
横須賀市東逸見町にある特別養護老人ホーム「恵徳苑」で、5月から新規事業の在宅医療クリニックが併設された。主に訪問診療に取り組み、高齢者が増えている地域の医療を支えている。
急な坂を上った住宅地にある施設は、30余年にわたり短期の入所生活介護や通所介護などを続けてきた。自身も居宅介護支援のケアマネジャーなどを務めてきた総合施設長の五十嵐直子さんは「今までの介護だけでなく、医療も一緒になったトータルのサービスで地域貢献していきたい」と期待する。
苑内にできたクリニックは、3人の医師と2人の看護師で対応。現在、心不全や脳梗塞、認知症など15人の患者に対し、交代で回る訪問診療を行っている。
周辺は丘陵の谷戸地域が点在し、かかりつけの病院に通うのもひと苦労だ。「100段や200段の階段を上り下りするのは、お年寄りにとってはきついこと」(五十嵐さん)。加えて、「そういう姿を他人に見られたくない患者さんもいる」という。密接な人間関係の中で生きる地域ならではの悩みもある。
住み慣れたわが家で家族とともに最期を迎える「みとり」は今後増えていくと、同クリニックの医師畑山聖人さんは言う。「入院のためのベッド数が足りず、帰宅する患者もいる。病院にとっても、介護する家族にとっても負担は増すばかり」と指摘。1人暮らしや生活保護を受けている高齢者も増加。だから訪問医療で「単に薬を出すだけでなく、患者や家族の生活全体をサポートしていきたい」。病院、患者双方の負担を軽減していくのが目標だ。
28日に同苑で開かれたサマーフェスタでは、健康相談コーナーなどを設け、浴衣姿で近隣住民と触れ合った。五十嵐さんは「地域のみんなで支えていくことが大事」と尽力している。
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