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日本映画大の誓約書問題、現場にも当惑広がる/神奈川

社会 神奈川新聞  2013年06月17日 11:22

日本映画大学(川崎市麻生区、佐藤忠男学長)が教授らに「学内で一切の政治活動を行わない」とする誓約書への署名を求めていた問題。表現の最先端を学ぶ教育機関であるだけに、現場の映画関係者にも「表現を規制するのか」との当惑が広がった。折しも、政権与党である自民党の憲法改正草案は「表現の自由」の制約とも取れる内容を盛り込む。「堤防が崩れる蟻の一穴にならないか」という懸念の声が、学識者からも上がっている。

大学によると、誓約書は前身の日本映画学校時代から継承されているという。「政治活動とは、特定の政治団体や宗教団体の考え方を学内に持ち込まないとの趣旨。教育現場の表現の自由を妨げるものではない」と話している。

だが、現場の受け止め方はそれとは異なる。東京在住の映画関係者は「政治がねじ曲げたものを、元に戻すのが映画」と、映画が元来持つ“政治性”を強調する。「大学には表現者を育てる自覚があるのか。内部から『誓約書はおかしい』と戦う人が出てきてほしいぐらい」

業界からは、日本映画学校を設立した故今村昌平監督をしのび「反骨の今村監督が生きていれば、こんなことはなかった」との嘆きすらあるという。

右翼団体から、ある作品の上映中止を強硬に求められた東京の映画館主も手厳しい。「圧力から表現の自由を守るには何ものにも屈しない心が必要。誓約書は表現の自由を捨てる自主規制でしかない」

同大学では、誓約書への署名を拒否した元非常勤講師が教授に就任できなかった。表現の自由に詳しい神奈川大法学部の池端忠司教授は「研究教育に関わる表現活動や非表現的な行動(経済活動や社会的な活動など、表現を目的としない通常の行為)が、政治活動と捉えられる可能性があった。誓約書に同意しなかったのは、よく分かる」と元非常勤講師に同意する。

「政治的に無関心な教員が採用されることになり、日本映画大学にとって本当にいいかどうか考えてもらいたい」と池端教授は苦言を呈した。

改憲に意欲的な自民党の憲法改正草案では、「表現の自由」に関する21条に「公益及び公の秩序を害することは認められない」との新たな制限を付けている。表現の自由の規制が現実味を帯びる中で、今回の事態に危機感を募らせるのが、マスコミ学の立教大社会学部の服部孝章教授だ。

「誓約書の『政治活動を行わない』という表現はアバウトだ。表現の内容によっては『公益及び公の秩序を害する』とみなされ、拡大解釈される危険性がある。誓約書が蟻の一穴となり、映画をはじめ文学、演劇、新聞などが守ってきた表現の自由の砦、堤防が崩されかねない」と服部教授。今回のケースは、時代の雰囲気を先取りしているようにも感じるという。「表現を学ぶ場であるにもかかわらず、大学はあまりに鈍感」と服部教授は語っている。

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