時代の正体〈597〉許可は差別への加担 ヘイト集会問題 |カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈597〉許可は差別への加担 ヘイト集会問題 

ヘイトスピーチ考 記者の視点=川崎総局編集委員・石橋学

【時代の正体取材班=石橋 学】人種差別の扇動を繰り返し、川崎市のヘイトスピーチ対策の妨害、阻止を公言する極右活動家、瀬戸弘幸氏が6月3日に市教育文化会館(川崎区)で講演会を計画している。公的施設でのヘイトスピーチを防止するガイドラインに沿って市は利用を不許可にするべきだと私は考える。人権被害がすでに生じていることからも開催された場合の結果は明らかで、許可という不作為はヘイト対策を自ら形骸化させ、差別に加担することにほかならないからだ。

 講演会の目的はいよいよ明らかだ。瀬戸氏は12日にブログを更新し、自身は今回の講演会で発言せず、法律の専門家と川崎市在住の「仲間」が登壇すると明かした。

 ブログの記事は「講演会は絶対に成功させなければならない」と結ばれる。「成功」とは何を指すのか。瀬戸氏らが立ち上げた主催団体が昨年12月に同館で開いた集会に前例を見ることができる。

 瀬戸氏のほか「仲間」である5人の登壇者はデマを交え、代わる代わる在日コリアンへの敵愾(てきがい)心をあおり、1時間半余にわたって差別と排斥を繰り返してみせた。

 地方参政権のない外国人市民の声を市政に反映させるため、市が設置した外国人市民代表者会議を「外国人の外国人による外国人のための自治体をつくろうという圧力団体」と評し、「外国人による支配が川崎市では延々と続く」。

 デマは「朝鮮人は大変犯罪率が高い」「川崎市は在日朝鮮人を市職員に採用したが、これは違法」「外国人高齢者福祉金は闇年金」と枚挙にいとまがない。市民が求め、福田紀彦市長もマニフェストに掲げる差別をなくすための条例に関しては「宗教と近代的価値観は相いれないというアンタッチャブルな問題を掘り起こす危険な条例」「朝鮮人という言葉を使って批判ができなくなる恐ろしい条例」と、的外れでやはり事実に反する言説を重ねた。

 果ては「市長のマニフェストには条例をやるなんて書いてない。差別の『さ』の字もない」。瀬戸氏は市のヘイト対策について「日本人の権利が奪われる」と声を張り上げ、こう締めくくった。

 「われわれは日本人で、ここは日本だ。われわれが主役だ。なぜ日本国籍も持っていないような外国人に萎縮させられ、言いたいことも言えない社会に生き続けなければならないんだ」

 市の施策を批判する政治的言動を装いながら、ここに差別の扇動という本当の目的があらわになっている。市が進める外国人施策を攻撃することで、その施策が擁護しようとする在日コリアンを攻撃する。つまり、守られるべき存在ではない、共に生きる存在ではないと示し、排斥する。差別者たちが守ろうとしているのは表現の自由などではなく、こうした「差別する自由」にほかならない。

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