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思い出ありがとう、シベリアヘラジカ「ユキ」悼む 夢見ケ崎動物公園/川崎

社会 神奈川新聞  2012年04月24日 22:47

ユキ、今までありがとう。よく頑張ったね―。夢見ケ崎動物公園(川崎市幸区)で、国内に2頭しかいないシベリアヘラジカの「ユキ」(雌、12歳10カ月)が14日、死んだ。1年ほど前から脚の傷が悪化し、治療を続けてきた。「水場を好む動物なのに、水が苦手でね」。誕生時から世話をし続けてきたベテラン飼育員が、思い出を語ってくれた。

「生まれた時は、目がまん丸で。とにかくかわいくて、かわいくて」

飼育員歴38年の宇田司さん(56)が当時を振り返る。ユキは1999年に同園で誕生。体重は約10キロ、動きは軽やかだった。

「あれは生まれて1カ月くらいだったかな」

宇田さんが語りだす。「水の張った池のへりを歩いていたユキが、突然落ちちゃって。びっくりしたのか、それから池に入らなくなった」

シベリアや中国東北部の森林などに生息するシベリアヘラジカは、本来は水場を好み水草を食べる。しかし成長してからも、「苦い経験」が尾を引いたのか、水が苦手だったという。

「夏の暑い日にホースで水を掛けても、他の動物はじっと、気持ち良さそうにしてるんだけど、ユキだけは逃げる。『まだ嫌いなのかよ!』って、笑いながらよく声を掛けたものです」

そして宇田さんがぽつりとつぶやいた。「ユキの子どもが見たかったな」

そんなユキに異変が起きたのは14日。午前6時ごろ、桜の木の下で、いつもと違う姿勢で脚をバタバタさせているのを、出勤してきた職員が発見した。顔には擦り傷を負っていた。

「これはおかしいぞ」。園内の調理室で餌の準備をしていた宇田さんらが駆け付け、リヤカーを使い6人がかりで屋内に搬送。わらを敷き詰め、体を温め続けた。意識はあったが、すでに体をばたつかせる元気はなかったという。そして午前9時ごろ、吐き出した食べ物を気管支に詰まらせ、息を引き取った。

生まれつき脚の具合が悪く、1年ほど前からは前脚の傷が悪化。後脚の脱臼も重なり、立ち上がることができなくなった。その影響で、内臓の働きも急激に悪くなっていた。最期は眠るようだったという。

「とにかく今までありがとうと言いたい。痛い所を触られるのは本当に嫌だったと思う。よく耐えた」と、宇田さんは声を詰まらせる。

口蹄(こうてい)疫の影響などで現在は輸入が禁止されているため、国内に残されたシベリアヘラジカは姉の「ポロウ」(13歳10カ月)1頭だけに。長年一緒だったユキが死んだ直後は餌を食べないなど、落ち着かない様子だったが、現在は回復してきたという。宇田さんが言う。「残されたポロウを一生懸命育てる。それが、飼育員としての使命だと思う」

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