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アジアサッカー研究所主宰・四方健太郎さん(37)
縁のものがたり@世界一蹴 W杯の神様とともに

社会 神奈川新聞  2017年04月21日 12:33

アジアで企画したサッカーのイベントで「キャプテン翼」の著者・高橋陽一さん(中央)と並ぶ四方さん(ジュンピタ-フットボール提供)
アジアで企画したサッカーのイベントで「キャプテン翼」の著者・高橋陽一さん(中央)と並ぶ四方さん(ジュンピタ-フットボール提供)

 「僕にはサッカーワールドカップ(W杯)の神様がついている」

 1998年6月、大学1年生だった四方(よも)健太郎(37)は、フットボールの祭典に初出場した日本代表の試合観戦のためフランスにいた。「挑戦」という題で企業が募った懸賞論文に応募し、その賞品が観戦旅行だった。

 パリのシャンゼリゼ大通りは、ブラジル、オランダなど自国のユニホームを着たサポーターが闊歩(かっぽ)。両脇のマロニエ並木には、出場国の国旗が揺れていた。コンコルド広場から望んだ凱旋(がいせん)門の間には、トリコロールの国旗が風を受け、胸を張るように膨らんでいた。初めて目にした光景に、鼓動が速くなった。

 決勝会場として新設された「スタッド・ド・フランス」に8万人を集めて行われたフランスとサウジアラビアの一戦が、生で見た初めての世界戦だった。代表の胸に記された鶏を掲げ、ラ・マルセイエーズを歌う人たち。地鳴りのような歌声が身体に刻まれた。フランス代表の司令塔ジダンが退場になる波乱もあったが、4-0で勝利。得点ごとに歓喜の歌が会場に響く、お祭りだった。


98年のフランスワールドカップで、ともに旅した仲間たち
98年のフランスワールドカップで、ともに旅した仲間たち


 日本代表はアルゼンチン、クロアチア、ジャマイカとの予選リーグに向け、監督の岡田武史(当時)が22人の登録メンバーから、いまも現役で活躍する三浦知良(50)を外す決断をし、衝撃が走った。日本からの応援団も、偽チケットが横行するトラブルが起き、渡仏を断念するサポーターもいた。

 「初戦のアルゼンチン戦を選んでいたら、試合を見られなかったかもしれない」

 2戦目を選んだため、大きな混乱は免れた。パリからバスで仏西部の街・ナントに移動。酷暑の中で行われた持久戦では、中山雅史が相手キーパーと対峙(たいじ)する好機もあったが、ゴールを奪えず予選敗退が決まった。

 日本サポーターの間に広がった喪失感。しかし、90分間戦ったクロアチアのサポーターからユニホーム交換や記念撮影を求められ、「国が違っても、サッカーを好きだという気持ちが、言葉を超えた交流を生んだことに身体が熱くなった」。

 これが日本に来るのか-。4年後に決まっていた日韓W杯に胸が高鳴った。

○ ○ ○
 横浜で生まれ、元日本代表の中村俊輔や藤本淳吾を輩出した中高一貫校の桐光学園(川崎市)で学んだ。

 93年5月にJリーグが開幕した時は中学2年生。同年暮れには、「全国高等学校サッカー選手権大会・神奈川県大会決勝」で、藤沢西と100分の死闘の末、5-4でPK戦を制した母校が、初の全国切符をつかむ劇的な出来事もあった。

 高校卒業後は、立教大学に進学。そして1年生の時、花の都で経験したW杯サッカー観戦が、人生を変える強烈なきっかけとなった。がぜん世界へと目が開いた。

 外資系コンサルティング会社の就職が決まった2002年は、日韓サッカーW杯の開幕を控えていた。入社時期は自分で選ぶことができたため、8月に入社することを決め、日本と韓国間を駆けた。

 次の06年大会は、中国への赴任を前に、会社から2週間の休暇を許され、ドイツを目指した。「チケットは日本サッカー協会が公募した抽選に応募し当選。1998年と同じクロアチア戦を含む3試合の日本戦を観戦できた。奇跡的なプレーをした選手が『サッカーの神様がついている』と言いますよね。なら僕には、サッカーW杯の神様がついていると思う」

○ ○ ○
 ビジネスマンとして好景気に沸く中国で働けたことは幸せだった。しかし、2010年の南アフリカ大会の前年、「キャリアを外れてみよう」と会社を辞めた。

 「学生時代からの夢だった世界一周旅行をしたいと思い立った。ダラダラするだけの日々にならないよう、テーマを持とうと思いついたのが、南アフリカW杯に出場する32カ国を回るということでした。マイルストーンを置きながら、大会が行われる南アフリカを目指して“世界一蹴”をしようと」

 友人と共に飛び出した大海。現地での試合観戦はもちろん、各国のサッカー協会を訪ね、選手や現地の人たちを取材した。完全自腹の旅だったが、ブログにつづった軌跡を見た出版社から「本にしたい!」と声を掛けられた。離日し2カ月が過ぎたころの驚きの展開だった。

 まとめた書籍「世界一蹴の旅 サッカーワールドカップ出場32カ国周遊記」はいまも誇りだ。

 32カ国を巡り、W杯を「32倍楽しめた」と目を細める。各地にできた友人。コートジボワールを訪れた際は町の人に交ざり、代表で主将を務めた「ドログバ」の名が付いたビールで喉を潤した。

 「出向かなければ、興味を持たなかったかもしれない」。しかし現地を歩き、人に触れたことで、グループリーグでポルトガルやブラジルと戦うイレブンを見た時、「ドログバを飲みながら応援しているかな」と、語り合った時間を思い出した。

 どんなことも真剣に向き合うと、

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