1. ホーム
  2. 社会
  3. 国家戦略の現場:羽田空港(下)ハブ効果、周辺発展か

国家戦略の現場:羽田空港(下)ハブ効果、周辺発展か

社会 神奈川新聞  2013年10月09日 10:46

羽田空港国際線ターミナルの拡張工事完成予想図=東京国際ターミナル提供
羽田空港国際線ターミナルの拡張工事完成予想図=東京国際ターミナル提供

羽田空港再国際化や対岸に広がる京浜臨海部での特区形成を機に、国境や行政区を越えて、羽田を拠点として新たな人、モノ、情報の流れが生まれつつある。国は羽田、成田の両空港を「首都圏空港」と位置付け、旺盛な航空需要の取り込みへ機能の強化を進める。首都圏で二つの国際拠点空港が立地する中、羽田は国際的な産業交流の軸であるハブ空港となり、その効果が周辺エリアの新たな発展、成長に波及するのか-。

■ 医療品の玄関口 ■

羽田空港再国際化を控えた2010年7月末、国際線地区の一角、多摩川に程近いエリア約17万平方メートルの敷地に巨大な物流基地が姿を現した。

国際線地区貨物ターミナルの整備・運営を担う東京国際エアカーゴターミナル。空港の再国際化を見据え、国は民間資金活用による公共施設等整備(PFI)の規定によって、同ターミナルの運営事業者として「三井物産グループ」を選定。グループの代表企業である三井物産の100%出資で設立された。

新設された集配施設の特徴の一つが、医薬品を定温管理する「ファーマトランジット」(医薬品・医療機器の保管庫)。医薬品の輸出入の玄関口「メディカルゲートウエイ」を掲げる同ターミナルが国内空港では唯一備える施設だ。

「医療分野に着眼したのも、羽田空港を中心に都内、神奈川県内には医薬品関連メーカーが集積しているからだ」と同社は言う。対岸に広がる川崎臨海部・殿町3丁目地区では、医療・健康分野の産業化を進める国際戦略総合特区が始動している。同社は、産官学で特区の具体化を担うライフイノベーション地域協議会にも参画。周辺地域で国際的な物流拠点としての羽田空港の浸透を図ろうとしている。

■ 複数の拠点空港 ■

再国際化とともに開始した羽田の国際貨物取り扱いだが、必ずしも順風満帆というわけではない。業界関係者は「震災発生、リーマン・ショックに伴う世界的な不況などで貨物需要が低迷した。物流業者にとって配送などの基盤は依然、成田空港が中心」と話す。国際線の年間発着枠は羽田の6万回に対し、17万回(12年度)。国は羽田再国際化以降も両空港の役割分担を明確にしながら、「首都圏空港」として機能強化を進めている。

一方、広大なさら地が広がっていた殿町3丁目地区では、11年12月の特区指定から今年5月までに、5区画で施設整備(予定を含む)が決まった。羽田空港への近接性を前面に打ち出した効果といえる。

「羽田空港に近いので国内外の利用者が来訪しやすく、将来、日本のライフイノベーション(革新的医薬品、医療機器の開発)を代表する立地になることを考慮した」

今年2月に同地区への新拠点建設を決めた世界トップクラスの医療機器メーカー、ジョンソン&ジョンソン(J&J)のメディカル事業の担当者が説明するように、新設する医療機器の研修、開発評価の新拠点は14年半ばに運営開始を予定、国内外から年間1万人の医師の利用を想定している。

■ まだ始動の段階 ■

しかし、特区は始動の段階であり、製品を生み出す稼働の段階には入っていない。40ヘクタールの広大な敷地の中で、現在運用を開始しているライフサイエンス(生命科学)関連機関は、実験動物中央研究所(実中研)と川崎生命科学・環境研究センターの2カ所だけで、進出が決まっている機関の大半が設計段階で建物は着工されていない。

敷地の半分を占める合計約20ヘクタールの区画の利用はまだ決まっていない。今後、さらなる企業、研究機関誘致が課題になるが、川崎市幹部は「医療分野は世界市場を対象としており、羽田空港の国際ハブ化が鍵を握っている」と成り行きを注視する。

「世界のグローバル企業は韓国の仁川国際空港周辺と羽田空港のどちらに進出するかを考えている」-。

昨年12月、羽田空港を挟み向かい合う東京都大田区側と川崎市側の二つの総合特区間の連携をテーマにした国と関係自治体の検討会で、北東アジアのハブ空港の地位を確立した仁川国際空港が話題になった。

仁川周辺エリアの3地区には「経済自由区域」が設定されており、中でもソンド地区は医療、バイオ関連の一大拠点が形成され、国際共同治験が盛んに行われるなど、世界中から医師や研究者が集まる。

首都圏に複数の国際拠点空港が立地する状況の下、羽田空港を核にした人、モノ、情報のネットワークの軸が構築されるのか。羽田と成田の“すみ分け”が問われることになる。

◆成田とのすみ分け 公正な競争困難、協調を

首都圏の二つの空港の役割分担はどうあるべきか。羽田空港のダイヤ過密化を踏まえ、新たな拠点空港の整備を検討するため国が2000年に設置した首都圏第三空港等調査検討委員会の委員を務めた専修大学の太田和博教授(交通経済学)は「『成田は国際、羽田は国内』というすみ分けは、過去の経緯からするとそれなりに理由があった」と指摘する。

その上で「しかし、航空による貨客の流動が一国経済で大きな位置を占めるようになった現在では、利用者の利便性が最大になるように役割分担する必要がある」と、利用者利便の内容が肝心との認識を示す。

羽田空港の国際線発着枠は13年度末に1・5倍の9万回まで拡大。羽田ハブ化をめぐり、多くの識者が持論を展開し、その中には「羽田はビジネス、成田は観光」といった意見もある。

太田教授は「両空港は立地条件が違うのだから公正な競争は難しい。ならば、協調して(路線を)配分した方が良い。容量いっぱいの需要を合理的に調整すべきだ。例えば、観光客向けの長距離国際線や格安航空会社(LCC)は成田、客単価が高いビジネス路線は羽田というすみ分けであれば、経営を一体化し、内部補助ができる仕組みをつくる必要がある」との認識を示す。

また、ハブ空港のあり方をめぐっては、「日本でよくいわれるハブ空港は、乗り換えの中継地の役割と、国際的に人やモノが行き交う拠点の役割が混在しているのではないか。単なる中継地であれば、都心直結の空港でなくても良い。一方で、地方空港から海外への中継地、国内ハブの役割は、拠点となる空港でより充実させるべきだ」と指摘している。

【神奈川新聞】


シェアする

編集部のおすすめ

アクセスランキング

  1. 40代男性がはしかに感染 横浜

  2. 伊勢丹相模原店跡、複合ビル建設を検討 野村不と売買交渉

  3. ロマンスカー車内でわいせつな行為・小田急車掌を逮捕/神奈川

  4. 横須賀市内で5900軒停電

  5. 横浜高島屋が開店60周年 鳩サブレー缶など限定販売

  6. 動画 はっけよい…ぎゃー! 比々多神社で泣き相撲

  7. 複数の女子高生と同時に性行為 男を逮捕

  8. 稲村ケ崎海岸の沖合に女性遺体 鎌倉署が身元など捜査

  9. 閉店セール、開店前に行列も 伊勢丹相模原店

  10. 【写真特集】台風15号の被害状況