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「ミサイル飛んできたら」 政府が自治体に避難訓練要請

時代の正体 神奈川新聞  2017年04月21日 21:48

政府が全国の自治体に通知した「弾道ミサイル落下時の行動について」
政府が全国の自治体に通知した「弾道ミサイル落下時の行動について」

政府が全国の自治体に通知した「弾道ミサイル落下時の行動について」
政府が全国の自治体に通知した「弾道ミサイル落下時の行動について」

【時代の正体取材班】政府は21日、北朝鮮情勢が緊迫しているとして弾道ミサイルが日本国内に落下した場合に取るべき対処方法を公表した。同日、内閣官房と総務省消防庁の共催で都道府県の担当者約70人を集めた説明会を東京都内で開催、各自治体のホームページへの掲載や広報紙での周知、避難訓練の実施を呼び掛けた。

【全文PDF】政府が発表した「弾道ミサイル落下時の行動について」

【戦史・紛争史研究家が警鐘】「非常時の心理」が日常化する恐れ

 説明会では、避難訓練について、屋内避難が間に合わない住民がいたり、車を運転中の人も参加するなど、実際に近い場面を想定した訓練の実施を各自治体に要請した。費用は政府が負担するという。

 このほか、着弾の恐れがある場合は全国瞬時警報システム(Jアラート)や防災行政無線、緊急速報メールなどで情報を伝えるとした。

 政府が全国の自治体に通知した「ミサイル落下時の行動について」によると、「発射から極めて短時間で着弾する」とした上で、屋外にいる場合には「できるだけ頑丈な建物や地下街などに避難する」「近くに適当な建物がない場合には、物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守る」などと明記した。

 自治体が住民から問い合わせを受けた場合を想定してQ&Aとして8問設定。「近くにミサイルが着弾した時はどうすればいいですか」という質問には、「屋外にいる場合は口と鼻をハンカチで覆いながら、現場から直ちに離れ、密閉性の高い屋内の部屋または風上に避難してください」「屋内にいる場合は換気扇を止め、窓を閉め、目張りをして室内を密閉してください」などとしている。


政府は公表した「弾道ミサイル落下時の行動等について」
政府は公表した「弾道ミサイル落下時の行動等について」

政府は公表した「弾道ミサイル落下時の行動等について」(別添2)
政府は公表した「弾道ミサイル落下時の行動等について」(別添2)

県内自治体「不安あおる恐れ」も


 政府が配布した「弾道ミサイル落下時の行動等について」を受け、在日米軍基地がある県内の自治体からは「役に立つ」する一方、「住民の不安をあおらないでもらいたい」という声も上がった。

 在日米海軍厚木基地がある大和市の危機管理課は「ミサイル発射の際の避難行動について市民はイメージを持っていないと思う。それなりに役立つだろう」と話す。

 一方、米海軍横須賀基地のある横須賀市の担当者は、2013年に北朝鮮が基地のある横須賀市や青森県、沖縄県を名指しし「射程圏内だ」と攻撃をちらつかせた事例を引き、「あのときと比べれば、そこまでの緊迫感はないと考えている。むしろ政府によるこうした通知で住民を不安にさせないでほしい」と懸念した。

 両自治体ともミサイル着弾時について、ここ数日で住民から「数件の問い合わせがあった」としている。


政府は公表した「弾道ミサイル落下時の行動等について」のQ&A(別添3)
政府は公表した「弾道ミサイル落下時の行動等について」のQ&A(別添3)

政府は公表した「弾道ミサイル落下時の行動等について」のQ&A(別添3)
政府は公表した「弾道ミサイル落下時の行動等について」のQ&A(別添3)

「非常時の心理」日常化を危惧


戦史・紛争史研究家 山崎雅弘さんの見方

 起きる可能性のある危険について政府が国民に対処方法を示す責務はあるだろう。

 ただ文書には、最も注意すべき「不確かな情報が無造作に流布された場合の大衆のパニック」に対する配慮が何もなされておらず、形式的・定型的な言葉を並べているだけという印象を受ける。


戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さん。「形式的な対処マニュアルを無造作に拡散するのは、戦前の日本と同様、国民の心理に受け身の『非常時マインド』や『準戦時マインド』を植え付ける効果しか期待できない」と指摘する
戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さん。「形式的な対処マニュアルを無造作に拡散するのは、戦前の日本と同様、国民の心理に受け身の『非常時マインド』や『準戦時マインド』を植え付ける効果しか期待できない」と指摘する

 ミサイルの着弾場所を正確に予測するのは不可能で、発射された後では有効な対処法が無いとわかっていながら、形式的な対処マニュアルを無造作に拡散するのは、

戦前の日本と同様、国民の心理に受け身の「非常時マインド」や「準戦時マインド」を植え付ける効果しか期待できない。

 そうした心理が日常化すれば、国民は危機感を煽る政府の指示を無条件に受け入れて従うようになる。

 当時、戦争が始まってからも、日本政府は公的刊行物などを通じて「焼夷弾を落とされた時の対処法」を国民に示したが、「水を浴びれば火傷を防げる」「隣組を呼んで消火作業」など、逆に逃げ遅れて死者を増やすような内容だった。

 政府の基本的な姿勢が当時と酷似しているように思えてならない。

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