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相模原“線引き問題”解消で旧3町「地域の多様性認めて」/神奈川

社会 神奈川新聞  2013年07月25日 23:45

中山間地での線引きに住民から疑問の声が上がっていた旧藤野町=相模原市緑区吉野
中山間地での線引きに住民から疑問の声が上がっていた旧藤野町=相模原市緑区吉野

政令市に市街化区域と市街化調整区域の区分を義務付けている都市計画法の改正施行令が26日、公布・施行される。区分義務付けが緩和され、未区分のままとなってきた相模原市の旧津久井、相模湖、藤野3町の「線引き問題」は解消に向かう。地域住民は安堵の声を漏らす一方、線引きに反対する住民運動の先頭に立ってきた1人の農家の遺志に思いをめぐらせている。

市心部から北西に約20キロ。緑に囲まれた相模湖のほとり、小嶋鶴久さんは旧藤野町日連でタバコや野菜を栽培する農家だった。

「ひとくちに政令市といっても、過疎化や少子高齢化は地域差がある。一律に発展や成長を掲げるのではなく、多様な地域の在り方を認めてほしかった」

小嶋さんはことし3月、線引き反対の声を上げてきた住民運動を振り返り、語った。国土交通省が区分の義務付けを緩和する方針を固めた直後のことだった。

小嶋さんは線引き問題の解決に道筋がついたことを見届け、今月13日、息を引き取った。享年80、肝臓がんだった。

政令市移行を目指す相模原市と旧3町の合併に端を発した線引き問題。住民は、新たな税負担や土地利用の制限への不安を口々に訴えた。小嶋さんはしかし、その先を見据えていた。

旧3町は湖を抱え、中山間地が多い。市街化するには土地が狭く限られる。水源地域であるため、環境保全の規制から山林を自由に開くこともできない。住民には高齢の農家が多く、人口流出が顕著だった。

線引きにより、農地にしか使い道のない土地が市街化区域に組み込まれれば、新たな税負担に耐えかねて土地を手放し、なりわいを失う人が出てくる。そうなれば町はさらに廃れる-。弟の利一さん(72)は「兄は、線引きによって地域住民が離散し、困窮するのが見過ごせなかったのだ」と振り返る。

2008年に集めた反対署名は、旧3町の有権者の4割強に当たる1万7千筆。国や県に陳情を繰り返した。そうした声を受け、加山俊夫市長は線引きの先送りを決断。「線引き凍結」を公約に当選した民主党の後藤祐一氏(衆院比例南関東)も国に働き掛け続けた。

施行令改正により区分の必要がなくなったことを受け、加山市長は「地方分権改革を進めていくうえで大変意義がある。(旧3町の)地域の実情を踏まえ、市として主体的にまちづくりを進めたい」とコメントした。改正を踏まえた新たなまちづくりの在り方を検討し、都市計画に反映させていくという。

反対運動に加わってきた緑区千木良の高橋律さん(65)は言う。「住みよい町を目指すため、多くの住民が真剣に考え、声を上げた。そして、その声が国に届くということに気付くことができた」。小嶋さんへの感謝を胸に、高橋さんは続けた。「運動を通じて芽生えた地域への思いを忘れないようにしたい。旧3町のまちづくりは、これからがスタートだと思う」

◆相模原市の線引き問題

市街化区域と市街化調整区域を区分する線引きは、無秩序な市街化を防止し、都市に残る自然環境の保全を図るのが目的。2006~07に相模原市と合併した旧津久井、相模湖、藤野3町は10年の政令市移行により、線引きの対象地域となった。市街化区域になれば都市計画税が新たに課税され、固定資産税も増額され、市街化調整区域になっても開発が制限され、資産価値が下がるといった不利益が生じかねず、住民らが反発。市は旧3町の区分を先送りし、国などに義務付けの弾力的運用を求めていた。

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線引きに反対する住民集会で思いを語る、在りし日の小嶋さん=2009年3月、相模原市緑区
線引きに反対する住民集会で思いを語る、在りし日の小嶋さん=2009年3月、相模原市緑区

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