(米軍が情報開示した資料から)
軍事郵便の中から発見され、押収された薬物(米軍が情報開示した資料から)

 在日米軍基地の郵便局経由で大麻を密輸していた疑いがあるとして、日米当局が県内の米兵や元米兵らを摘発していたことが、神奈川新聞社の情報公開請求に対して米軍が開示した記録で明らかになった。2015年までに、10回以上にわたって大麻が米国から発送されたとみられ、日米地位協定に基づく軍事郵便のシステムが薬物密輸の温床となっていた実態が浮かぶ。軍法会議の証言では日本国内で密売されていた疑いもあったとみられる。

 15年2月、厚木基地(大和、綾瀬市)にある郵便局。米本土から届いた小包を携えた米兵が、仲間の米兵に電話をかけた。

 「受け取ったぞ」

 電話越しに仲間が答えた。

 「持ってきてくれ。電話では話したくない」

 米兵は指定された場所に車を走らせた。基地内の駐車場で、仲間と落ち合う。

 そのとき、米軍の捜査員が現れ、2人を拘束した。

 米軍が情報公開した捜査資料をひもとくと、米兵2人の逮捕劇はこうした状況だった。摘発までの捜査は、次のような経緯をたどっていた。

□ ■
 横浜港の米軍専用埠頭(ふとう)、横浜ノースドック(横浜市神奈川区)の隣には米軍の中央郵便局があり、本国から届いた軍事郵便が仕分けられ、各基地に配送される。非公用の軍事郵便物は、日本側の税関当局の検査対象だ。

 2人が逮捕される半月ほど前、郵便物から2回にわたり大麻が見つかった。計7・4キロに上った。

 日米当局の協力による捜査が始まった。郵便物の大麻は偽物とすり替えられ、そのまま宛先の米兵の私書箱に発送されていく。「クリーン・コントロールド・デリバリー」と呼ばれる泳がせ捜査だ。

 開示された米海軍の軍法会議の記録や年次犯罪報告書の内容、県警への取材を総合すると、この捜査で摘発されたのは計3人。米兵2人のほか、厚木基地に以前配属されていた元米兵の1人も関与していた。

 米軍に拘束された米兵は当初、県警の調べに「箱の中身が大麻とは知らなかった」と述べていた。日本側の起訴には至っていない。

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 その後、米軍が米兵2人に対する捜査を継続する。米側の記録によると、この段階で2人とも、10回以上にわたって大麻を受け取っていたことを認めた。

 「日本で拘禁されるのが怖くて、日本の聴取にうそをついた」。米兵の1人が米側の調べに明かした。

 米兵2人の関与は、元米兵に依頼されてのものだったとみられる。除隊後に基地の郵便局を利用できなくなった元米兵が、軍事郵便物の受け取りを2人に依頼したらしい。

 2人は元米兵の指示で大麻を都内や関西に運び、民間人の顧客に届け、それぞれ数万~数十万円の謝金を受け取っていたことも供述した。「本国の家族に送金したかった」などと動機を説明した。だが、同僚からは「(米兵は)いつも高級品を持っていた」との証言も出ていたという。

 2人はそれぞれ15年8月、16年3月に横須賀基地(横須賀市)で開かれた軍法会議で除隊処分や拘禁などの判決を受けている。

 元米兵は15年4月に県警に逮捕されたが、密輸容疑については不起訴となる一方、都内の自宅で大麻を所持していた罪で起訴され、執行猶予付きの有罪判決を受けている。

「家族や母国、海軍、日本に申し訳ない」



 昨年3月、米海軍横須賀基地で開かれた軍法会議の法廷。訴追された米兵の1人が大麻密輸を謝罪した。逮捕された際、駐車場で小包を受け取るのを待っていた米兵だ。

 元米兵に依頼されて小包を郵便局から受け取ってもいた。「友人に頼まれて断れなかった」。証言はときどき涙声になった。

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