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津波そのとき 震災2年〈6〉新警報 改善の効果は未知数

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神奈川新聞  2004年06月06日公開  

 「巨大な津波」が来ると知らされれば、人々は確実に避難するのか。災害心理学者の広瀬弘忠・東京女子大名誉教授は「台風や豪雨の際に出される気象警報と比べ、津波警報は精度が低い。東日本大震災の印象が強い今は敏感になっているので逃げる人が多いだろうが、空振りが続くと信頼を失う」と危惧する。

 7日から運用が始まった新たな津波警報は、予想される津波の高さを「過小評価」し、住民らの逃げ遅れを招いた震災の反省に基づく。だが、その1年前のチリ中部地震では逆に津波の危険性を「過大評価」。長時間にわたって解除しなかった気象庁の対応が疑問視された。「警報が出ても大きな津波は来ない」という経験の積み重ねが「震災時の逃げ遅れの遠因」と広瀬名誉教授はみる。

 なお課題をはらむ警報をどう生かせばよいのか。「観測情報の少ない段階で出される第1報は正確さを欠くが、より多くの情報を基にする続報は信頼度が高まる。津波警報は絶えず変わると受け止め、さまざまな手段で確認するしかない。テレビやラジオ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、家族や仲間との電話やメールでもいい」

 海底水圧計や沖合の波浪計、沿岸部からのレーダーなどが続々と実用化され、津波を到達前にキャッチする態勢はこの2年間で急速に整った。震災時は停電で防災無線から続報を伝えられないケースがあったものの、情報伝達手段も多様化。自治体や研究機関などが携帯電話にメールで通知するサービスを競って導入している。

 津波減災の可能性を広げるICT(情報通信技術)の急速な進歩。しかし、一抹の不安を感じさせる出来事が震災2年の11日、横浜であった。JR磯子駅周辺で実施された津波避難訓練。屋外スピーカーとともに携帯への一斉メールを合図とする予定だったが、単純な操作ミスで避難開始後の配信となった。

 県も昨年3月、岩手沖の地震で、「ただちに高台へ避難を」などとする緊急メールを誤配信している。新たな試みは誤報やミスの不安がつきまとい、通信の混雑で地震直後に機能しない恐れもある。

 「新たな津波警報の内容を果たしてどれほどの人が理解しているだろうか」。茅ケ崎市内で10日に行われた避難訓練の参加者が震災直後より少なく、「住民の危機感が薄れてきている」と痛感させられた自治会関係者はむしろ「情報格差」を課題に挙げる。

 「お年寄りには真っ先に逃げてと呼び掛けているが、防災無線は聞き取りにくいし、防災メールは認知度が低い」。情報が行き届かない事態も念頭に、自治会の軽トラックに備えたマイクを握り、避難を促すことも視野に入れている。


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