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「人、社会は変わったか」 障害者差別解消法 施行1年(上)

社会 神奈川新聞  2017年05月04日 10:24

写真左から、佐藤秀樹さん、井上良貞さん、池田信義さん、菅原崇さん
写真左から、佐藤秀樹さん、井上良貞さん、池田信義さん、菅原崇さん

 障害のある人に対する不当な差別的取り扱いを禁止し、行政機関に対して合理的配慮の提供を義務づける「障害者差別解消法」が、施行から1年を迎えた。障害の有無に関係なく、暮らしやすい社会にするためにはどうすればいいか。「障害者差別解消シンポジウム」(神奈川県弁護士会、横浜市主催)が4月下旬に開かれ、さまざまな障害がある当事者らが、日常生活での差別や体験談などを語った。

共に考える機会に


コーディネーター
■菅原 崇さん
(弁護士)
 私も車いすを利用する障害当事者。8年ぐらい前までは普通に歩き、健康というか普通の人だったが、事故に遭った。事故前は食品会社の理系の総合職。仕事を続けたかったが、退職せざるをえなくなった。

 無職になっていろいろ悩み、社会復帰する道を探ったとき、弁護士になることを勧められて挑戦した。2012年に横浜国立大学法科大学院に入り、法律の勉強を一から始めた。司法試験は論文試験で、字が書けないと認められない。2年かけて交渉し、パソコンにマイクをつなげて音声で論文を作るような形で受験を認められた。おかげさまで音声を使った試験としては日本初の合格者となった。

 差別解消とはどういうことなのか、それをこの場で共有して、一緒に考えるきっかけにしたい。

特性知ってほしい


■池田 信義さん(横浜市視覚障害者福祉協会副会長)
 差別をなくすためには、障害特性を分かってもらわなければならない。見えないとはどういうことか。視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚の五感があるが、情報が一番入るところは目だ。

 見えなくなると何ができなくなるか。第一に喪失するのが歩行や移動。2番目は生活技術。朝起きてから寝るまで、歯を磨く、小皿にしょうゆをつぐ、衣服をどういう風にするかなどいろいろな動作がある。それができにくくなり、不自由さ、不便さが生じる。

 コミュニケーション障害も大きい。目線を合わせられないと、ディスカッションでも話し出していいのかなどが非常に分かりにくくなる。レクリエーションの喪失もある。皆さんなら、ストレス解消でスポーツ観戦や映画を見ようとか、散歩に行こうとなる。だが、やはり失明した直後などは、そういう行動はとれない。

 昨日まで見えていて、急に見えなくなることもある。そういう人は四つの喪失が一度に起きて、精神的な打撃がある。そういう状態でも主体性を持ち、その世界で生きられるよう、可能性を少しでも広げていくことが大事になる。

 そのときに求められるのが、ボランティアやガイドヘルパー、地域の人の目だ。交差点や駅で声を掛けていただくことはすごく大事。誘導する際は、視覚障害者の半歩前に立ち、肘を貸す。この状態で進んでもらえると安心できる。

 視覚障害者だと伝えて公共施設の食事に申し込もうとしたら、「扱いが分からない」と入れてもらえなかった例があった。接し方が分からないと、そういう差別をしてしまう。障害特性をしっかりつかんでもらえるとありがたい。

短期間では難しい



■井上 良貞さん(横浜市聴覚障害者協会理事長)
〈手話通訳者を介して〉
 耳が聞こえなくなったのは、生まれて3カ月くらい。ストマイ(ストレプトマイシン)の注射を受け、その結果だと母から聞いた。障害者差別解消法施行から1年たったが、この間に差別が解消されたのか、合理的配慮ができたのか、実例を二つ話したい。

 一つ目。聞こえない女性が、横浜市内の大学を受験したいと申し込んだが、聞こえないことを理由に断られた。彼女は、自分と同じく聞こえない患者さんへのコミュニケーションをスムーズにするため、看護師を目指していた。

 私もときどき病院に行く。手話ができない看護師さんがいる。友人は、入院して手を拘束されてしまい、コミュニケーションが取れなくなったことがある。聞こえない医師、看護師になりたいと思っても、断られてしまうことがある。

 二つ目は私の経験談。クレジットカードをなくし、カード会社に手話通訳を通して電話をしたが、「本人でないと受け付けられない」と相手にしてもらえなかった。

 この1年間で、差別が全て解消されたかというと、とても難しい。一番大切なことは、みんなが努力をして、聞こえる人も聞こえない人も一緒に暮らしやすい、差別のない社会を築くこと。それを目指してがんばっている。

葛藤を抱える人も


■佐藤 秀樹さん(横浜市腎友会副会長)
 耳慣れないかもしれないが、内部障害者という者がいる。体も普通に動く、目も見える、耳も聞こえるが、体の内部、内臓に障害あるいは機能不全がある。

 実は内部障害者の場合、差別事案はほとんど出ない。では問題ないのかというと、ちょっと違う。内部障害という言葉と同じように、心に葛藤がある。

 私は腎不全。腎臓に障害がある。水を飲むと排出できず、毒素がたまり続ける。そのため、人工透析を受けて人為的に処置する。透析は週に最低3回、人によっては1日おき。準備を含めて5~9時間かかる。1年のおよそ半分弱は透析。これが生活上の大きなハンディになっている。

 外見で分かりにくいので、内部障害者は障害を言い出しづらい。理解してもらうことも難しい。

 腎不全の障害者は、血圧の乱高下にさらされることがある。若い障害者が急に血圧が下がり、仕方なく優先席に座ることがある。目の前に老人が立つ。でも席を譲れない。こういうことが生活の中でしばしば起こり、すごく葛藤になる。これが内部障害者の大きな生活の難しさというか、つらさ。

 透析は休むことも延ばすこともできない。やらないと長くても10日で命が危なくなる。大規模災害が起きれば、病院を探し、遠隔地まで運んでもらわないといけない場合もある。皆さん大変な時に、お願いすることができるかも課題だ。

 そういう心の中の問題を抱えながら、日常生活を送る障害者が世の中には存在する。もしかしたら皆さんの隣にもいるかもしれない。


菅原崇さん
菅原崇さん

池田信義さん
池田信義さん

井上良貞さん
井上良貞さん

佐藤秀樹さん
佐藤秀樹さん

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