1. ホーム
  2. 時代の正体
  3. 【特集】〈時代の正体〉誰もが排除されない社会とは 相模原障害者殺傷事件考

熊谷晋一郎さん、尾上浩二さん、横浜の当事者ら語る
【特集】〈時代の正体〉誰もが排除されない社会とは 相模原障害者殺傷事件考

時代の正体 神奈川新聞  2017年04月12日 18:17

時代の正体取材班=成田 洋樹】相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で昨夏に起きた大量殺傷事件は、社会に何を問い掛けているのか。今春、京都市で開かれたシンポジウムでは、横浜市の障害当事者や障害者施設長に加え、遺族関係者への聞き取り調査を続ける元やまゆり園職員、当事者研究が専門の大学教員や障害者団体のメンバーらが登壇した。あの事件へのそれぞれの向き合い方を語りながら、誰もが排除されない社会のありようを探った。主な発言内容を詳報する。


犠牲者19人の人柄について紹介された記事をあしらった献花台には、19種の花が手向けられた=3月18日、京都市
犠牲者19人の人柄について紹介された記事をあしらった献花台には、19種の花が手向けられた=3月18日、京都市

当事者の人生は家族や施設職員、行政が決めるものではない

ピープルファースト横浜会長・小西勉さん(52)




 昨年9月21、22日に開かれたピープルファースト横浜大会は千人を超える大きなものだった。本当は楽しく明るいものにしたかったが、津久井やまゆり園の事件があったので追悼集会に変えた。大会が終わってたくさんの友達ができた。ピープルファーストの仲間の輪をもっと広げたい。

 今回の事件は元職員の植松聖被告が(障害者の)仲間を殺した。彼を絶対許さない。同じような事件が二度と起きないことを願っている。

 ピープルファーストは、障害者である前に一人の人間である、自分たちのことは自分たちで決めるという自己決定から始めた当事者運動だ。

 横浜大会では匿名報道について、入所施設の在り方について、優生思想について話し合った。大会翌日に県はやまゆり園の全面建て替えに向けて動きだした。これに対し、ピープルファースト横浜は昨年10月に要望書を提出した。

 要望書では、「(やまゆり園入所者の)地域移行の実現に向けて仲間たちの声を聞いて」、「建て替え構想の中止を」、「事件の責任の所在を明確にして」と要望しました。

 県庁に直接要望書を持っていったところ、県からは「地域移行は行っている」「本人や家族の意見を尊重している」との返答があった。ピープルファースト横浜の要望は残念ながらこの時点では聞き入れられなかった。

 県に昨年12月に出した要望書では、横浜市出身のやまゆり園入所者について「仲間を横浜に戻してほしい」「横浜で安心して暮らせることがイメージできる説明を」「入所施設のあり方を話し合う会をつくってほしい」と要望した。


小西勉さん(右)
小西勉さん(右)

 年明けの1月10日、県の公聴会が開かれた。「大規模施設は時代に逆行している」「障害当事者が地域で生活することが大切」「最も大切なのは入所者の意向」「親の意思イコール本人の意思とは限らない」「職員の悩みを傾聴できる人材が必要ではないか」など、さまざまな意見が出た。

 翌11日は公聴会の意見に対し、黒岩祐治知事が非常に心外なことと不快感を示した。この時点では、入所者の意思の確認を行う考えはないと表明した。

 1月25日には黒岩知事が再建構想を再検討する考えを表明。翌26日には横浜で追悼集会が開かれた。私は参加していないがピープルファースト横浜の仲間が私の代わりに話してくれた。県は27日、再建構想の策定時期を夏に延期する方針を明らかにした。

 2月2日、(やまゆり園入所者を横浜市内のグループホームなどで受け入れることを求めたピープルファースト横浜の要望を受けて)横浜市内の知的障害者施設が所属する「横浜知的障害関連施設協議会」が、やまゆり園入所者を市内のグループホームなどで受け入れることを表明した。

 最後にひとこと言わせてほしい。当事者の人生は、親と職員や行政が決めるものではない。当事者本人が決めるもの。自分が幸せかそうじゃないのか、人に決められるものではない。自分の生きる価値も幸せも不幸せも自分にしか決められない。もっと仲間の声を聞いてほしい。


多くの障害者らが参加したシンポジウム=京都市
多くの障害者らが参加したシンポジウム=京都市

施設生活は「有期限」に

横浜の通所施設長・大川貴志さん(38)




 私の所属する社会福祉法人「同愛会」は障害当事者運動を応援する一方で、入所施設を運営している。

 障害者の暮らす場所として「地域か施設か」という不毛な二項対立ではなく、障害者の多様な「依存先」をつくるにはこの先どうやったらいいかを真剣に考えていきたい。学者でも評論家でもなく、実践家としての立場から県に提案していきたい。

 横浜知的障害関連施設協議会はこの1月にピープルファースト横浜から、横浜市出身のやまゆり園入所者を同市内のグループホームなどでの受け入れを求める要望書を受け取った。横浜市出身者が市外に出ざるを得なかったのはわれわれ施設関係者の怠慢でもあった。謝罪をした上で、もし横浜に戻ってきたい気持ちがあるのであれば、戻れるようにしたい。

 横浜には650ほどのグループホームがある。同愛会の入所施設ではこの10年で160名ほどが地域生活に移行している。グループホーム利用者は450名を超えている。そのような実践をしてきて何か協力できるのではないかと、同協議会として横浜での受け入れを表明することになった。

 そもそも入所施設は「暴力的な構造」を持っている。施設に収容されたら無条件に支援される側になり、支援する支援されるという一方的な関係になる。どこの施設も同様で、私たちも「暴力的な関係」を自覚しながら施設を運営している。私自身、入所したいかというとしたくない。施設で一生を終えたいとは思わない。

この記事は有料会員限定です。

月額980円で有料記事読み放題/100円で24時間読み放題のコースも。詳しくはこちら


シェアする