
京急線南太田駅にほど近い横浜市南区の寺院。5月、新緑まぶしい境内を女子高生3人が巡った。
「この近くは横浜大空襲で大きな被害に遭い、焼夷(しょうい)弾や火災で焦げた跡が残ってる。本堂の柱の白っぽいところもそうかな」
山門の変色部分に見入ったり、石碑の傷を指でなぞったり。想像力を働かせ、戦争の爪痕をつい探してしまう。「これって『グローカリー病』だよね」。72年前の惨禍の記憶をたどるという気負いはない。あくまでも自然体だ。
3人は市立横浜商業高校(Y校、同市南区)の3年生。同校の任意団体「NGOグローカリー」のメンバーだ。学校の窓から見える日常の景色にも戦争の記憶が刻まれている-。生徒たちに気付かせてくれたのは、顧問の鈴木晶教諭(56)との出会いだった。
活動開始は2007年。自分の目で見て、考えることを大切にしてきた。
活動の中心はフィールドワーク。昨年は、太平洋戦争末期に学校近くで発生した米軍のB29爆撃機墜落の目撃者を訪ね歩いた。「ここにあった松の木にパラシュートを着けた米兵が引っ掛かっていた」「降ろされた後、憲兵に殴られたり、蹴られたりしていた」。証言一つ一つが見慣れた街の風景を一変させ、戦禍がわが事となった。
「どう感じるかは個人の自由。出発点として日々の暮らしの中に歴史があることを知ってほしい。そこから想像力や社会の構造を捉える力、批判的に見る目を養ってもらいたい」。鈴木教諭の願いだ。
グローカリーは来春、