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地域生活への「通過点」議論 やまゆり園再生へ専門部会

社会 神奈川新聞  2017年04月08日 14:00

横浜市内の施設を視察後、会議を開いた専門部会=横浜市中区
横浜市内の施設を視察後、会議を開いた専門部会=横浜市中区

 殺傷事件があった障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)の再生に向けた有識者らの議論が7日、第2ステージに入った。入所者の意思決定支援の進め方は一定の方向性を固め、地域移行を実現させる上で必要となる受け皿の在り方を検討。「施設は一生を過ごす場所ではなく、地域で暮らせるまでの『通過点』に」。県障害者施策審議会の専門部会は、実践例を踏まえて理想像と課題を探っている。

 専門部会の委員らは、横浜市保土ケ谷区の障害者施設「てらん広場」(定員約80人)を視察した。

 同施設は、やまゆり園入所者を市内のグループホーム(GH)などで受け入れることを表明している横浜知的障害関連施設協議会の会員施設。開設は約26年前だが、当時としては比較的少数の20人を単位とする建物が4棟あり、1~2人部屋が配置されるなどGHに近い造りになっている。入所者は日中、敷地外の通所事業所に通うなど健常者と同じように昼と夜の場を意識的に分ける取り組みも先駆的に行ってきた。

 行動障害が強く出て家庭生活が難しくなった時期に落ち着くまで入所したり、地域で暮らせる態勢や仕組みが整うまでの一時的な居場所としたり、施設が「有期限、有目的」で運営されていることが特徴だ。

 委員らは施設が地域で生活が送れるようになるまでの通過点として整備、運営されている点を評価。視察後の会議では、「施設内で完結せず、あえて外に移動することで人間関係も楽しみも重層的な生活が送れる」「入所を受け入れる時に一人一人目的をはっきりさせることを、やまゆり園再生についても意識してやっていけたらいい」といった声が上がった。堀江まゆみ部会長は、やまゆり園再生に向けた検討の参考にしていく意向を示した。

 次回は17日に開催予定で、川崎市内などの障害者の受け皿の確認のほか、県立施設の役割ややまゆり園の位置付けなどを議論していく見通し。

「一生暮らす場ではない」


 「てらん広場」を運営する社会福祉法人「同愛会」は「施設は一生暮らす場ではない」という考え方で施設運営している。いったん入所すれば「ついのすみか」になるような場所ではなく、地域のグループホーム(GH)などでの生活に移行するための支援という明確な目的を持った通過型施設との位置付けだ。

 実際、この10年ほどで約160人が地域での生活に移行し、GH利用者は450人を超える。入所当初は暴力を振るったりする強度行動障害があっても施設で支援を受け、いまはGHで穏やかに過ごしている人も少なくないという。

 同愛会の関係者は「自立とは、できないことができるようになることではなく、支援が受けられる環境をつくりだすこと」と強調。その上で、「どんなに重度の障害者でも家族以外の依存先をつくり、地域生活に送り出すことこそ入所施設の役割」と話している。

行政支援に濃淡も


 横浜市内の施設だから、先駆的な取り組みができるのか-。専門部会は「てらん広場」を高く評価する一方、施設やグループホーム(GH)などに対する行政支援の濃淡を指摘する。津久井やまゆり園の入所者が生活の場を地域に移すには、受け皿を支える県内全自治体の制度的サポートも不可欠とみるからだ。

 GHへの補助が「他都市に比べ手厚い」とされ、市内で約700カ所が整備されている横浜市。法人に対する設置費補助(1件につき最大350万円)やリフォーム補助(同200万円)、1カ月当たり最大約30万円の家賃補助など、国補助額に上乗せした独自の支援メニューで、運営者と利用者双方の経済的負担軽減を図っているという。

 ただ、充実した支援制度を設けている自治体は限定的なのが実情で、部会の委員は「横浜市と県域の補助制度の違いを明確にすることで、取り組むべき課題が整理できる」と指摘。やまゆり園入所者が生活できる「地域」側の現状把握の必要性を強調した。


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