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「相手知り、想像して」 障害者差別解消法 施行1年(下)

社会 神奈川新聞  2017年05月05日 11:31

写真左から内嶋順一さん、山下優子さん、奈良崎真弓さん、内嶋順一さん
写真左から内嶋順一さん、山下優子さん、奈良崎真弓さん、内嶋順一さん

 施行1年の「障害者差別解消法」。さまざまな障害者による語りからは、「障害について知らない」ことが差別につながることも浮かび上がった。 

啓発が今後の課題

松島雅樹さん 横浜市脳性マヒ者協会会長
〈プロジェクターを使いながら〉
 脳性まひの特徴は、主にアテトーゼと言語障害。アテトーゼは、自分の意志とは関係なく手足が動いてしまう。他人にはなかなか理解しにくいだろう。

 障害者差別解消法ができたことを知っている市民がどれだけいるだろうか。全く関心がない市民に、どう啓発していくか、今後の大きな課題となると思う。


松島雅樹さん
松島雅樹さん

 差別していると分かってする人は、割と容易に解消できるのではないか。大多数は、差別意識が全くないのに、結果的に相手には耐え難い状況になるケースだろう。

 脳性まひ児・者に対しても、一例として言語障害による差別がある。何も分からないと思い込んで幼い子どもに対するような言葉で話してくる。「僕、暗くなるから早くおうちに帰らないといけないでちゅよ」と。本当に頭にくる。

 僕は50歳すぎのおじさんだけど、同年齢の健常者にも幼児語で言ってみろ、と怒鳴るように言うと、何で怒るのかとけげんな顔をされる。差別の意識は全くなく、むしろ親切心。この言葉遣いが差別になるとは夢にも思わない。そういう人に気づかせるのは至難中の至難。そこが差別解消の難しさだ。

 そんな僕も差別をする。視覚障害者の方に「景色がきれいですね」と言ったり。言われた人は「差別以外のなにものでもない」と激怒する。それは当たり前の感情だ。

 人間は差別する生き物だ。一人一人が自分は誰かを差別しているかもしれないと思えれば、徐々に減らせるのではないか。

合理的配慮あれば

奈良崎真弓さん 本人の会 サンフラワー
 私は知的障害の本人。きょうは、一般の人はいますか? いないことがショック。一般市民って難しいなというのを今回感じた。

 知的障害の人は、人と社会とコミュニケーションが苦手、という人が多い。でも私みたいにいっぱい話す人もたくさんいる。


奈良﨑真弓さん
奈良﨑真弓さん

 最近皆さんに、奈良崎さんは漢字が読めていいね、花屋で働けていいね、と言われる。説明があって、困ったときに助けてくれる人がいれば一緒に働ける。それはほかの障害の人も同じだと思う。

 ごめんなさい、私、松島さんの脳性まひの言葉が非常に分かりにくい。どうしてって、興味がないから、勉強しようとしないからいけないのかなと最近思っていて。私、結構いろいろな障害者のことを無理して理解しようと思って、それでストレスがたまって、最近は理解しませんと誓っている。

 私は、すごく差別してるなと思っている。自分の中にも壁がある。この人とは付き合いたくないと、私の中のバリアが出ている。7歳上の兄が精神障害だが、兄といつも一緒にいると、理解しようっていっても絶対妹は理解しません。きょうだいでも差別している。

 本当に腹が立つのが、毎回障害者年金のことで役所に呼ばれて、漢字だけの資料をいただく。「これ読みにくいんですけど。知的障害は平仮名になるんじゃないでしょうか」と。役所の手紙とかは、どうして漢字にルビという合理的配慮がないのか。

一人一人が理解を

山下優子さん 地域活動支援 センターまなび
 私は発達障害の診断を受けている。法律の施行で何が変わったのかというのが正直な感想だ。

 発達障害という言葉は知られてきたが、十人十色、千差万別だと理解してほしい。こうと決めつけて対応されると、助かることもあるが不安や迷惑なこともある。頭がいいとか、知能が高い、低いだけで困難さを測らないでほしい。一人一人に耳を傾けてもらえれば、私たちももっと耳を傾けて、お互いが寄り添えるのかなと思う。


山下優子さん
山下優子さん

 私たちは精神科や精神福祉にお世話になる人も多い。発達障害の受け入れが始まったのは最近なので、他の精神疾患の方と同じ対応になることが多い。それでは解決できないことが多く、悲しい思いをすることもある。病状によっては行動を制限された方がいい場合もあるが、私たちは意味も分からないままそういうことをされると、特性が悪い方向に進む。

 市民一人一人が、誰かが解決するだろう、と片付けず、理解を深めてくれたらと願っている。当事者、助ける側が歩み寄って対話することで、互いの困難、困り感が減る。そして差別、偏見、サービスの偏りなどがなくなれば、私たちもより努力しようと思うし、生きづらさを克服できる。

 自閉症と肢体不自由があるめいがいるが、きょうだいは子どものころから関わっていて自然に対応する。障害のある人とない人が関わり、バリアフリーな関係を持つことで、それが特別ではなく、当たり前で自然なこと、健常者同士の助け合いと同じという考えが、多くの方に広がればいい。


法の精神広めよう

内嶋順一さん 弁護士
 差別以前に、障害がある方のことを知らないと、まず不安になると思う。

 松島さんが街を散歩しているとき、何をどうすればいいのか、一般の方は戸惑うと思う。障害の特性だとか、話し掛けても分かるかとか、そういうことを知らないと、結局やめておこうとなる。


内嶋順一さん
内嶋順一さん

 そこをまず乗り越えるためには、障害のことを知るというより、まず相手、人を知るところから始めればいいだけの話。たまたま目の前にいる人の特性の一つとして障害がある。人間関係をスムーズにするために、そう知っておくとうまくやれる、それだけのこと。

 想像力を働かすことが、障害者差別を解消する上では大事だ。想像力が働かないからこそ、非常に深刻な差別や困りごとがある。知識がなければ想像もできないし、苦しみも深刻さも分からない。

 解消法の精神は今話したようなことにあると思うし、その裏付けを当事者が話してくれた。聞いた皆さん1人ずつが10人に知らせ、その10人がまた知らせていく。それによって広まるんじゃないか。

 いろいろ話してくれた方の言葉から、何か感じていただいたと思う。これをどう伝えるか。これが障害者差別解消法を広めていく、実質的な活動になると思う。


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