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道路占有半世紀も“庶民の社交場” 横浜駅西口のおでん屋台、店主高齢化や客離れで16年までに廃業/神奈川

社会 神奈川新聞  2012年12月31日 10:34

横浜駅西口で半世紀余り営業を続けているおでん屋台=横浜市西区南幸1丁目
横浜駅西口で半世紀余り営業を続けているおでん屋台=横浜市西区南幸1丁目

「ハマの屋台」の赤ちょうちんの灯が消えようとしている。半世紀余り、横浜駅西口で市道を不法占有しながら営業を続けてきたおでん屋台の店主らが昨年1月、道路管理者の横浜市に「5年後(2016年)までに全店廃業する」という誓約書を出した。これまで撤去要請に応じてこなかったが、店主の高齢化や居酒屋チェーンの進出による客離れなどが進んだためという。吹き付ける時代の寒風に、熱々のおでんと酒が身にしみる-。

ネオンがまたたくビルの谷間を流れる新田間川沿い(西区南幸1丁目)に、おでん屋台12軒がひっそり身を寄せ合うように並ぶ。おでん鍋を囲むカウンターのみ、10人も入ればいっぱいという小さな店ばかりだ。

昭和30年代に駅周辺の開発に伴って自然に形成され、以来、市道を不法占有してきた。屋台ならではの雰囲気と割安の料金が受けて、サラリーマンや労働者、若者たちが集まる“庶民の社交場”としてにぎわった。

だが、周辺に低価格を売りにした大手居酒屋チェーンが急増し、次第に客足も遠のいた。もともと16軒あった屋台は2001~04年までに4軒が自主廃業し、かつての活気は消えてしまった。

「もう年だから。あしたなくなってもおかしくないよ」。廃業する理由について店主らは多くを語らない。「まだ店を続けたいが、私たちだけの力ではどうしようもない」。ある店主が言葉少なに話した。

「店主の高齢化だけでなく、屋台に向けられる社会の目の変化を感じ取って出した結論でしょう」。誓約書を受け取った市西土木事務所の担当者はそうみる。

屋台は道路にはみ出しているため、交通や景観への市民の不満は少なくない。最近では、テナント料を払って営業する近隣の飲食店から「なぜ、ただで土地を使わせているのか」という苦情も増えているという。

横浜博覧会を翌年に控えた1988年には、県警が道交法違反などで立ち退きを迫った際に常連客らが存続運動を起こして1万人以上の反対署名を集めたこともあった。だが今、こうした動きはない。市の担当者は「あのころは景気が良く、社会全体に寛容さがあった」と振り返る。

誓約書上の廃業期限は2016年1月31日。繰り返し指導してきた市西土木事務所は「撤去の見通しが立った点では一歩前進だが、違法状態に変わりはない。一日も早く撤去してもらえるよう話し合いを続けていく」という。

昭和の雰囲気を今に残す名物屋台。ある店主はおでんをよそう手を休めずに、ぽつりつぶやいた。「店を出したころは辺り一面原っぱ。こんなにハイカラな街じゃなかった。変わったのは、私たちじゃない」

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